柔らかい月

口から零れた昨日の私を拾い集めて
ひと欠片ずつそっと指先で繋ぎ合わせる
繰り返し行われてきたささやかな儀式は
足元に積み重なってゆく幾つもの体と共に
見慣れた顔を過ぎ去った輪郭の裡に失くし
組み上がった歪な姿に乾いた声を聞く
恐れは消え覆う土の温かい静けさだけが
閉じた瞼を柔らかい月に向かって開かせる

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