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AmiⅡ 第3章-二度目の出会い①       

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僕が、アミを抱きしめると、思わず嬉し涙がこぼれました。
それは疑いようのない事実でした。
すべてが現実だったのです!
「背が高くなりましたね。ペドロ。」
「そうだよ。
君はこんなに小さかったっけ?
それとも君が縮んだの!?」
今まで何度もそうしてきたように、僕たちは笑いあいました。
すると、ふと、テントで待っているビクトルのことを思い出したのです。
「前は、おばあちゃん、今は従兄、 心配しないで生きていけないのですか?被害妄想さん。」
彼は、いつも僕の思いを察知して、笑ってくれました。
「その通りだけど、それは......。」
「もう大丈夫です。
テントの中でぐっすり寝てもらいましょう。
自由に夜を過ごせるのです。」
「本当に眠ってるよね?」
「もちろん!
スクリーンで観てみましょう。」
と、アミはベルトにつけた小さなテレビのようなものを手に取りながら、言いました。
「その必要はないよ。
君を信じてるから。」
「素晴らしい進歩ですね。」
「どういうこと?」
「何かを信じられるようになったことです。」
「なんだよそれは、アミ。」
「この旅は、あなたの疑念が動機だったのでは?」
僕は少し考えてから答えました。
アミの言う通り、僕は彼の存在を疑っていました。
だから、来て確かめたくなったのです。
「確かにそうだね。
でもその価値があったよね。
今、僕は君が存在していることを確信しているんだもん。」
「私が去った後、また全部夢だったと思うんじゃないですか?」
「まさか、君は実在してるよね。」
と、僕は彼の肩を叩きながら答えました。
「前にも私は実在したのでは?
疑ってるのですか?」
またしてもお見通しです。
「どうして今まで本当だと思ってても疑ってしまうんだろうね、アミ?」
疑いというのは、ネガティブな思考です。
だから、私との出会いのような、あなたが経験したことのある最も美しい現実から切り離す力になるのです。
それは現実なのですが、高い波動の現実です。
疑いを持ったあなたは、驚異が存在しない低い波動の現実へと降りていき、この美しいものは存在しなかったと信じるようになるのです。

とアミは、海を見ながら言いました。
僕は彼の説明をよく理解できなかったのだけど、「もう二度と疑ったりしないよ。アミ。」と謝りました。
「でも、どうして去年の夏に来なかったの?
僕は、小説を書いていたんだよ。」
「それで、私がすぐに来ると思ったんですか?
正確な日にちを言わなかったのは、私でさえいつ来れるかわからないほど、やることがあるからです。
忍耐力、平和の科学、心の平和を保つための科学を自分の中で育てなければなりません。
せっかちな人は、宇宙と調和していないのです。
すべてのものには、その時間、その時があります。

それに、あなたのネガティブな思考は、私と連絡を取るのを困難にしていたのですよ。
でも、あなたは特別な存在なのです。

「ごめんね、アミ。
二度と疑ったりしないよ。
繰り返しになるけどね。」
アミは、湾の向こうの村の灯りを眺めながら、夜の空気を吸い込みました。
それでも、宇宙ではすべてが完璧にうまくいっているのです。
さあ、銀河の旅にご案内しましょう。」
「やったね! 船はどこにあるの? 水中?」
「いいえ。この上です。」
彼は空を指差しました。
見上げても、星しか見えません。
「不可視モードになっています。
さあ、紹介したい人がいます。」
「今回は僕だけじゃないの?」
と聞くと、彼はベルトから装置を取り出して、「はい。他にもいます。」と答えました。
最初は、知らない人と旅行を共にするのが嫌で、彼と2人だけの方が安心だと思いました。
「どうやって船に乗るの?」と僕が言った瞬間、強い黄色い光が僕たちを照らし、同時に自分が宙に浮いていくのを感じたのです。
今回は、前にも経験したことなので、パニックになることはありませんでした。
僕たちの頭上には、胴体の下に光の開口部を持つ『UFO』が現れました。
気づくと僕たちは船の中にいて、前と同じ小さな応接室に立っていました。
僕は、ワクワクせずにはいられなかったのです。
「どうしたんですか?」
とアミは笑いながら尋ねました。
「ふざけないでよ。
またここに来たんだね。
とても非現実的だけど、ファンタジーじゃなくて現実なんだよね。
ありがとう、アミ。」
あなたに疑いさえなければ、あなたにとってこれは全く正常のことで、いつものように、泣きわめくこともないのです。
さあ、『疑い袋さん』、ある人が管制室で私達を待っています。
こっちへ来てください。」
僕は、あまり気乗りがしないまま、彼の後をついて行きました。
緑色の顔をした紳士が待っているのだろうと想像していました。
オフィルでは、さまざまな不思議な存在に出会いましたから。
中に入ると、きれいな肌、紫色の目をした細身の10代の少女がいたのです。
彼女は、ピンク色の髪に、黄色い布に大きな赤い点がついた馬鹿げた蝶を飾り、ゆったりとしたブルーの服を着ていました。
彼女は、まるで僕が異常者であるかのように、真剣な眼差しで僕をジロジロ見つめるのです。
愛想が悪く、間違いなく醜いと思いました。
すると、アミは奇妙な言葉で彼女に話しかけ、僕の名前を言いました。
「ビンカを紹介します。
さあ、お互いに挨拶を交わしましょう。」
と、彼は微笑みながら両方の言語を使って、僕たちを促しました。
そして、僕たちは、喜びもなく、親しみもなく、互いに顔を見合わせたのです。
すると、彼女は細長い手を差し出のべてくれました。
僕は、抵抗を感じて、最初は、ほとんど触れることができませんでした。
でも、彼女の指をこっそり数えると、それが5本あって、しかもきれいな指だったので、礼儀として彼女の手を握り返したのです。
その見た目の奇妙さとは裏腹に、手のひらには心地よい温もりと柔らかさが感じられました。
僕は「はじめまして」と言いながら、僕の国の少年少女の習慣である顔へのキスをしようと近づきました。
すると、彼女は解読不能なことをつぶやき、驚いて頬を引っ込めたのです。
アミは笑い転げ、僕の世界では、そんなふうに挨拶するのが普通なんだと説明してくれました。
「彼女の世界では行わない事です。
習慣の問題です。」
と、アミはまた笑いました。
そういえば、オフィルではキスはごく普通のことでした。
『ってことは、この星は進化していないんだ!』と推理したのです。
「その通りです。
彼女は、地球と同じように原始的で暴力的で、偏見と分裂に満ちた世界から来たのです。
まあ、話が出来た方がいいですね。
これを耳に当ててみてください。
翻訳機です。」
アミが手にしたのは、イヤホンかヘッドホンのような、線のない小さな物体でした。
アミは、好奇心旺盛な紫色の存在にも1つ手渡しました。
「さあ!お互いに話しましょう。」
とアミが言うのを、イヤホンからの翻訳機を通して聞いていました。
すると「こんにちは。」とその存在は言いました。
その唇は奇妙な音を立てていましたが、翻訳機を通して理解することができたのです。
「こんにちは。」と僕も答えました。
「あなたの星の名前は何ですか?」とその存在が僕に尋ねました。
「地球だよ。」
「君の星は?」
「キア。」
今、彼女の声を聞き、コミュニケーションが取れるようになってから、彼女の存在は僕にとってより心地よいものになりました。
「ビンカは何歳なの?」と僕は尋ねました。
「3008歳..ほとんど...、いや3007年3カ月です。」と、彼女はとても冷静に答えたのです。
彼女はそんなにひどく年を取っているようには見えなかったので、僕は動揺しました。
「待って待って。
キアという惑星が、20回以上太陽の周りを回るのに対して、地球は1回しか回らないから、結局、どちらも同じぐらいの年齢なんですよ。」
とアミが楽しそうに説明してくれたのです。
僕は、ビンカを注意深く観察しました。
生まれたての雛のような細い髪とよく似合う、尖った耳がとても素敵な女性でした。
「君の世界では、人々はお互いに顔にキスをしてはいけないの? 」
すると、ビンカが「恋人や夫婦の間だけなのよ。」と答えてくれました。
「地球はとても進んでいるのね。」
「オフィルのようには進んでないよ。」
「オフィルって何なの?」
「進化した世界だよ。
ねぇ、アミ、ビンカと宇宙でお散歩しなかったの?」
「はい。オフィルには、行っていません。
今から、銀河のダンスという、とても面白いショーを見ることができますよ。」
「まあ、星が動いていることは知っているけどね...。
惑星は動くけど、星は静止しているんだよ。」
と僕は天文知識を披露して、ビンカを感心させようと思ったのです。
すると、アミは少し笑ってから説明しました。
「動かないように見えますが、銀河の周りをすごいスピードで動いていて、すべてが膨張しているのです。
今度は、皆さんが住んでいる時空の外にいるかのように、そこから天の川を観察してみましょう。
テンポのいい映画を見るようなものです。
わかりますか?」
2人とも、あまり自信がなさそうに「はい」と答えました。
「全ての星は動くと振動を発するのです。
そして、それを音として聴くことになります。
同時に、銀河系のあらゆる天体の音も拾うことになるのです。
さあ、行きましょう。」


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