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物語

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2022年4月の記事一覧

整頓された幸せの後ろ足から ヒンヤリした地面の幻を見て 体操し忘れて眠る布団の中で ごちゃつく窓の外はもう何もない

エナメル

モーニングデビルを無視して 飲むよコーヒーぬるいお湯で溶いで 圧迫されてる肺にインさせる 漏れぬようにそっと深呼吸 朝がキラキラ 街はギラギラ 午後が冷めるまでが今日 美しいお辞儀くり返して 夜はキラキラ あなたギラギラ 数多ある層をめくりあげ 迫る脅威を愛している

月へ

飛び立つ船に唾吐いて どの面下げて帰るのか わからない素顔の正面 ラクダのような無表情 震える嵐の夜の宙 幅のない口の一文字 冷めたくるマグマの熱量 新しい街はどんな色 月へ行くあなたに 告げる言葉は何もない 月へ行けるあなたには 恐れるものなど何もない 月へ行くその朝には 古くなっていく顔を 何度も見て眠った

九龍

熱に魘されて意識が飛んで ばらばらだった太陽が1つにまとまる 命の近似値をやがて編み出して もこもこフード被って夢まで待機

資料的価値

怯めど進めと身を奮す それらすべてが新しい気持ち 汚れた手洗い濁った水の中 知らない国の童話のよう いつもあなたと違う結末を 夢見ていたのかもしれない

レニーのこと

レニーは傷の痛みを知らない 忘れるたびに凍てつく肌たちが 絶叫しながら安心するからだ 正方形に切り取られた防護服の中に空と ヨットと気球の断片を飛ばして浮かべて 知らない間にすぎていく時間だけを愛した 自我を硬直させるのは睡眠で 食欲も性欲もその付属物でしかない 上辺だけの会話の中で見つけた一雫が いつか大切な樹を愛でると信じて 寂れた街を捨てることも良きかなと 少しだけ泣いたこともあった

読み物

読み物として生きとし 生けるものたちへ 遊ばせていた心 のたれ死んだ未練と宿命 理工学部の女の子 西日にゆらめく

数を数える

遠い光を見てる あっけなく夜を超えていく さらりとした日々が 真っ黄色の空を引き裂いて 忘れ続けて進化する損な生き物 思い出すたび退化する雑な割れ物 生け垣の中に庭を作って 覗かれるのを待ち侘びたり なんたる不恰好