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知識を人格と切り離す風潮について(35)

1.営業は人生の総力戦

これ↑は僕が営業マン時代に感じたこと。今から14年くらい前の話。営業…つまりお客さんに買ってもらうという行為は、それまでの人生の総力戦だった。

僕が務めてたのは内装資材を施工業者などに売るルート営業の会社。顧客を訪問し、抱えてる現場の状況を聞き出し、条件をすり合わせて注文をもらう。

お客さんの事務所に1時間滞在しても、下手すりゃ雑談が50分。仕事の話は10分くらいで、むしろそれが理想だった。雑談が弾むほどの関係性を作れば注文は勝手に飛んでくる。

だから雑談に人生のすべてを使う。お客さんの話題に合わせて、スポーツもレジャーも恋愛も子育てもすべてが商談の一部になる。

あのルート営業の日々の中で「人生にムダな経験はない」と確信を深めた。雑談を弾ませるというのは、モノより先に自分が買われていくということだ。表現には多少語弊があるけれど。

そして、雑談を弾ませるには質問力と知識力が必要だった。知識がなくても質問はできるが、どんな質問ができるか…には知識が影響している。

知識は「自分」という人格を構成する要素の1つだ。

・・・・・・・・・

2.「勉強しなきゃ…」に感じる違和感

SNSでも
セミナーでも
何らかの研究会でも…

強迫観念にかられるように「勉強しなきゃ」と言ってる人がいる。現場でうまく行かない事態に直面するたびに「知識が足りない」と言っている人たち。

たしかに知識はあった方がいいし、プロとしてはその姿勢も大切なのだが、僕にはどうも違和感がある。

「勉強しなきゃ」に「この事態の原因は知識のなさであって私自身の問題ではないんです!」という自己弁護の響きを感じるからだ。

知識さえあればなんとかなるはずなのに…

という感じ。

そういう人を見ると思う。

「たぶん知識を得ても変わらない」って。

知識は自分という人格のいち要素にすぎない。子どもは知識と向き合ってるわけじゃない。知識を使う人間と向き合い、そこに何らかの不快感や誤学習があるから不適応を起こしてる。

相手の不快感や誤学習がどこにあるかを見極めるのに知識なんていらない。相手を見ればいい。落ち着いて見て、考えて、必要なら問いかけて…自分でたどり着くしかない。

知識を持つと、その推測の精度と速度はあがるけど、そもそも自分で推測しようという感覚のない奴が知識を得るとただの決めつけで終わる。

目の前の相手を見ずに知識をもとに仮説を立てて、仮説を信じて指導・支援して、結局相手に合わせた調整ができずにから回る。

から回ったらまた「知識が足りない」と言って、的を外した自分の感覚には目を向けない。

こういうのをバカという。

知識は自分の人格と無縁だと思ってる。知識に対する態度を含めて自分の人格だというのに。

・・・・・・・

3.最先端を追いかけない時代

2000年代の最初期、僕が中学生の頃、携帯電話の画面がカラーになった。高校生の頃は着メロが流行り、それらの機能が強化されるたびに同級生と機能の違いに驚き合う日々だった。

スマホ登場後もしばらくそれが続く。

でもここ3年くらい、その雰囲気が感じられなくなった。僕が中年になってそういうのではしゃぐ時期が過ぎたからなのかもしれないがたぶんそれ以外にも理由はある。

日常生活に必要十分な機能が備わってしまったから、最先端を追いかける意味がなくなったんだ。

4Gでzoomもtiktokも十分動くから、5Gに対応してなくても別に不便はないし、明確な差を感じることもない。画面はすでに写真をクリアに見れるところまでは来ていて、人間の目には差を感じられないレベルになってる。

スマホに対して最先端を追いかけない時代が来てる。

今月初旬にAppleが新型のMac book Airを発表したが、そちらも大半は「買わなくてもいい」という反応だった。すでに一般的な市民が使うレベルを超えてるという話。

で、これ…

教育・支援領域の人は改めて整理した方がいいと思う。

自分たちの知識が最先端でいつづけることなんて最初から不可能なんだよ

というあたりまえの事実を。

インターネットは知識の流通を加速させた。もはや知識の生産速度とあふれるデータの量はいち個人が追いつけるレベルを超えてる。あたりまえだ。

発達障害の専門家は日々発達障害の研究をしてる。しかも研究者たちはそれぞれもっと具体的に的を絞ってるから、世界中でそれぞれの立場で研究を進め、その情報がすべてネットの中に投げ込まれる。

的を絞って研究してる人が世界中にいる世の中で、的をしぼるわけにはいかない現場の人間の知識が追いつけるわけなんかない。

そんなこと冷静に考えればわかるのだが、それすら考えずに自分の人格から目を背ける目的で「知識が…」と叫び続ける。

最初から負け確定の知識のラットレースに、一体いつまで逃げ続けるんだ?

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こんにちは!へいなかです! 非行少年の地域定着支援を仕事にするべく、経済的な基盤をつくるためにアレ…

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放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。