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Ami Ⅲ 第2章 森の中で


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朝ごはんも食べず、トイレにも行かず、森の中へ駆け出したかったのです。
でも、ビンカのもとへ連れて行ってくれるという、アミとの約束を思い出し、アミの宇宙船は銀河系のどこにでも瞬時に「配置」できる事も思い出し、しっかりシャワーを浴びて髪も洗いました。
生まれて初めてコロンもつけました。
ビクトルが数週間前に僕を訪ねてきたときに置いていったものです。
一番いい服を選んで、コロンをつけて、髪をとかし、着替えて、直ぐにでも外に飛び出したかったのですが、祖母がダイニングテーブルに朝食を用意して待っていました。
「どうしてそんなに急いでいるの?
何をそんなに喜んでいるの?ペドゥリート。」
「いや、なんでもない。
ただ、天気が良くて...。」
「曇っているし、ちょっと寒いわよ...。」
「あ。。。」
答えられない質問を避けるために、コーヒーを一気に飲み干し、サンドイッチを手に急いで外に出たのです。
「ペドゥリートミステリーね。」
と、彼女はなんとか笑顔で言いました。
松林は海辺からあまり近くないところにありました。
僕は村に向かって走り、村を通り抜け、そこの幹線道路にたどり着き、それを渡り、潅木地帯に入り、森に向かって急な坂道を登りました。
前回の旅でアミが「先に僕を迎えに来て、それから彼女の惑星に行こう。」と言っていたので、また異空間での旅になるのだろうと心の準備をしていたのです。
もうすぐビンカに逢えるのです!!!!!!!
雲は消え始め、海は灰色から美しい青色に変わりつつありました。
あと数分でアミと、そして星空の旅を経てビンカと一緒に過ごせると思うと、僕は、喜びいっぱいで一本松にたどり着きました。
僕は、彼が船の画面を通して僕を見ているのではないかと想像しながら、雑木林の中をさまよい、あたりを見回しましたが、何も見えず、何も聞こえなかったので、森の中の空き地に座って彼を待つことにしました。
彼は、僕よりも僕の場所をよく知っていることを思い出したのです。
草の上に座り、焦る僕の背後からアミが現れ、「私が誰だかわかるかな?」と僕の目を手で隠すのではないかと思ったのです。
僕はその考えが気に入ったので、数分後、誰かが僕の背後に近づいてくるのを感じたとき、僕は目を閉じてじっと座り、好奇心と興奮を抑えようとしました。
確かに、温かく愛に満ちた手が僕の目を覆いましたが、アミは何も言いませんでした。
そして、予想もしなかった香りと振動を感じ、僕の心を躍らせ、とても美しく深い感情を蘇らせたのです。
ビンカの香りだ!!
彼女がそこにいたのです!!
まだ目を開けずに、その愛しい手を、細長い指を、柔らかい髪の毛を、尖った小さな耳を、撫でました。
僕がひざまずと、彼女がそこにいて、やっとビンカに目を向けました。
そして、彼女の目に、あの喜びの、無限の、紫色に輝く愛情に、出会ったのです。
僕はアミのことを考えず、他には何も考えず、深い愛だけが僕たちを連れて行くことができる、別の平面、別の存在の次元に消え、僕たちを結びつける強力な力、その崇高で言いようのない陶酔に身を委ねました。
僕たちは話すことができなかったし、話す必要もありませんでした。
その上、僕は翻訳機を持っていなかったし、彼女も同様で、僕たちはどちらも相手の言語を話せなかったから、話したとしてもお互いに理解できなかったでしょう。
後で知ったのですが、アミは、ビンカが船から降りる前に、彼女から翻訳機を外していたのでした。
そして、彼は、彼女に後で必要になるだろうとも言っていました。
彼は、他には何の説明もしなかったようなのです。
僕たちは芝生の上に寝そべりました。
目が合うたびに、喜びと、他の何ものにも代えがたい幸福で、微笑まずにはいられませんでした。
しばらくして、美しい愛撫の祭典の後、再会の喜びに慣れた僕は、やっとこの現実に戻り、ふと、あの友人のことを思い出したのです。
「彼の存在を忘れていた!
アミはどこ?」
僕は翻訳機の件を思い出せず、あたりを見回しながら、無駄なことを彼女に尋ねました。
彼女は不思議そうに僕を見て、「Sdgdlñjfhadr diu zñfiughaer」とか言いました。
それから僕たちは小さな翻訳機のことを思い出し、笑い出しました。
そのとき初めて、彼女の声がとても美しいことに気づき、とても深いところにまで届いたのでした。
「ビンカ、君の言葉は全然わからないけど、君の声がとても美しいと思うんだ...。
どうかもっと話してくれないかな。」
と僕は言いました。
僕の考えを理解してくれたのか、彼女は話し始め、私はまるで不思議な魔法にかけられたかのように聞き入ってしまったのです。
その心の底から湧き出るような歌声の音楽性に、目を閉じていつまでも聴き入っていたい気持ちになりました。
「禁断の恋はもうたくさんです。罪深きお二人さん。」
アミが冗談を言いながら、明るく笑いました。
親愛なる白い人影がこちらに向かって歩いてきました。
彼はビンカの言葉も話していたのです。
多分、同じことを言っていたのでしょう。
いつものように明るく元気に近づいてくる彼を見て、僕の胸は高鳴りました。
挨拶をして愛を伝えようと立ち上がると、以前より彼の背が少し低くなっているのです。
僕がこの数ヶ月で大きく成長していることに気づかされました。
僕は、少しかがんでアミを抱きしめることになりました。
ビンカは満足そうに草の上に座ったままでした。
とても温かく幸せな再会でした。
アミは僕たちに翻訳機のヘッドホンをつけながら、「ビンカ生の声が聞けてよかったですか?」と言いました。
「もちろんだよ!
彼女は僕の魂をなごませるかのように話すんだよ。」
「だからこそ聴いてほしかったのです。
彼女は特別に美しい声をしていますからね。」
「他の多くの美しいもの以外にもね。」
と僕は彼女を愛情を込めた目で見つめながら付け加えました。
すると、彼女は微笑んで、僕の声もとても好きだよ、と言ってくれました。
「彼女は優しいからそう言ったのですよ。
君は醜く話すからね...ハハハハ。」
草むらに横たわるビンカは、納得がいかないというように、彼を見つめました。
「冗談ですよ。お子様たちよ。
話は変わるけど、私よりずっと背が高くなって、いい気分でしょう。
そうでしょう、ペドロ?」
「いや、アミ... まあ、君は気分が悪くないの?」
「ビンカを見た時に動揺するほどではありません。」
「僕は、アミが、何を伝えたいのかがわかりませんでした。
僕は、美しいソウルメイトを見て、何も悪いところはないと思ったからです。
「ビンカを見て動揺?
でも、もう見たし、何も問題ないんだけど...。」
「ビンカ、立ってください。」とアミが声をかけました。
その時、僕は固まってしまったのです。
それまで一緒に立っていたわけではなく、膝をついたり、芝生に寝転んだりしていたので、僕も大きくなったけど、彼女はずっと大きくなっていて、僕は彼女の鼻までしかないことに気づかなかったのです。
まさかそんなことになるとは思っていませんでした。
僕はそれを全く期待していなかったし、複雑な気分になりました。
彼女がショックを受けるのではないか、失望するのではないか、愛してくれなくなるのではないか、そんなことを考え、恐ろしい気持ちになりました。
彼女は優しく僕を抱きしめ、頬にキスをした時、僕は床を見下ろしていました。
もちろん、彼女が少しかがむ必要がありましたが。
「こういう進化していない人は、外見しか見ないから、『光学的人種差別』に苦しむのです。」
とアミが赤ちゃんのような笑い声で言いました。
「心配しないで、ペドロ、今まで通りあなたを愛しているわ。
私たちは、外見なんか関係ないって知ってるわよね。」
とビンカは僕を慰めようとしてくれました。
「うーん... そうだね。」
「でも...ペドロにとっては不愉快な驚きだったでしょう。
当然の事ですよね。」
とアミが口を挟みました。
「私は、ここに来る途中、あなたが彼女ほど成長していないことを彼女に警告したのです。
すると彼女は、ポケットに入れて運ばなければならなかったとしても全然平気だって言うから。は、は、は、は、は。」
「本当なのよ。ペドロ。
あなたが私の親指くらいの大きさだったとしても、私はあなたを心から愛さずにはいられなかったわ、あなたもわかってるでしょ。
でも身長差はそんなにないから、自分でトラブルを起こさないでね。
それに、アミは、あなたが、もっと精神的な成長をしなきゃいけないって言ってるのよ。」
「将来、君が僕よりもっと大きくなるなんてことが起こらない限りはね。
だが今はどうだ?
僕が、君の鼻にやっと届く程度なんて、大した違いではないと思うの?」
「おでこの生え際にぴったりですよ。
でも、複雑な気分になって、彼女の前で猫背になってしまい、自分の身長が低いと思っていたんでしょ。
でも、彼女の横にまっすぐ立ってみれば、私が正しいことがわかると思いますよ。」とアミ。
本当でした。
少し猫背になっている自分に気づきました。
背筋を伸ばして見てみると、それほど大きな差はないのです。
彼女は嬉しそうに僕を抱きしめました。
その温かい眼差しに、心配は無用だと感じました。
僕は自信を取り戻し、ビンカの腰に手を回し、古い映画『心の鼓動』の俳優の声を真似して、「本当だよ。君の方が、多少背が高くても、俺はお前のタフガイだ。気をつけろ、ベイビー。」と冗談を言ったのです。
僕とビンカは笑い、アミも笑いましたが、「その先史時代的なマッチョ信仰を本気にしないでほしい。」と言われました。
「冗談だよ、アミ。
おばあちゃんやよく観ている、ガリ・キューパー、ロク・ジャドソン、ジャンプリ・ヴォーガーなんかの、昔の映画のイケメン俳優の真似をしただけなんだ...。」
「でも、忘れてはいけないのは、マッチョが意味を持つのは、筋肉と大きさが、生存にとても重要な原始人状態で生きている世界だけだということです。
そこでは、保護するという理由から、男性が女性よりも強くて背が高いことが適切だったかもしれません。
しかし、あなた方の惑星はすでにそのような古い段階を越えているのです。」
アミが、僕の星やそこに住む人類のことを、よく解っていないように思えました。
ここでは、男性にとって、高い身長と立派な筋肉が、知性やお金と同じくらい重要であり、女の子たちも大体そう思っているのですから。
ビンカも同様に感じているようで、口を挟みました。
「アミ、キアでは、私たちはテリスに支配されているのよ。
彼らが私たちスワマより大きいからこそ、私たちは支配されているの。
それでも、アミは私たちの世界がその段階を越えていると言うのかしら?
理解できないわ。」
「あなたは、乗り越えたじゃないですか?
ペドロが背が低くても気にしないんでしょ?」
「まあ、私の場合はそうなんだけど、大多数は...。」
「ビンカ、決して大多数が考えていることではなく、自分の心と知性が決めたことに従ってください。
多くの場合、人は人と違うことを恐れて、あるいは自分の本当の気持ちを見ていないから、人と同じように考えるふりをしますが、もしかしたら心の底ではあなたと同じことを考えていて、あなたを支持し、自分の意見を強化するために、あなたの意見に耳を傾ける必要があったのかも知れません。」

興味深い言葉でした。
そして、「みんなに必要ないい考えであっても、それを表現する勇気がなければ、そのいいアイデアが広まることも、実現することもなく、あなたの恐怖心のせいでみんなが損をしてしまうのです。
と、僕たちを見ながら笑顔で説明しました。
「しかも、自分だけが、違うことを考えていたわけではないことを、知らないのでしょう。」
「そうだね。アミ。
でもね、君に出会い、オフィルの素晴らしい世界や、その他の進化した場所に行って以来、この惑星に、これほど多くの苦しみがあるのは、あまりにも不条理で残酷だと思うようになったんだ。
少しの善意ですべてが簡単に手に入るんだものね。
でもね、僕は、この単純な考えが、僕を妄想癖のある狂人のように見えることにも気付いちゃったんだ。
だから、もう誰ともこの話題をしたくないんだよ。
そして、同じことが他の多くの考えにも起こるから、結局、口を閉じて、たとえそれが真実でなくても、傷ついたとしても、他の人と同じように行動し、意見を言うようにしてるんだ。」
「わかりました、ペドロ。
誰もが本音を隠して行動しているので、自分だけが、みんなと違った考えをしていると思うから、笑われたり怒られたりするのが怖いのでしょう。」
「僕を殴ってもいいよ。」
アミは笑ってから、こう説明しました。
「見た目はともかく、出来る限り自分自身をテストし、表現してみてください。
穏やかさと敬意をもって、気分を害したり、攻撃したりすることなく。
あなたが本当に感じること、特に、あなたの思考が愛の知恵によって照らされたとき、あなたは多くの人々があなたに同意する事に驚くでしょう。
あなたの世界が変化しているからです。」

それでも、まだ、現実的というより、理論的な感じがしました。
「もし、僕が思っていることを全部言ってしまうとしたら......。
いや、殉教者にはなりたくないんだ、アミ。
苦しいのは嫌なんだよ。」
「何が起こるかというと、始まる変化によって、非常に多くの魂が、あなたと同じように、真実で自然なものに、もう少し従って生きることを好むようになっていくのです。
あなたは、今、それを無視しているのです。」
ビンカはまだ疑問でいっぱいでした。
「私は、そんなに人が変わっているとは思えないのよ、アミ...。
私の星では、老若男女問わず、みんなほとんど同じ行動をしているの。
良い人もいるんだけど、一般的には表面的で利己的、物質主義が蔓延しているのよ...。
地球上でも同じかどうかはわからないけど、ペドロ。」
「同じだよ、ビンカ。」
すると、アミが、深く呼吸をしてから言いました。
「彼らは、多かれ少なかれ同じように振舞います。
なぜなら、あなた方の世界では、間違った考えや残酷な行為に基づいたシステム、つまり、人間や生命一般に対する尊重や尊敬の念を持たない古いシステムによってもたらされた、流れに乗らざるを得ないからです。
これらのシステムは善、愛に基づくものではなく、物質に基づいているのです。
愛に基づかないものは幸福を生み出せないので、大多数は幸福ではなく、この問題は避けられないと考え、口をつぐんでしまいます。
そして、そのようなことが延々と続き、何も変わらない、あるいは、以前は何も変わらなかったと思っています。
しかし、問題が好転しているのですから、私達は、より良くなったと言うべきでしょう。
多くの人が変わり始めていて、それが宇宙に伝わっているのです。
その前向きな流れに参加して、より大きな力を与える必要があります。
善と生命を守ることは、自分自身を守ることであることを忘れてはなりません。」

何を言われたのかよく覚えていませんが、これからは、もっと誠実になって、僕たちが書いた本だけではなく、自分の気持ちや考えを隠さず正直でいるつもりでした。
「でも、世の中に腹を立てて生きてはいけませんよ。子供たち。
影は光よりも少ないのだから、暗い面ばかり見ないで下さい。
と、明るく微笑みながら言いました。
私たちが、周囲を見回すと、夏の朝の森の美しさを実感しました。
今はすっかり晴れ上がり、輝く太陽の下、人はネガティブなものばかりに目を向けていてはいけない、他のものがもっとたくさんあるのだからと、それが、本当なのだと気づかされたのです。
花や松、ユーカリの香りがする爽やかな風が、顔を撫でていきました。
アミは、芝生の上にあぐらをかいて座り、僕たちも同じように座りました。
「子供たちよ、再会を喜んでいるようですね。」
と、茶目っ気たっぷりにアミが言ったので、「嬉しいよ。」と僕たちは答えました。
「それなら、前の旅で私の船でお別れをするときに、そんな大げさなことをする必要はなかったと気づくはずですよね。
そうでしょう?」
僕たちは、少し照れくさそうに顔を見合わせました。
彼の言う通り、僕たちは別れを回避しようと、あの反抗的な「反乱」を起こすべきではなかったのです。
僕たちは再び一緒になり、過ぎ去った時間が、つかの間の夢のように感じられるようになったのですから。
「確かに...僕たちは愚かだったね。」
「ブラボー、それを解ってくれてよかったです!
じゃあ、今日も別れる時が来ても、騒がないでくださいね。」
「何だって、今日、別れるの!?」
僕たちは、動揺して叫び、彼が笑っている中、お互いを抱きしめ合いました。
「また役立たずの魔法にかかってしまいましたか?」
その言葉で、僕たちは『役立たずの魔法にかかった』のではなく、『大きな愛』であり、年に数時間しか一緒にいられないのは、あまりにも残酷に思えたのです。
と言おうとしたら、ビンカが同じことを言いました。
「愛は冗談じゃないのよ、アミ。
特に私達のようなソウルメイトの愛はね。
だから、また離れ離れになってしまうことが、私達には辛いのよ。」
「解っています。子供たちよ。
肉体を超えた出会いを楽しむことをまだ知らないから、別れる事がつらいのです。
なんて残念なことでしょう。」
その言葉が、僕がいつもビンカの存在を、自分の中に永久に感じ、彼女と一緒にいることを想像した、幾夜もの夜を思い出させたのです。
この想像上の出会いはとても強烈で、僕たちは本当にひとつになったのではないかと思えるほどでした。
とアミに言いました。
それを聞いたビンカが、「自分もそうだったのよ。」と言い、「その瞬間、私たちは本当にひとつになれたと思うの。」とも言っていました。
「あなた達は、物質的な肉体ではなく、魂と一体になっていたのです。」
「もちろんだよ。」と僕は言ったのですが......。
「真の愛は、肉体の問題ではなく、魂の問題なのです。
だから、物理的な形に依存する愛情は一過性のものだと言えます。
数本のシワができ、数キロの体重が増えると、もう愛はない......。
それは愛ではなく、外見や服による一過性の磁力で、深みや強さはありません。
しかし、真の愛には身長も年齢も外見もありません。
魂と魂の問題であり、相手から発せられるエネルギーを愛することです。
そのエネルギーは、その人の内面的なすべてを要約したものだからです。
その気持ちには、距離も時間もありません。
その愛は、死んでも消えることはないのです。」

彼女は感慨深げに僕を見つめていました。
僕たちは、アミが言っているのは、僕たちを結びつけているような愛のことだと知っていました。
そして、僕たちは再び抱き合って愛撫したのです。
それは、僕たちが、他の宇宙のことを忘れてしまうような、時間を超えた次元に再び足を踏み入れさせたのです。
何分たったかわからないけど、アミが「正直、このメロドラマは、ちょっと長いですね。」と、皮肉を込めて言いました。
その言葉に、照れくささを感じながら今に戻ってきたのですが、大切な友人を見ると、茶目っ気を見せようとする笑顔とは裏腹に、その目には隠すことができない感情があることにに気づきました。
「無駄なおしゃべりは伝染します。
恋愛は、石化したグアラポサウルスさえも興奮させる振動波を出すのです。
はははは!」
と彼は僕の考えを察知して言いました。
ふと気がつくと、色とりどりの蝶がたくさん舞っていました。
「ペドロ、鳥が美しく歌っているのに気づきませんでしたか?」
森羅万象が歌い、踊り、色彩、鳥、虫、花々が、僕たちの幸福のために捧げられたコンサートのように思えてきたのです。
「あなたの幸せによって、引き寄せられたのです。」
と彼は言いきりました。
「なんて素敵なの!!」
芝生に座っている僕たちを取り囲む、楽しげな騒ぎにうっとりしました。
「あなた方が、より高い振動を放射しているのです。
すでに、愛が宇宙で最も高いエネルギーであることを知っているのですから。
この光り輝く『ダンス』を引き起こす『音楽』を生み出しているのは、あなた方なのです。」

ビンカはこう結論づけました。
「では、愛は喜びを引き寄せ、生み出すのですか?」
「もちろんです。
すべての生き物は、その起源である普遍的な愛、すなわちすべての至福に向かう傾向があります。
そしてそれは、愛がないことが、それを追い払う理由でもあるのです。

だから、不愉快な人は、愛を放たないから不愉快なのだということが解りました。
「心を開くことができないのです。
あるいは開こうとしないからなのです。
さて、船へ行きましょう。」
と、ベルトにつけた船のリモコンを操作しながら立ち上がりました。


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