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ジェイコブズ「猿の手」も、みんなの思っている話とは全然違うのです

『魔法少女まどか☆マギカ』の元ネタにして、三つの願いで超有名なW・W・ジェイコブズ「猿の手」なのです。原文

Father and son were at chess, the former, who possessed ideas about the game involving radical changes, putting his king into such sharp and unnecessary perils that it even provoked comment from the white-haired old lady knitting placidly by the fire.

主人公は息子とチェスをしていますが、下手です。妻は夫の不味い手を見抜いています。

"Morris said the things happened so naturally," said his father, "that you might, if you so wished, attribute it to coincidence."

猿の手を持ってきたモリス曹長が言うには、「願い事はごく自然に、偶然のように叶う」のです。

一つ目の願いは「200ポンド欲しい」です。家のローンの残り額です。今の200万円くらいです。

"It moved," he cried, with a glance of disgust at the object as it lay on the floor. "As I wished, it twisted in my hand like a snake."

願い事をしたときに猿の手が動いたと主張しています。息子の事故死の見舞金として会社が200ポンド持ってきました。妻は息子を生き返らせるよう願ってくれと言っています。

"We had the first wish granted," said the old woman feverishly; "why not the second?"
"A coincidence," stammered the old man.

主人公も「偶然だ」と言っています。

"He has been dead ten days, and besides he—I would not tell you else, but—I could only recognize him by his clothing. If he was too terrible for you to see then, how now?"

父親は息子の死体を見たが、ぐちゃぐちゃだったので服で判断するしかありませんでした。

He raised his hand. "I wish my son alive again."

二つ目の願いは「息子がまた生きてほしい」です。

But her husband was on his hands and knees groping wildly on the floor in search of the paw. If he could only find it before the thing outside got in. A perfect fusillade of knocks reverberated through the house, and he heard the scraping of a chair as his wife put it down in the passage against the door. He heard the creaking of the bolt as it came slowly back, and at the same moment, he found the monkey's paw, and frantically breathed his third and last wish.
The knocking ceased suddenly, although the echoes of it were still in the house. He heard the chair drawn back and the door opened. A cold wind rushed up the staircase, and a long, loud wail of disappointment and misery from his wife gave him courage to run down to her side, and then to the gate beyond. The streetlamp flickering opposite shone on a quiet and deserted road.

主人公は息子の無残な死体を見ているので、ゾンビとなって帰って来たと考えました。しかし「願い事はごく自然に、偶然のように叶う」のだから、ゾンビはありえず、「死んだのは人違いでした。てへぺろ💛」しかありえません。「そうも解釈できる」ではなく、「こうとしか解釈できない」のです。先の読めない主人公の考え違いなのです。妻は頭がいいので息子が元気に戻ってくるとわかっていたようです。妻の「長く大きな嘆き声」があったので、元気に帰って来た息子が「留守かな?」と思って去る時間は十分あり、それなら200ポンド丸儲けのハッピーエンドです(一人死んでますが)。

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うーん、でも、ハッピーエンドじゃん?

三つ目の願いは具体的には書かれておらず、そもそも猿の手に本当に魔力があるのかどうかも定かではありません。もちろん魔力がないならゾンビもありえません。

His hand grasped the monkey's paw, and with a little shiver he wiped his hand on his coat and went up to bed.

猿の手が動いたのも自分でgrasp握りしめただけです。

"Did you give him anything for it, Father?" inquired Mrs. White, regarding her husband closely.
"A trifle," said he, coloring slightly. "He didn't want it, but I made him take it. And he pressed me again to throw it away."

ちゃんと猿の手のお礼をしているし

Mr. White took the paw from his pocket and eyed it dubiously. "I don't know what to wish for, and that's a fact," he said slowly. "It seems to me I've got all I want."

欲のない満ち足りた一家だと何度も強調されます。

deserted roadは普通には「人気のない道」ですが

desert
名詞
[複数形で] 当然の報い,相応の賞[罰] 《★【用法】 悪い場合が多い》.
get [meet with] one's (just) deserts 相応の賞[罰]を受ける.
[古期フランス語 ‘deserved' の意]
road
3 : a route or way to an end, conclusion, or circumstance
on the road to success

当然の報いの行く末」といった意味とのかけことばになっています。街灯が照らしているから明るいのでしょう。

ウィキペディアのあらすじ

老いたホワイト夫妻と彼らの息子ハーバートは、インドの行者が作った猿の手のミイラを、知り合いのモリス曹長からもらい受けた。モリスが言うには、猿の手には魔力が宿っていて、持ち主の望みを3つだけ叶える力があるらしい。だがそれは、「定められた運命を無理に変えようとすれば災いが伴う」との教訓を示すためのものであり、自分も悩まされたという理由で渡すことを渋るモリスから、ホワイトは半ば強引にもらい受けたのだった。ハーバートが冗談半分で家のローンの残りを払うのに200ポンドが欲しいと言ったため、ホワイトはそれを願うが、その時は何も起こらなかった。
翌日、ハーバートが勤務先の工場で機械に挟まれて死んだとの知らせがホワイト夫妻のもとへ届く。会社は賠償を認めないが、日頃の勤労の報酬として金一封である200ポンドをホワイト夫妻に支払った。
ホワイト夫妻はハーバートの死を嘆き悲しんだ。そしてある夜、どうしてもあきらめきれない妻は、ホワイトにハーバートを猿の手で生き返らせてほしいと懇願する。ホワイトはハーバートの凄惨な死体を見ていたので懸命に妻をなだめるが、半狂乱になって訴える彼女を断り切れず、2つ目の願いをかけた。しばしの後、ホワイト夫妻は自宅のドアを何者かがノックする音に気付く。ハーバートが帰ってきたと思った妻は狂喜して迎え入れようとするが、その結果を想像して恐怖したホワイトは猿の手に「息子を墓に戻せ」と最後の願いをかける。すると、激しいノックの音は突然途絶えた。
結局、平凡な日常にささやかな抵抗を試みたホワイト夫妻は、大きな代償を払って元の日常に戻った。

「息子を墓に戻せ」などというセリフは原文にはありません。

この小説に教訓があるとしたら、それは「頭の悪いやつは他人の不幸を望む」です。

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奇跡も、魔法も、あるんだよ

さやかがめずらしく本当のことを言っています。

💛

『魔法少女まどか☆マギカ』のテレビシリーズは、魔法で願いは叶ったが、それが遠因となってみんな悲惨な目に会いました。劇場版は「本当の願いが叶うと死ぬ」です。

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まどマギでは街灯は「人知れず街や人を守っている」魔法少女の隠喩なのです。シャフトの人たちがちゃんと原文で読んでいることがわかります。

まどマギの世界は基本的に日本語なのですが

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暁美ほむらです。よろしくお願いします

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ん?つづけて?

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最後、駅の看板に魔女文字があります。これは杏子が作り替えた世界なのです。

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「みんながしあわせになれますように」と願ったのが叶いました。

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まどかの本当の願いは「ほむらちゃんが地獄に落ちますように」でした。さやかが死んだのはほむらのせいだと思っているのです。

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