◯◯力のとらえ方(37)
ちまたには「◯◯力」と名のつく能力・資質があふれています。そもそも言語自体、使う人や文脈によって意味の異なるものですが…「◯◯力」の中身ほど多面的なとらえ方ができるものもそう多くはない気がします。
今日はそもそもの話…「人間の能力・資質をどうとらえるか?」について少しだけ確認してみようと思います。
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1.人間の能力は独立していない
「ジャンプ力」とは、跳ぶ力のこと。より高くより遠くへ跳べる人のことを「ジャンプ力が高い」という。
では「ジャンプ力」は何によって構成されているかというと…実は筋力だけではありません。もちろん筋力が大きな要素であることは事実ですが、同じ筋力、同じ体重でもジャンプ力には大きな差が生まれたりする。
以前こんなことがありました。
少年院の教官時代に安部と一緒にスポーツテストに参加したある非行少年。身長体重はほぼ同じ。50m走もほぼ同タイムの7秒弱。普通に考えれば立ち幅跳びも同等の記録が出るはずなのですが、その結果は…50cm以上の大差をつけて安部の勝利。
差を分けたのは筋力ではなく、「身体の使い方」の差です。
実際、スポーツテスト終了後から少しずつ時間をかけて身体の使い方を練習したところ、みるみるうちに安部との差は詰まっていきました。
同じ筋力、同じ体格でもジャンプ力が同じとは限らない。それはつまり「筋力以外にもジャンプ力に影響を与える要素がある」ということ。先ほどの彼に関して言えば特に「身体を扱う感覚」に差があったということです。
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2.◯◯力は別の●●力の組み合わせでできている。
ちょっと人間の発達や感覚を勉強したことのある方なら「固有覚」という言葉には、耳なじみがあると思います。感覚統合の入門編で必ず出てくる「筋肉や関節の状態を感じ取る感覚」のことです。
先ほどの立ち幅跳びで安部に負けた子は、それまでの人生でジャンプする経験がほとんどなかった子でした。(安部は高校時代にバスケ部で毎日毎日数え切れないほど跳んでいます。)
そうした経験の差が跳び方の差となり、大きな差を生んだことは明白なのですが…跳び方を教える過程で彼の固有覚も発達していきました。
ジャンプには全身の関節と特に背中側の筋肉を連動させる必要があります。跳び方を練習する中でそれらの状態に対する感覚も研ぎ澄まされていきました。ジャンプ力が安部に近づいた時には、普段の歩き方もより洗練されたものになったのです。(彼自身が自分の姿勢の悪さに気づき、自分で修正した結果です。)
つまりジャンプ力には単純な筋力だけでなく、固有覚を基盤にした身体を扱う能力が必要ということ。
このように「〇〇力」は複数の●●力の組み合わせによって構成されているのです。
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3.現場力とは…?
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放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。