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移送(護送)

逮捕された人は,基本的に移動の自由が制限されます。

未成年が非行して少年院に送られる場合…

逮捕→留置場→少年鑑別所→少年院

という流れで移動していくわけですが…当然この時,本人だけで移動することはなく,誰かが護送することになるんですね。手錠をかけ,逃げられない状態にした上で,次の施設へと連れて行く。

少年鑑別所や少年院に関する護送は,法務教官が行うのです。

細かいことは機密情報なので言えませんが…
護送中に逃走されると大変な事態になります。

こちら↓は2013年に刑務所間の移送中に,受刑者が刑務官の戒護をすり抜けて逃走した事件。

この事件のあと…

少年院や少年鑑別所を含むすべての矯正施設では,手錠の正しい使用方法についての研修と訓練が行われました。

手錠は,刑事ドラマでよくある…上からガチャっとかけるようなやり方はしません。実際には,相手の手首を傷つけず,かつ強引に手を抜かれることのないような締め具合で調整しながらかけます。

1人の人を護送するのに,
当然ですが職員は複数。

結構大変な仕事です。逃げる可能性のある人を…車や時には公共交通機関で護送していくわけですから。

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ただ…

特に少年鑑別所から少年院に最初に移送してくる時は,大事な面接の時間だったりもします。

もちろん手錠をかけた状態ではありますが…

緊張をほぐし,落ち着いて移動できるように話し掛け,それと同時にその子の生い立ちや非行の状況などをヒアリングする…

この移送中の会話が,その後の院生活に向けた大事な導入になるんですね。

少年鑑別所にいる時,少年たちは自分が少年院に行くのか,それとも審判(家庭裁判所による最終判断)で保護観察だけで家に帰れるのか…自分ではどうにもできないその二択を目の前にして,緊張しているケースが少なくない。

当然,できることなら少年院には行きたくない。

昔なら「少年院に行けば不良として箔がつく」と思ってた人もいるのかもしれませんが,今はそんな人ほとんどいません。

やっぱり少年院は嫌。
そして不安。

特に「初めて少年院に入る人」は,陰湿な雰囲気を想像していることも多く,いじめや理不尽な指導を思い描いて嫌そうな顔をしていることもある。

だた…

大抵の場合,少年鑑別所で勤務している法務教官や法務技官の先生方が,きちんとフォローしてくれていて,少年院送致決定後…

行き先がどんな少年院なのか
そこでどんなことを学ぶのか
少年鑑別所とはどこが違うのか

などを伝えてくれているため…移送中は穏やかな場合がほとんどです。

少年たちの複雑な心境と過度な緊張を,丁寧にケアしてくださる少年鑑別所の先生方の仕事には感謝しかありません。

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僕もやっぱり,何度もこの仕事を担当しました。

手錠をかける係…
運転手…そして監督者。

どんな立場でもやっぱり護送は緊張します。

護送の前日は,帰る前に手錠のかけ方などを練習することも多かったです。

無事に自分の施設の門の内側に入った時の安心感というのは,なかなか外で味わうことのない感覚ですね。塀の中に入ることで安心する…なんてのは,矯正職員ならではの感覚なのかもしれません。

今ならまだ,手錠の扱い方は体が覚えているかな…。

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ちなみに…

知り合いの刑務官に聴いてみたら,刑務官の護送はほんとに「シーン…」としてると言っていました。

受刑者はもちろん…
刑務官もほとんど話さないのだと。

もちろん法務教官でも,あんまり話し掛けない人もいましたが,そもそも立場や状況が違うから,刑務官の場合は個人差の問題ではなく「黙って護送する(される)こと」という原則なのだろうと思います。

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僕はというと…

基本的には,結構話し掛けていましたね。

家族のこと
地元のこと
仕事のこと
趣味や得意なスポーツなど…

彼らの人となりがわかるようなインタビューをずっとしていました。

そして…

そういう話題の中で,タイミングを見計らってほかの職員にも話題を振ったりしていました。

僕個人ではなく「少年院の職員」に対する安心感や信頼感を,少しでも生み出すことができたらいいなぁ…と思っていたんです。

まぁなんにせよ…

緊張感のある仕事。
そしてとても大事な仕事でしたね。

放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。