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『魔女見習いをさがして』はみんなの思っているような話ではないのです

思い切りネタバレするのです。

アニメ映画『魔女見習いをさがして』の読解の鍵はレタリングにあります。

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この映画は、レタリングは基本的に手描きです。

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たとえば、行先表示器にある「新大阪」と「新神戸」の「新」の字の形があきらかに違います。めんどうくさいのですが、ひとつひとつ手で描いているからです。

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エンディングのカフェの開店祝いも手描きのレタリングです。

一方、コンピュータレタリングもあります。

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ミレのメール

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ChangeとChargeはnとrの字以外はまったくおなじです。

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レイカの本の「イタリア留学のススメ」

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ソラのスマホ

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レイカのスマホもコンピュータレタリングです。

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京都駅の構内は手描きレタリングですが

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お酒はコンピュータレタリングです。本は手描きです。

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病院内ですが、こちらは手描き

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この二つはコンピュータレタリングです。

なんでこんなことをするのかと言うと、手描きレタリングはファンタジー、コンピュータレタリングは現実に属すのです。作品舞台やエンディングはファンタジー、人物の境遇とお酒は現実です。

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レイカの父は、再会してもすぐまた死に別れることを知っているので、娘を悲しませまいとして、人違いだと言いました。パターナルな態度ですが、パターナリズムは人をしあわせにはしないのです。レイカは新しい家族の手前だと誤解しました。これは現実です。逆に

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魔法玉のこれはファンタジーのものだから、本物の魔法だったのです。

つまりレイカは本物の魔法を使って父親と再会できたが、自らそれを捨ててしまいました。父親はもうすぐ亡くなるでしょうが、遺産相続のためレイカにも連絡が行き、再婚相手と娘とは実の家族のようになれるでしょう。

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ミレはきついことを言うが、まったくただしいのです。言いかたはあんまりよろしくないが、ここで言わなければならないことではあるのです。

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ミレは啖呵を切って退職しますが、フェアトレードのプロジェクトの失敗の責任を取って上司は異動、ミレが係長待遇で復帰というのが妥当でしょう。腹立ちまぎれに会社まで辞める必要はどこにもなかったのです。もっともこれが事態をさらに良いほうに向かわせたのですが。

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矢部が超デキるイケメンだったのでリカバリーできました。彼は自分にとっていちばん大事なものを理解しており、しかも判断は的確かつ即決です。ミレの一つ年下で入社は二年違いですが、浪人や留年とはかぎらず、休学してなにかしていたのかもしれません。女子のみなさんに強調しておくと、こんな男子はいません!

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ソラもレイカとおなじく「傷つきやすく、言いたいことが言えない」子です。傷つきたくないあまりに「やっぱりダメだった」と安心したいのです。これはいちばん脳がラクな方法ですが、心はしんどいです。

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レイカとソラはタイプは違うが、どちらも「自分が否定される」ことに過敏です。ソラはわかりませんが、家庭的な性格のレイカは愛着に問題があるようです。

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自己愛にもとづく行動は悪い結果を生むというのがこの映画なのです。自己愛とは「傷つきたくない心」のことです。

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自己愛=背負った重荷、というイメージです。ミレがいちばん自己愛的でなく、レイカはけっこうハードモードなのです。大宮もヤバめ。ミレのようにズケズケものを言い、傷つかない鈍感さが必要なのです。もっと背中を見せ、重荷はで支えるのが丁度いいのです。もっとも彼女には冷静さが必要ですが。
レイカとソラは傷つきやすさが他人への攻撃にはつながらないところはとてもよいです。

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矢部が学生時代にイタリア旅行したという話をミレは忘れていたが

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彼が菱友に就職して両親が喜んでいたことは覚えており、辞めたと聞いてショックを受けています。2コマ目は怒りの表情ですが、3コマ目で我に返っています。ミレはけっこう親孝行ですが、自分もスパッと辞めており、親を気にして行動するソラのようなタイプではありません。

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ミレはフレンドリーなタイプで、この性格がフェアトレードのプロジェクトを成功させ、矢部をトリコにしたのでしょう。

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おジャ魔女を見て反省する素直さもあります。

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いやー、ミレさん友だちいたんですね

矢部もズケズケ言うタイプです。この映画にかぎらず、近年のアニメはおしなべて「空気を読まない」「言いたいことを言う」ことが美徳になっています。

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レイカはよく気づく家庭的な子なので、お好み焼き屋とおなじく、ガールズバーでも人気になりそうです。ミレはアスペルガー気味で掃除が苦手ですが、レイカは家事が苦にならないタイプなのです。押しつけているわけではありません。

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ソラのよいところは他人の役に立ちたいところと、(ミレに欠け気味な)長期的な視点なのです。レイカの夢は留学ですがステップを踏まず夢見がちな傾向にありました。

酔っぱらった上での行動は常によい結果を生んでいます。

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なにこのミレ優遇

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この映画では、子供は常に真実を口にするのです。大人の自己愛はみっともないが、酔っぱらいもみっともないのです。

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まとめると

・人物の境遇は現実だが、舞台はファンタジーであり、魔法もおジャ魔女もこの舞台世界に実在する。

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・魔法は存在するが、自己愛がそれを捨ててしまう。この映画では魔法は奇遇と言い換えることができるので、最初の10分で終わっているともいえます。

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これは酒ではなくアニメの力ですが、ミレは素直な女なのです。

・親はそう遠くないうちに死ぬ。ちみにレイカ=レ以下=ドシ、ソラはソラシ、ミレはミレドシです。レイカは20歳になってすぐ父親を亡くすので、ソラは30歳、ミレは40歳で親を亡くすでしょう。この映画の本当のターゲットはそういう人たちです。

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三カ月の間にレイカの父親は亡くなっていたかもしれません。であれば父親が彼女を見守ってくれているでしょう。

・創作も魔法のひとつ。

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「CAFE À la recherche…」とボカしてあるので、プルースト『失われた時を求めて』À la recherche du temps perduが元ネタで、「失われた魔法を求めて」とも考えられます。「失われた」ということは、一度は実在したということです。古代ミケーネのダジャレなのです。

・酒豪のミレ。ワイングラスはなみなみと注ぐものではありません。

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同一カットです。ひょっとしてこれを描きたかっただけなのか。

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