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政治の駆け引きが続くワシントンと、 オクトーバー・サプライズ

岡元兵八郎

米国では先週共和党、民主党、ホワイトハウスによる追加景気刺激策を巡る政治的な駆け引きが行われる中、最終的な合意に対する期待感で先週のS&P500指数は3.8%、ナスダック総合指数も4.6%上昇と週間ベースではここ数ヶ月間でベスト・パフォーマンスの1週間となりました。

今週から米国では第3四半期の決算発表が本格化します。
特に今週は米国の大手金融機関による決算発表で忙しい週となります。
10月13日には、JPモルガン・チェース(JPM)やシティグループ(C)、14日にはバンク・オブ・アメリカ(BAC)、ゴールドマン・サックス(GS)、ウエルスファーゴ(WFC)などの予定があり、金融機関がみる米国経済の現状が明らかになります。コロナ禍という特殊な状況下、投資家は今回の決算発表の内容より、今後の見通しに興味を持っているはずです。市場全体と比較して割安感のある銀行株ですが、経済回復が起きている環境下、収益が底を付けた、そして今後の見通しは良いのだという会社のマネジメントから確認できれば、銀行セクターに注目がいくはずです。株主還元策が制限されているのは年末までですから、来年になると銀行セクターでは自社株買いや増配を再開することもできるようになります。

日本時間今週水曜日の午前2時には、アップルは待望の新型の5G対応のiPhoneが発表される予定になっています。数年間も買い替えを行っていないiPhoneの保有者による潜在的な買い替え需要は高そうであり、順調に伸びているサービス部門の売り上げに加え、今後数年間iPhoneの売上増も期待されそうです。
アップルやGAFA系の銘柄の株価の割高感を指摘する向きもありますが、ファンダメンタルズの調査を行っているウォール街のボトムアップのアナリスト達にはアップルの目標株価を140~150ドルへ掲げている人たちもおり、現在のアップルの株価は2割から3割程度割安だという判断がされています。

米国の政治用語にオクトーバー・サプライズ(10月の驚き) と呼ばれるものがあります。意図的、計画的、自然、自発的を問わず10月に起きるニュース・イベントの事です。11月の初旬の大統領選挙に影響を与える、何らかのニュース・イベントが何故か10月に起きるというものです。
例えば2016年の選挙の際には、トランプ候補が2005年に女性蔑視の発言をしている場面を収録した動画がリークされました。これにより一部の共和党議員には、トランプ候補を承認しないという事態になり、トランプ候補にとって大統領選が不利になるという状況になりました。2008年、時のマケイン候補とオバマ候補の戦いでは、大統領選挙の4日前にオバマ候補のおばさんが非合法な移民として米国に住んでいると言う報道がされました。このような何らかの大統領選挙に影響を与えかねないニュースが必ず10月に起きるというジンクスがあります。
先週の金曜日にはトランプ大統領が新型コロナウイルスに感染し入院することになりました。マスクを必ず着用する習慣のある日本人 からしてみると 、必要に マスクをすることを 拒んでいた トランプ大統領が コロナに感染しても それほど不思議ではないような気がします。大統領自身が コロナに感染したという ニュース 、これは トランプ大統領にとって オクトーバー・サプライズだったことでしょう。
短期間で退院し ホワイトハウスの前では 回復後 の自分の健康を国民にアピールし 選挙運動を再開しました。
今週予定されていた第2回目の大統領候補討論会はコロナ感染対策としてバーチャルで行われると発表されると、早速「そんなものは時間の無駄だ 」と参加拒否を発表する一方、選挙区へ飛び、集会型の選挙演説を行うと発表しています。
そもそも、プロの政治家ではなくビジネスマン上がりのトランプ大統領、これまでの約4年間今までの常識に囚われず自分のやりたいように大統領として政治を行ってきました。そんなトランプ大統領がピンチを迎えています。様々な当選予想をみてもトランプ大統領をリードするバイデン候補とのギャップはなかなか差が縮まりそうもありません。選挙まではあと3週間余りです。焦りを感じているトランプ大統領、市場を驚かす新たなるオクトーバー・サプライズを彼自身が引き起こす可能性もありそうな気がしてなりません。
株式市場に関わる者として、そのサプライズが、市場に混乱をもたらすのではなく、市場に好感されるサプライズであることを祈るばかりです。

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