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令和6年能登半島地震とX=旧Twitter


令和5年12月31日

 2023年12月31日に放送された第74回NHK紅白歌合戦では、YOASOBI「アイドル」のパフォーマンスが話題になった*1。「アイドル」の歌自体が他の追随を許さない魅力を放っていたのだが、そのダンスパフォーマンスにK-POPアイドルグループが参加したことで、故・ジャニー氏が事務所所属メンバーへ生前に行なった性的虐待問題の影響でジャニーズ不在の中で行われたイレギュラーな紅白歌合戦という文脈と併せて受け止められた。世界のある地域では未だに戦争が続いているが、その一方で日本の人々は無事平和に新年を迎えられるかのように見えた。

令和6年1月1日

 2024年1月1日16時10分頃、石川県能登地方(輪島の東北東30km付近)でマグニチュード7.6の地震が観測された*2。X=旧Twitterでは現地で救助を待つ人々がその住所をポスト (=旧Tweet)した。だが、同時に災害に便乗して単にインプレッション稼ぎをする者たちも一緒に他人の住所を騙り、他にも偽情報が蔓延した。イーロン・マスクによってX=旧Twitterが買収された後、インプレッションをインセンティブとして重みづけしたアルゴリズムが導入された結果、X=旧Twitter上には不自然なリプライや偽情報を発信する悪徳ユーザーがイナゴのように湧き出てきた。2024年1月4日に「内閣府防災」アカウントは「流言は智者に止まる」という諺とともに「デマ」*3に対する注意喚起を行なった。

 旧Twitterは、3.11東日本大震災の頃にはすでに災害時の情報ライフラインとして普及していた。だが、地震発生直後、「特務機関NERV」のアカウントは、X=旧Twitterに新たに導入されたAPI制限により、その極めて迅速な情報発信機能を一時的に遮断された。同日、X社は「緊急的」な対応を行ない、「特務機関NERV」のアカウントを「公共アプリ Public Utilities App」に登録したことで、同アカウントのポスト機能をすぐに復帰させた。だが同時に、緊急時におけるAPI制限の負の影響が可視化された恰好となった。

令和6年1月2日

 2024年1月2日、羽田空港で日本航空(JAL)旅客機と海上保安庁の航空機が衝突事故を起こした。旅客機に乗っていた乗員乗客は全員無事避難できたが、海保庁航空機に搭乗していた船長を除く隊員5名が亡くなった。この事故の詳細については、のちに調査報告書で明らかにされるであろうが、前日に起こった能登半島地震の余韻冷めやらぬうちにこの事故が発生したことで、『まだ二日しか経過していないのに恐ろしい出来事が続く2024年とは、一体どれほど恐ろしい一年になるのだろうか』と悲観した人々も少なくなかったと思われる。
 注目されたのはJALの対応である。乗員乗客の全員が無事避難できたことは、「90秒ルール」と呼ばれる訓練を平時から行っていた結果として賞賛された。同時に、乗客が大きなパニックを起こさずに「規律訓練」された人々だったことも功を奏したと考えられる。したがって、『これがもしLCC(いわゆる格安航空)だったら可能だったろうか』と考える人々もいた。

*1: REVISIO「第74回NHK紅白歌合戦 視聴者が最もくぎづけになった 歌手によるパフォーマンスシーンは?」(テレビ番組分析、2024.01.01.)。
*2: 気象庁「令和6年1月1日16時10分頃の石川県能登地方の地震について」(報道発表、地震火山部、2024年1月1日18時10分)。
*3: 「デマ」という言葉は「デマゴギー Demagogie」に由来する。『日本国語大辞典』によると、「デマゴギー」とは「政治的な目的で相手を誹謗し、相手に不利な世論を作り出すように流す虚偽の情報」、「社会情勢が不安な時などに発生して、人心を惑わすような憶測や事実誤認による情報」である。

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