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〝ベーシック・クウォランティーン〟〜 医療崩壊を防ぐ、新型コロナ対策の大阪モデル

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〝ベーシック・クウォランティーン〟                 医療崩壊を防ぐ、新型コロナ対策の大阪モデル


大阪府吉村知事は要請解除の条件として医療崩壊を起こさないことを第一としていて、大阪府が数値として示した基準案を発表した。

 ▼陽性率が7%未満であること
 ▼感染経路の分からない人の数が、1日の新規陽性者のうち10人未満であること
 ▼重症者向けの病床の使用率が60%未満であること
 
これらの基準を7日間連続で満たしていることを解除の条件としている。吉村知事はこの基準を15日の段階でクリアしているか判断し、5月16日から段階的に解除する考えを示している。


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ベーシック・クウォランティーン


ベーシック・クウォランティーンは、ベーシック・アーキテクチャーの延長概念であり、年齢・性別・所得の有無を問わず、すべての人々に医療保障として「検査」と「病床」を補償することを理想とする独自の理念。



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「病床使用率」


私たちは、新型コロナウイルスの対策において、〝失われた100日〟を決して繰り返してはならない。大阪においては、初発的にこの新型コロナウイルスは、インフルエンザや流行性感冒、風邪などではなく、HIVエイズウイルスに近いという原点を再認識する。政府の無策と「騒ぎすぎ」や「検査不要」のインフォデミックにより、外出自粛の徹底化が実現出来ず、医療崩壊の危機が迫っている状況認識を行う。そして、行政、府民が強い危機意識を持って共有し、まず医療崩壊を防がなければ、助かる命が助からなくなるという考えの下で、「病床使用率」ー新型コロナ対応のベッド数と入院患者数データのオープンデータとトランスペアレンシーを徹底させる。     
  
医療のキャパシティーがどれくらいかを示す必要がある。これが「病床使用率」。現在は30%台。50%になると黄色信号。重症者60%以下であれば徐々に解除していく。

地域における医療機関の病床機能については、医療法で定める「一般病床」「療養病床」「精神病床」「感染病床」「結核病床」という病床分類や、地域医療構想でいう「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」という4種の病床機能だけでなく、病院の病床数規模がその施設で担うことができる診療機能に影響するものと考える。

平時であれば、高度急性期の診療は病床数が多くICUのある公的医療機関で行い、回復期治療はリハビリ施設で、療養的な対応は中小規模の慢性期施設でといった機能分担が可能である。しかし、今回の「新型コロナウイルス感染症」のように、基礎疾患の重症度等でなく感染症への集中管理需要が問題となると、病床数が少ない施設では対応が困難である。その結果、大規模病院で本来担うべき高度急性期需要に十分対応できず、院内感染などとも相まって、いわゆる「医療崩壊」という様相をきたしやすい。

中小規模の病院がその役割を担うには、大規模病院等からの人的派遣が必要となる。現在、ホテルでの軽症・無症状患者への対応が進められているが、一定のリスクを背負いつつ、無限ではない医療従事者を分散させる結果ともなっている。
つまり、感染症患者には個室管理と同時に、体育館やスタジアムなどを有効活用した、コホーティング対応の拡充も進めていく必要がある。



「検査陽性率」


今、この国で行われている検査拡大のアプローチは、行政検査の拡大でしかない。PCR検査外来を回していかないと今の感染を抑えられない。検査をどんどんおこない、陽性者を隔離するというのは感染症の基礎である。

今後、大阪府ではより効率よく安全にPCR検査をおこなうためにドライブスルーとウォークイン方式によるPCR検査の方法を導入。
これは、医療機関の駐車場スペースにブースを設置し、ドライブスルーの人は車から降りず窓を開けて、徒歩の人は椅子に座らせて検査を実施するというものだ。

PCR検査のスピード化を図り、「最長10日待ち」という現状の改善や、民間委託で拡充を急ぎ、「保健所受け付けず」の現状も改善していく。

「検査」と「病床」の問題は、一つの器の内側と外側の問題であり、表裏一体なのである。陽性であればどこに入院するか病床の確保が最大の問題になってくる。本来の保険適用による、民間における臨床検査を拡充して行くためには、防護服や器材、設備、動線の確保等の問題はあるが、検査における契約条件の緩和が必要である。

また、「もうひとつはどのように患者が増えているのか。これは陽性率である。検査の件数に対してどのくらいの陽性者がいるか。今は数%台」とし、上昇すれば休業要請、下降すれば解除していく考えを示した。

東京都は新規感染者を探す検査と、陽性者の陰性化を調べる検査が区別されていないため、真の陽性率はこれよりも高いはずです。陰性化するまで10回以上の検査を受けたケースもあるようである。

東京都のコロナ情報サイトを見ても、検査人数と検査件数の統計の定義がよく分からない。分母となる「検査実施人数」からは、幾つかの数字が除かれていることになっている。特に重要なのは、「医療機関による保険適用での検査人数」。医療機関から保険適用で民間検査機関に回ったものは、分母からは除かれているのである。

これらすべてが検査件数として計上されているかは不明だが、大阪府のデータは現在5%程度まで低下してきており、陰性化確認の検査数は除外されているので、実際の陽性率を反映していると考えられる。

厚労省の発表している都道府県別PCR検査に関するデータから4月24日から27日まで4日間の東京での陽性率を計算してみると、28.0%(陽性者数375名、保険適用外の検査人数1341名)。したがって真の陽性率は12%と28%の間となる。一方、大阪府での4月24日から27日までの陽性率を厚生省のデータから計算すると10.2%(陽性者数106名、検査人数1034名)でした。大阪では保険適用の有無は区別しておらず、また重複した検査は除外しているとされている。したがって大阪の真の陽性率は10%程度と考えられる。



「実効再生産数」


大阪府吉村知事は、政府が5月6日に期限を迎える緊急事態宣言を1か月延長する方向で調整に入ったことに関連して、政府に1人の新型コロナ感染者が何人にうつすかの目安である実効再生産数の都道府県ごとの数字の公表を迫った。

「実効再生産数」は、判断指標、目標指標として重要な数字。海外ではこれを解除の判断基準にしている所もある。

緊急事態宣言に伴い、全国的に外出自粛の動きが強化されたことで、どんな効果が表れたのか。5月1日に開かれた政府の専門家会議が着目したのは、1日当たりの新規感染者数だけでなく、感染症の流行時に感染者1人から平均何人にうつるかを示す「実効再生産数」の値だった。

 実効再生産数が「1」を上回れば感染が拡大し、下回れば縮小に向かうため、欧米では感染拡大防止策としての行動制限を緩和する際の目安にされている。

多くの国民は感染症との戦いのゴールをどこに決めているかと知りたいと思っている。新規感染者をゼロにするのか、「実効再生産数」をいくつまでにしたらゴールにするのかとか、そういうゴールを決めなければ、何の根拠もない自粛要請に納得できるはずがない。ゴールを決めるから条件が出てくる。条件を出すためには科学的根拠が必要になってくるのである。

感染者1人から平均何人にうつるかを示す「実効再生産数」については「4月10日の段階で0・5(東京)だった、0・7(全国)だった。あれからもう3週間以上経って、これだけの自粛もして、もっと下がっているはず。そしたら、続ける意味があるのか。もしくはゼロまで続けるなら未来永劫解除なんかできない。どこの段階で政治的に決めなきゃいけない、そのためには、信頼できる数値モデルが必要なのである。

多くの国民は政府のかじ取りに対しては、科学的に、実効再生産数が本当に信ぴょう性があるのか、限られたデータで一部の氷山の一角だけ見て決めている、と受け取っている。
そもそも、接触者数を8割減というのは、ドイツの実効再生産数2・5を当てはめたもの。今は違うはずである。この国の政府の示す「数字」は単なる記号であって、「数」の概念がともなっていない。つまり、国民にとっての実感がないのである。出口のないトンネルを走り続けろはあまりに無責任だと言える。


京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授による試算では、大阪府のRtが4月21日に1を下まわり、5月1日現在で0.6程度という計算結果は、府民の努力が報われている。

新型コロナウイルスに対する対策は微妙な手綱さばきが求めらる。緩めすぎると感染者の急増と医療崩壊を招きます。締めすぎると、休業自粛をお願いしている方々の生活が崩壊し、また抗体を持つ人の数がなかなか増えないため、第3波、第4波に対して脆弱になってくる。

一人から何人に感染が広がるかを示す実効再生産数(Rt)を1未満で維持することが目安になる。大阪府の一人から何人に感染が広がるかを示す実効再生産数(Rt)が4月21日に1を下まわり、5月1日現在で0.6程度という計算結果となり、この値が続くようであれば、経済活動等を少し緩和出来る可能性を期待できる。

世界の専門家がこぞって活用するのが、感染症疫学の数理モデルだ。
今後の感染の行方を合理的に判断するためには、その基本を押さえておく必要がある。新型コロナに対する有効なワクチンが実用化される時期ははっきりしないため、現在のような生活は、今後1~2年は続くと覚悟しておいたほうがよい。
基本的な数理モデルでは、3つの変数は「基本再生産数」「実効再生産数」「集団免疫率」だ。

基本再生産数とは、「ある感染者が、その感染症の免疫をまったくもたない人の集団に入ったとき、感染力を失うまでに平均で何人を直接感染させるか」を指す。
新型コロナでは、1人の感染者は平均で直接1.4~2.5人を感染させると、WHO(世界保健機関)は暫定的に見ている(基本再生産数1.4~2.5)。
注意すべきは、「基本再生産数」はわれわれが何も対策を取らなかった場合の数値であることだ。いってみれば、病原体の素の感染力を示す。
これに対して、手洗いやうがい、人々の接触削減といった対策が取られれば、1人の感染者が実際に直接感染させる人数が減るのは当然だ。こうした実際の再生産数のことを「実効再生産数」という。

実効再生産数で重要なのは、それが1を下回るかどうかだ。なぜなら、1人の感染者から実際に直接感染する人が1人未満となれば、それは新規感染者数が減ることを意味するからだ。言い換えれば、「新規感染者数が減少に転じる」というのは、「実効再生産数が1を下回ったとき」のことを指す。  

今後、第2波、第3波の到来は不可避であり、長期化は免れない。先述のように接触削減などの対策により、実効再生産数を基本再生産数(以下、新型コロナは2.5と想定)より引き下げることはできる。

実際、最近のヨーロッパやアメリカでは、ロックダウン(都市封鎖)の効果で新規感染者数が減少してきた。これは数理モデル上、実効再生産数が1未満になったことを示唆する。
長引く封鎖は経済や市民の生活・メンタルに大打撃を与えるため、欧米諸国の政府は、対策を緩和する方向を打ち出している。では、実際に対策を緩和するとどうなるか。人工的に低下させてきた実効再生産数は再び、基本再生産数の2.5に向けて上昇するのは確実である。

欧米に遅れる形で日本でも4月7日、東京など7都府県を対象に政府が緊急事態宣言を発令し、その後対象を全国に広げた。足下で新規感染者が着実に減少していくかはまだ予断を許さないが、仮にそうなったとしても、ゴールデンウィーク後に外出や休業の自粛要請をやめれば、再び感染拡大に戻ることは必至だ。
波状的に感染拡大が起こることは、過去のパンデミック(世界的流行)でもあった。1918年に流行が始まったスペインインフルエンザでは、ウイルスの変異による重症化もあり、第2波や第3波の被害のほうが大きかった。同じことは新型コロナでも起こりうると考えたほうがよいだろう。

対策によって「実効再生産数」を低下させれば、「集団免疫率」も下げられることを忘れるべきではない。結果、死者数も抑制できるのは言うまでもない。加えて重要なのは、「実効再生産数」が低くなればなるほど、新規感染者数の山は低く、カーブも後ろずれして緩やかになることだ。その分、時間当たりに発生する重症患者数を抑制することができ、医療崩壊を防ぐために極めて重要な手立てになる。海外の一部であったように医療崩壊が起きれば、新型コロナの致死率は跳ね上がってしまう。

以上のことを踏まえて現在、先進諸国の多くが採る戦略は、接触削減などの対策で「実効再生産数」を抑制して医療崩壊を防ぎながら、最終的にはワクチンの実用化により人工的に「集団免疫」を達成しようというものだ。もともと「集団免疫率」という数字は、人口の何割の人がワクチン接種を受ければ、「集団免疫」が成立するかを計算するために使われることが多い。重症化を防げる治療薬の実用化も重要な分岐点となるのは言うまでもない。   

新型コロナでの有効なワクチンは、資金や制度面での政府支援拡大が期待できるが、WHOはそれでも実用化には早くて12~18カ月かかるとしている。
となれば、われわれはワクチンや治療薬の開発に注力して希望を維持しつつ、長期化した際のシナリオに基づいた戦略を着々と実行すべきだろう。それは、政府のコロナ感染対策や経済運営にとどまらない。われわれの働き方やライフスタイルまでにかかわる問題だ。

新型コロナの下での生活や政策のベースとなり、より正確なデータを計測しておくべきものは、実効再生産数と集団免疫状況(既感染者数)だ。例えば、感染症疫学の専門家が最新のデータを基に、毎日あるいは毎週といった頻度で最新の「実効再生産数」を公表する。その推計値を見ながら、政府は経済や国民生活とのバランスを考えて接触削減などの対策を強化すべきか緩和すべきかを検討する必要がある。

また、実際の「集団免疫」の状況がわかれば、正確な重症化率や致死率を把握できるうえ、政府が対策によりコントロールする「実効再生産数」の下でいつ頃、集団免疫率に達するかといった見通しを国民に示すこともできる。

そのためにもPCR検査をもっと拡大させてデータ量を増やし、推計値の精度を高めるのは当然だ。また国内外で抗体検査実施が検討されているが、これは国民1人ひとりが「自分が陽性か否か」を確認して安心を得るためではなく、社会全体で実際の免疫保有率がどれくらいになっているのかを推計するため、と理解すべきだろう。

新型コロナは無症状や軽症の陽性者が多いため、実際の「集団免疫」の状況を把握するにはPCR検査以外でもデータ収集する必要がある。一部の専門家は、医療機関などが保有する過去数カ月分の血清の「抗体検査」を行うだけでも、おおよその免疫保有率がわかると指摘している。


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