【私見】高齢者の犯罪と少年の非行について
今日,こんなご質問をいただきました。
で
これは当然,答のない問いですし…少なくともこの数年間,ここについて多くの人が議論しています。
とりあえず僕の暫定的な結論はこれ↓です。
せっかくなのでこれについて少し深堀りして書いていこうと思います。
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まず…
くれぐれもお伝えしておきたいことは「僕は正確なデータを見ずに書いていく」ということです。
このスタンスに対する是非もあろうかと思いますが…とりあえず現時点ではデータを見ずに書いていきます。
いずれデータは見ると思いますが「本稿執筆時点では」です。
で,
なぜその状態で書くのか…というのも一応説明(というか言い訳)しておきます。
理由はいくつかあって…
①所要時間の問題。(調べてると遅くなる)
②全体のデータにそこまでの意味はないと思ってる。
③データに基づく議論は頭のいい人がたくさんやってる。
④「素人が語るな」的な文化が嫌。
確かに,現状をよく知らぬまま語るのは危険が伴います。
ただその一方で…
「よく知らないまま素人が語るな!」という政治や経済,コロナの領域でよく言われる批判にも疑問があるのです。
素人が論じちゃいけないなら,素人に投票させてる民主主義は根本的に破綻してしまう。
「だから国民が勉強しなきゃいけないんだ!」という批判はごもっともなのですが…
勉強するにも「論じる」は必要なわけで,やっぱり「素人が論じる」「知らない人が知らない状態で論じる」は否定しちゃいけないと僕は思うんです。
だから
実情を何も知らない人が少年院などを話題にしてくれるのも僕は歓迎しています。まちがっていることもあるけれど,それも含めて。
また…
結局全体の増減を踏まえてもあんまり意味ないかなぁ…とも思うのです。少なくとも法に触れる人の大半は,全体の増減を見て犯罪するかしないかを考えているわけではないので。
「みんなもやってるからやってみよう」
これは非行少年の集団の中では起こりがちな「勘違い」ですが,それでも,それは極めてミクロな集団の話であって,国全体の動静とは関係がない。非行の動機は,あくまでも個人の中で起こる。
少なくとも…
僕がこれから書いていこうと思っている話には,絶対数や人口比の増減はあまり関係がありません。僕的には。
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長々前置きしてしまいましたが…
とりあえず…
統計的な意味ではずぶの素人の僕が,非行少年と高齢者の犯罪について,私見を書いていこうと思います。
書き終えて,改めて調べてみて,また書きたいことが出てきたら,別の記事で書くようにします。
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さて…
まず非行少年の話。
こちらは絶対数として減っているのは事実ですね。データは見てませんがどこにでもデータの出ている事実です。少子化の影響もあると言われています。
その上で,気をつけたい視点は2つ。
①本当に非行は減っているのか?
②非行の代わりに何が起こっているのか?
昔はいわゆる非行少年がたくさんいました。暴走族などの不良です。こんな↓感じの。
こういう人はどんどん減ってます。一部では根強く残っている地域もありますが。
なぜ減っているかといえば…
インターネットの影響はあると僕は思います。またインフラが整ったり,大規模ショッピングセンターなどが全国に普及したことも影響していると思います。
つまり…
昔のような…ネットのない,商店街が生き残っている文化圏の中では,「不良の先輩」の存在感は強く,それが1つのモデルになった。
同性はそれを見て手本にするし,異性も地元の人しか見る対象がいないから…不良はモテた。
でも今は…
女子はインスタで都会の洗練されたタレントやインフルエンサーを見ている。地元の田舎もんを「かっこいい」とは思わない。
ショッピングセンターなどの人がたくさん集まるところに行けば…チンピラファッションを扱うテナントはなく,不良的な振る舞いをする者は極めて少数。嫌でも自分たちのマイノリティを実感する。
当然…不良的な人は減っていく。
一部の地域で不良が根深く残っているのは…移動にバイクが必需品のような地域がほとんどだと,体感レベルでは感じています。バイクに乗っていることが,モテのヒエラルキーの中で有効な武器になるから。
学校に通わず働いて小金を稼ぎ,バイクに乗ってる不良(に近い雰囲気の者)がそれなりにモテる。
いずれにしても…
監視カメラは増えて暴走族はすぐ検挙されるし,昔に比べたら選択肢も多い世の中になったので…エネルギーのはけ口が非行じゃなくてよくなった。
選択肢が多くなったというのは「家業を継ぐ」がメジャーではなくなったという意味です。
その一方で…
いわゆる不良とは違う形の非行は,非行全体に占める割合としては増えている。
引きこもりの末に家族に暴行を加える事件や,自分より年少の女児等に対する性的な非行も体感的には増えていますし…
「逮捕されるレベルではないが,健全とは言い難い」という段階の子は決して減っていないようにも感じます。
また,大麻の増加は言わずもがな。いじめも,法律上の解釈はともかく,立派な傷害や名誉毀損です。
だから,
「不良=ダサい存在」として文化的に根付いてきていることや,それを体感しやすい状況(ネットやショッピングモール,都会に出るのが普通という感覚など)の拡大が…
(少なくとも数字上の)非行少年の減少を招いているというのはある気がしています。
かつて『今日から俺は』や『湘南爆走族』は男子のあこがれでしたが…今やギャグとしてドラマ化される時代です。
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さて
次に高齢者の犯罪について。
今「高齢者」と呼ばれている人たちは,この国の高度経済成長を支えてきた功労者たち。
農家などのブルーカラーから都会のサラリーマンへと,伝統的な家業を離れることがメジャーになった大転換期を現役で過ごした方たち。
つまり彼らは…
自分たちの祖父母とは一緒に過ごし…
自分たちの孫とは一緒に生活していない。
そんな経験をしている世代は彼らが初めてです。
それまでは
孫として祖父母と一緒に生活し…
祖父母として孫と過ごす。
それがあたりまえに続いてきたし,農業や漁業など,家業が街の中にあったので,食いっぱぐれることもなかった。体力が衰えても子や孫と一緒に仕事はできた。
でも今の高齢者はそうではない。
自分か,少なくとも自分の子からはサラリーマン化の流れに必死についていき…高度経済成長と家電の普及による急速な生活環境の充実に食らいついていった。
誤算だったのは,経済成長もサラリーマンの時代もあまり長くは続かなかったということ。
そして
定年後の人生が伸び,「家業を継ぐ」ではない在り方によって「祖父母となった自分たち」だけで生活することになった…ということ。
人が犯罪に走る大きな理由は,孤独と貧困。その状態になれば,冷静な判断はできにくくなり,時に価値観や人格すらも狂わせる。
これを「核家族化」なんて言葉だけで理解したつもりになってはいけないと僕は思います。
産業の変化によって必然的に起こることだったけれど,当時の人たちには初めての経験だから予測できなかったということ。
「今の高齢者が,昔の高齢者と違って倫理観がなくなった」という話ではなく,今も昔もこれからも…人は孤独と貧困から罪を犯す人間に変化しうるということ。
昔は
三世代が一緒に暮らし,
地域のネットワークもあり,
定年のない仕事をして…
孤独と貧困がなかったということ。
少なくとも今よりは。
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昨今,どこかの文句しか言わない議員が「年金だけで生活できない国になったんですか!」みたいなことを言っていましたが…
年金てのはそもそも…昔からサポートでしかない。
昔は…
定年のない一次産業で、家賃のいらない持ち家に住み,子や孫と一緒に家業にに携わって生きていたから,年金がサポートとしてそれなりに機能していたわけで…
「年金しか収入がなくサポートする家族もいない高齢者」がこんなに増えている状況の方が,「変化の成れの果て」なんだと僕は思うのです。
そんなこと,30年前に予測する方が無理。だから,今こうなっていることの原因を論じることに僕はあまり意味を見いだせません。必要なのは,原因ではなく打開策を考えること。
そして
そういう大きな視点でのアクションは僕にはできないので,僕はただひたすら,塀の中で目の前の1人と向き合うことに専念してきた,ということ。
これからも,僕の基本スタンスは変わりません。
制度改革はもっと頭のいい人に任せる。
でもどんな改革も発明も,今すぐ成されるわけではないから,僕は,今困難に直面している人たちと向き合う。…彼らと一緒に社会と向き合う。
そんな風に今,考えています。
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以上が…
なんのデータにも基づかず,僕が体感レベルで認識している情報に基づいて勝手に考察した現状です。
改めて付言しておきたいのは,
「だから高齢者の犯罪はしかたない」とは断じて思っていないということです。それは高齢者の孤独と貧困に対してもそうだし,少年非行に対しても同じです。
理由がなんであれ,責任がどこにあれ,それは看過できるものではない。
そして
現状がこうである以上,政治やビジネスにできることはあるはずだし,何かをやらなければならない。
これは責任の有無や善悪とはまったく関係のないこと。ただの現状認識です。
これが,正しいかどうかもわかりません。異論も反論も,否定も批判もあろうかと思います。
ただ僕が言いたいことは…
少なくとも「最近の高齢者」や「最近の子どもたち」が人の機能としてどこかおかしいのではなく…
変わらぬ「人」が…
急速に変わる「社会」の中で…
かつてないほど生きづらさを抱えやすい状況にいる…
ということです。
やや乱暴な意見かもしれませんんが,個人的な回答として,何かの参考になっていれば幸いです。
ご質問に感謝いたします。
へいなか
放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。