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AmiⅡ 第1章-疑心暗鬼②

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翌日、『証拠がある』と従兄弟に伝えました。
「何の証拠?」
「アミとの出会いは本物だったってこと。」
「どっちの?何の?」と、僕の気持ちなど気にも留めず、彼は尋ねるのです。
「浜辺の岩に刻まれたハートだよ。」
「物語だね。
そんなことはどうでもいいから、さっさと小説の推敲をしよう。
知能を持ったノミの代わりに、伸縮自在のサソリの種族の方がいいんじゃない?」
「でも、その前に海に行こうよ。
車を買ったばかりなのに...。」
「何だって?君はおかしいよ!
ビーチまでは100キロ以上離れているし、俺はとても忙しいんだ。
夢見る少年の妄想に興味はない。」
「でも、それを書き留めて稼ぐことには興味があるんでしょう...。」
「お門違いだね!
不謹慎な言い方は止めてほしいな。
俺は練習のために、君の冗談を書き留めてるけど、物事を混乱させたくないんだ。
それはフィクションであり、イマジネーションだよ。」
「でも現実なんだ!」
僕は、嫌々抗議しました。
すると、彼は、僕を責めるような目で見た後、「ペドロ、君の精神状態が真剣に心配になってきたよ。」
と言うのです。
その保護者的な口調に、僕はたじろいでしまいました。
純粋に自分がおかしくなってしまったようで怖かったのです。
不安からきっぱりと解放されたかったのです。
「ビクトル、ひとつだけお願いがあるんだ。
海辺に行こうよ。
もしハートが存在しなければ、すべては夢だったと認めるよ。
そうすればもう混乱することもないよね。
でも、もしハートがあったなら...。」
「無意味だと思うけど、よし、来年の夏は海に行こう。」
「来年の夏だね。来年の夏。 あと半年だね。」
「それまで我慢するんだね。
夏には、混同していることに気づくと思うよ。
さあ俺の小説の続けよう。
テレパシーを発するサソリがいる所からだよ。」
僕は、残酷な壁と直面しているような気がしました。
僕は、「それなら一人で行く!」と激しく反応してしまったのです。
「一人でとにかく海へ行くんだ。
僕は、君のテレパシーを使うサソリに興味はない。
馬鹿馬鹿しい、もう二度と協力しないよ!」
ビクトルは、僕の動揺を察して、
「そろそろ帰ろうか。
明日になれば、もう少し落ち着くよ。」
と言いました。
彼はノートパソコンを持って、僕に「またね」と言いながら家を出て行ったのです。
「もう二度と来るな!」僕は彼を怒鳴りつけました。
そして、自分の部屋に閉じこもったのです。
ベッドに横たわり、泣きそうになりながら......。
まあ、泣いたんですけどね。
でも、少しだけですよ、男は泣かないものですから......。
その夜、僕は、自分が哀れな犠牲者であるかのように嘆いたり、自分の困難に涙ながらに病的に甘えるのではなく、何かしようと決心したのです。
そこで、欲しいものを想像し、それが当たり前のようになると、実現するとどこかで読んだのを思い出しました。
1時間以上、暗闇の中で目を閉じていると、自分が海岸に到着したことを確信し、海の匂いや波の音が聞こえてくるような気がしてきたのです。
翌日の午後、ビクトルは口笛を吹きながら現れました。
「さあ、王者たちの出番だ!」
と、何事もなかったかのように明るく言うのです。
僕は冷たく、よそよそしく、「ごめん。宿題が山ほどあるんだ。」
と地理の本を開いて勉強しているふりをしました。
「1時間だけやろうよ。
テレパシーを持つサソリと、君の想像上の『いい人』であるオフィル星人との戦いを思いついたんだ。」
僕はカッとなりましたが、どうにかそれを隠しました。
「無理だね。また今度ね。」
「フム。昨日のことでまだ動揺しているの?
草原は広大で平らな荒れ地である。」
「何なの?荒れ地って?どういう意味なの?」
「フム。よし、ちょっと海辺で休憩しようかな...と。」
初めて彼が真実に目をむけようとしたのです。
希望が出てきたのです。
「金曜日の午後に海岸に行き、日曜日まで過ごしてもいいよ。」
「やったね!
でも残念だけど、そこでは冬の間、家を貸してくれないんだ。」
「問題ないよ、俺のテントとキャンプ用品を持っていくからさ。
ついでに、その岩にハートが刻まれてない事も調べてこよう。
そんなに嫌なら行かなくてもいいよ...。」
「嫌って?
もちろんそんなことないよ。」
僕は嬉しそうに叫びました。
「でも、どうして気持ちが変わったの?」
「変わった?
いや、ただ 昨夜は、君を連れて行くかどうか考えると1時間眠れなかったんだ。
でも、行くと決めたら、眠ることができたんだよ。
何故だかわからないけどね。
それに、ある日突然、俺の本が......つまり、君の本が、俺の助けなしに置き去りにされて、君が動揺するようなことがあってはいけないと思うから......。」
まあ、何が起こったのか、僕の信仰のせいなのか、何なのかわかりません。
そして金曜日の午後に荷物をまとめて、ビクトルの車に乗り込み、2時間ほどでビーチに到着しました。
まるで生命の息吹であるかのように、海の空気を吸い込むと、すべてが宇宙旅行の記憶、アミの記憶をよみがえらせたのです。
車から降りた僕は、星の子に出会った岩のほうをちらりと見ると、浜辺の上空に、空飛ぶUFOを見たような気がしました。


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