広場

一羽のすずめが側にやって来た
ぴょんぴょん飛び跳ねながら
ときおり思い出したかのように
立ち止まっては首を少しかしげ
小さなつぶらな瞳で僕を見上げた

空っぽの青いポケットに触れて
何も入っていないよと言うと
すずめは音もなく身を翻し
わかっていましたという風に
軽々と仲間のもとへと飛び去った

一羽のはとが足元にやって来た
ぴょこぴょこと足を引きずって
ときおり微かに喉を鳴らし
折れ曲がった赤い足首で器用に
煉瓦道を優しくなぞっていた

空っぽの手の中を開いて見せて
何も持っていないよと言うと
はとは地面を何度かついばみ
私に気を使わないでという風に
頭をゆっくり揺らして歩き去った

周りを見回すと僕と同じように
沢山の人がベンチに座っていた
みんなそれぞれひとりの時間を
雲ひとつない静かな広場に委ね
噴水がきらきらと光をこぼした

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