SAUNNER OF THE YEARの行方

去る2021年9月22日にTTNE株式会社の「SAUNNER OF THE YEAR」が商標登録されました。また「SAUNACHELIN」についても同日付で商標登録されています。「SAUNACHELIN」については別の機会に譲るとして、今回は「SAUNNER OF THE YEAR」について書いてみたいと思います。

商標権は登録商標に類似の商標の範囲まで他人の使用を排除できる権利ですので、今回の商標登録で「SAUNNER OF THE YEAR」と、少なくとも称呼が同一である「サウナ―オブザイヤー」には権利範囲が及ぶことになります。

登録商標の権利範囲は出願時に申請した「指定商品・指定役務」に基づいて決められます。今回登録となった商標の指定商品・指定役務をみてみますと、

「企業に関する情報の提供,企業の事業に関する情報の提供,経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,広告業,広告用具の貸与,広告スペースの提供・貸与,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」

「選考会又は表彰式の企画・運営又は開催及びこれに関する情報の提供,賞の企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)及びこれらに関する情報の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,オンラインによる音楽・音声・映像・画像・文字情報の提供及びこれらに関する助言・情報の提供,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出」

「個人に関する情報の提供,個人の身元又は行動に関する情報の提供,著名人又は芸能人に関する情報の提供,個人の身元又は行動に関する調査及びこれに関する情報の提供」

とあり、上記のような対象について登録商標の権利範囲が及ぶことになります。興味深いのは、指定商品を被服、帽子のような商品とするのではなく、例えば「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」といったサービス(役務)について申請をしているところです。「便益の提供」とはデパートの店舗における品揃え、商品説明、陳列が挙げられます。 通信販売会社で商品のカタログの提供、インターネットを利用した通信販売では、顧客が商品を選ぶためのサイトの提供等が含まれることになります。現在では商品そのものよりもそれを取り扱う仕組みの方にビジネスの軸足が向いているという点で時流に沿った権利取得の方策であると思います。

気になるのは「サウナ―オブザイヤー」に類似する「サウナオブザイヤー」の存在です。見ての通り、「サウナーオブザイヤー」と「サウナオブザイヤー」とは一文字を覗けば同一となります。また、その施設を利用する者とその施設そのものというかなり近い概念にあるということで、両者は類似する商標であるとの解釈が成り立つ可能性があります。

個人的には、「サウナーオブザイヤー」のような誰もが使用するようなフレーズが商標登録されてしまうというのは非常に残念ですが、現在の商標法の枠組みの中ではどうしようもないというのが正直なところです。

「サウナシュラン」の一環としてサウナーオブザイヤー今年も選出されたようです。いっぽうで「サウナシュラン」に対抗する形で、「読者が選ぶサウナ大賞」のようなものも発表されています。いろんな観点での数々サウナランキングはとても興味深いものです。それはサウナの評価軸が一元的ではなく多岐に上るということの証拠です。

登録商標の「サウナーオブザイヤー」がこの流れに水を差すことがないことを望みます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?