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AmiⅡ 第1章-疑心暗鬼①

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従兄弟が小説を書くのを手伝っていた時のことです。
なんと彼は、「知的な蚤(ノミ)による超文明についてくだらねーことを書きたい。」と言いました。
「遠くの銀河からやってきて、テレパシーでこの世界の住民を支配し、ウランを採掘させて搾取している蚤の物語」だそうです。
昆虫がテレパシーを使いこなす程の高度な進化を遂げたという、ナンセンスな話です。
僕は、彼のエゴでいっぱいの、グロテスクで不合理な、そして有害な、無知が生んだ産物を見ていると、イライラしてきました。
その上、彼は、「アミとの関係が夢だったという可能性は考えないのか?」
とも聞いてくるのです。
最初は、気にも留めなかったのですが、とうとう彼は、「証拠を出せ」とまで言いだしたのです。
僕は、アミからもらって祖母が食べた『宇宙人の木の実』のことを話し、おばあちゃんに聞きに行きました。
「おばあちゃん、ビクトルは酷いんだよ。
僕がアミの夢を見たと思ってるんだから、教えてあげてよ。
エイリアンナッツを食べたよね?」
「ナッツってなんだい?坊や?」
「エイリアンナッツだよ、おばあちゃん。」
「いつの事なの、ペドロ?」
と、口を大きく開けて驚いている様子で聞いてきたのです。
これを聞いて、ビクトルは、嘲るような勝ち誇った笑みを浮かべていました。
「去年の夏、海の家でだよ。
おばあちゃん、覚えてないの?
ビクトルに言ってやってよ。」
「私の記憶力の悪さを知っているでしょう。
今朝も、スーパーに財布を忘れてきてしまったのよ。
電気代を払いに行った時にうっかり失くしてしまったの。
あちこち探してみたんだけどね...。」
「でも、おばあちゃんが食べた『エイリアンナッツ』を思い出してよ。
美味しいって言ってたじゃない。」
「レジの人に待っててね、お肉屋さんに戻るからって言ったのよ。
いや、スーパーに行ったんだと思う、うん。
レジの女の子が正直でよかったよ、とっておいてくれたのよ。」
何千回も尋ねてみたけど、おばあちゃんは何も覚えていかったのです。
何も!
「ほらね。」
ビクトルは満足げな顔で言いました。
「証拠もないくせに。
すべては夢だったって受け入れろよ。」
美しい夢だったと認めざるを得ないのでしょうか。
そうでなければ、書き留めることはなかったと思うんだけど、結局はただの想像にすぎないのかも知れません。
僕は証拠を探しましたが、残念ながら、アミは『木の実』以外、何の記憶も、形も残していませんでした。
僕は考え続けました。
すると突然、希望の光が見えたのです。
「やったぞ!」
「何か証拠があるのか?」
「アミが帰ったとき、村の人たちはみんな『UFO』を見たんだ!」
これで、彼の敗北は決まったと思ったけど、なんと彼は受け入れませんでした。
「その日、目撃情報があったのは知ってるけど、そこで話を思いついたんだろう?
認めるんだ。」
悔しいことに何も思いつきませんでした。
「目撃者がいたんだ...目撃者が。」
「空に光る4万件のうち、たった1件の目撃情報かい?
プラズマ、大気の屈折、人工衛星、気球、飛行機、そして最も可能性の高い蜃気楼や妄想...要するに『空に浮かぶ光』じゃないか。
それを、地球外の宇宙船であると言い出すとは......。
いろいろと想像が膨らむよね。
しかも他の惑星とコミュニケーションをとっていたって証明できるのか?
それだけでなく、異世界を旅してきたなんて。
それはやりすぎだよ、ペドロ。
ファンタジー作家として活躍するのはいけど、想像と現実を混同しちゃだめなんだよ。
狂気の沙汰だよ。」
「でも、本当なんだ 。本当なんだ!」
「それは夢物語かも知れないよ。
君が覚えているのは現実ではなく、夢かも知れないってこと。
考えてみて。」
とビクトルが言いました。
でも認めたくなかったのです。
僕は、もう疲れました。
「明日も一緒に小説を書こうね」とは、言ったのですが、その夜、僕は混乱し始めました。
もし、これが夢だったとしたらどうしよう?
あり得ないと思いましたが、結局のところ、どんな証拠があるのでしょう?
その夜、僕は苦悩しながらも、何か手がかりがないかと、僕の本を、『アミ』を読み返したのです。
初めてだと思うのですが、隅から隅まで丁寧に読んだのです。
そして、反論の余地のない証拠を最後にようやく見つけました。
『岩に刻まれた翼のあるハート』です。
そうでした!ありました!
アミの着ていた白いウエットスーツの胸の中心には、円の中に翼を持つ黄金のハートが描かれています。
後でアミが説明してくれたのですが、それはとても高い種類の愛、ユニバーサル・ラブを意味しているそうです。
その絵は、彼が去った後、僕が宇宙少年と出会った場所の岩に刻まれたものなのです。
石に鋳込まれたようなハートです。
それとも、それも夢の一部だったのでしょうか...。
というのも、叔母が、『筋書き』のある細かいディテールに満ちた、とても長い夢を見ると言っていたのを思い出したからです。
翌日の夜も、目覚める前にいた場所で、何週間も続くソープオペラの章のように続くというのです。
アミとの出会いもそんな感じなのでしょうか...。
でも、アミ達にはリアリティがありました。。。
もし、それが存在しないなら、すべては美しい夢だったのでしょうか。。。

https://note.com/hedwig/n/n67c66a691489


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