見出し画像

「GhostWire:Tokyo」は男と男の熱い物語だった

「GhostWire:Tokyo」評価がかなり分かれているようだけど、自分には色々とぶっ刺さりまくりで、100点満点中100000000点の傑作だった。

ベセスダもタンゴもこれまで自分にはあまり響かないメーカーだったのだけれど、これは違う。今のところ、桃李ちゃんゲームオブザイヤーです。

キミも寺生まれのTさんになれる!

「どんなゲームなの?」と問われれば、「呪術廻戦っぽい感じ」って一言で説明できる。要はスタイリッシュ陰陽師アクションってやつです。

画像1
印を結んで穢れた神社を解呪したり


呪術的な異能でバケモノを退治したり

突如現れた「マレビト」と呼ばれるバケモノを退治しながら、渋谷の街を縦横無尽に掛けていくというのが、このゲームの内容だ。本当に縦横無尽で条件さえ満たせば、ワイヤーアクションでビルからビルへと忍者のように飛び回ることもできる。

ゲームは一人称視点だが、バトルロイヤル系FPSのようなシビアさは無い。強めのエイムアシストが備えられていたり、敵の当たり判定が気持ち大きめだったりと配慮がなされている。
俺もFPSはかなり苦手な方なのだけれど、戦闘時に余計なストレスを感じることはなかった。

都市伝説が巣食う渋谷の街を駆け抜けろ!

敵となるマレビトはスレンダーマンとかどこかで聞いたことのある都市伝説がモチーフとなっていて、敵ながらどこか馴染みのある連中ばかりだ。

終盤は普通にうろついてる中ボスの口裂け女。しつこい女だよ

中ボスが口裂け女と八尺様を合体させたやつだったり、てけてけもそこらをうろついている。
ゲーム中のTipsでこのマレビトがどんな存在か確認できるのだけれど、日本社会の負のようなものが形をなしたようなので、なんだか「お前らも大変だな」と多少同情できたり。

たまに遭遇する百鬼夜行。あの中に突っ込むとかなり厄介なことになる

さてそんな連中が跳梁跋扈する舞台は渋谷である。
すぐ傍に東京タワーがあったりと、一部はデフォルメされているけど、これが本当に現実の渋谷そのまんま。通勤通学で渋谷駅を利用してた身からすれば、そりゃげんなりするくらいに。

バスターミナルあたりの再現度はもう完璧

雨に煙る渋谷の美しい夜景とごみごみとした箇所の生臭さの対比も、とても現実感が強い。

ゲームの画面から現実の空気感のようなものが漂ってくるんですよ。人の営みとか生活感と、そこから人間が消え去って代わりにバケモノが闊歩しているというギャップがまた良い。

ゲームを通してホラー要素は薄口なものの、事件が起きた渋谷のそこかしこで見受けられる、「ついさっきまでそこに人がいて、日常生活を送っていた」という形跡が生々しく、そしておぞましい。

現代日本を舞台としたゲームは他にもたくさんあるけど、そこに都市伝説、陰陽師的呪術バトル、それとリアルな渋谷という要素が化学反応を起こして、不思議な魅力を出している。
そして、忘れちゃならないのが、肝心要のストーリーが「熱いバディもの」であることだ。

お地蔵さんに手を合わせるとパワーアップするのも、なんか不思議で面白い
鳥居がそこかしこにあるのも不思議
NPCはワンちゃんネコちゃんと地縛霊しかいない
怪異が現れたということで、ゲゲゲなやつも出てくる
世情を反映してか招き猫もマスクしている。病院の掲示板にも新型コロナと思しき注意喚起が……

リアルな渋谷のそこかしこに置かれている開発の遊び心みたいなものに、思わず笑ってしまったり。

雨粒を「雨」の字にするセンスよ
物語の途中で立ち寄ることになる「彼岸」いわゆる「あの世」

かと思えば、怪異を描く美術センスも素晴らしい。

暁人とKKの年の差バディ

現代日本で陰陽師バトルが良し、舞台となってる渋谷も良し、そしてキャラクターもまた良し。
何が良しかって、「バディもの」なんだよね。「タイバニ」や「MIU404」といった作品がヒットする中で、バディものが嫌いという人間はいるだろうか、いやいない(反語)

主人公の暁人は入院している妹の見舞いに行く途中、渋谷のスクランブル交差点で、一瞬にして人間が消失する謎の事件に巻き込まれてしまう。
その最中で、暁人は事件の首謀者を追っている最中に霊体と化してしまった、もう一人の主人公「KK」に取り憑かれてしまうことでふたりは出会うこととなった。
突然の出来事に戸惑う暁人、「体をよこせ!」と脅してくるKK、そんなふたりに構うことなく「マレビト」と呼ばれる怪異が襲いかかってくる。
2人はひとつの体に心がふたつの二心一体となって、迫りくる脅威を振り払いながら、事件の首謀者「般若」を追うことになる。

だがこのKK、当初は暁人の体を乗っ取ろうと目論んでいただけあって、最初の2人の間は険悪そのもの。「妹の無事を確かめたい」という暁人に対し、出会い頭に「指示に従え」だの「それが終わったら体はいただくからな」というKK。あんまりである。
最初は「あれやれ、これやれ」だの「ガキ」呼ばりするだのと言葉の節々や声音に棘があって仕方ない。体力回復のためお菓子を食べてたら「菓子食ってる場合かよ」と嫌味を言われたり、ゲームオーバーになってしまった時には「間抜け」と罵られる有様。
というのもKKは、最初はとにかく自分だけで何とかする気なのに、自分の肉体を失くしてしまったことでかなり余裕が無く焦っている。そんな時にどうにか取り憑いたのが何も知らない一般人だった。
 一方の取り憑かれた暁人もこんな怪異とは無縁の普通な青年で、事故で死にかけていたところ一命を取り留めたと思ったらKKなんて幽霊が取り憑いてきたというわけ分からん状態といった具合だ。
KKの年齢は明確にされていないが、おそらく最低でも暁人と一回りは離れてるオジサンで、マレビトのような怪異との戦闘や対処の経験も豊富。既にこの時点でお互いの人生経験も価値観も感性も何もかもが異なっており、挙句に初対面だから信頼なんて欠片ほどもない。
そんなわけで結構ギスギスするのだけれど、でも事態を対処するには協力するしか他はないというどうしようもない状況だ。
そのため物語の序盤はかなり険悪ムードで2人は渋谷の街を進むことになる。
でもね皆さん、最初は仲悪かった2人がどんどん親密になっていくやつ、好きでしょ?

過ちと後悔を抱えた暁人とKKたち

「GhostWire:Tokyo」の登場人物たちは皆、なにがしかの後悔を抱えている。それは如何ともし難い不幸や不運、離別であったり、家族との不和であったり、コミュニケーションの行き違いだったりと、悲劇ではあるが、どこにでもありふれたものだ。

最初はツンケンしていた暁人とKKも、共に戦っていく内に互いを信頼して、そのうちぽつりぽつりと自分の身の上話をするようになる。

2人に共通しているのは本当は優しい人間なんだけど、その優しさや思いやりを家族に押し付けていたという点だ。愛しているから愛されて当然だという無意識な傲慢さの小さな積み重ねが後悔へと変質してしまった。。

どこにでも、誰にでもある、生きていれば普遍的な悲哀と後悔が物語のテーマのひとつだ。

クドいお涙頂戴な展開ではなく、ともすればちょっとあっさりしているとも思えるエンディング、それだけに後を引くものを胸に落とした。

スタッフロールにに入り童謡「しゃぼん玉」が流れると、なんだか胸の奥がじんわりとするものが広がったように思える。

「GhostWire:Tokyo」、佳いゲームですよ。リアルな渋谷を舞台に陰陽師呪術バトルを繰り広げて、少年漫画的王道なバディものが展開される、不思議だけど真っ直ぐな面白さがあります。
せっかくの縦マルチ無しのPS5用ゲームなので、PS5持ってる人はプレイしてみて欲しい。(Steamもあるよ)

それと、さては開発は暁人を美少女だと思いこんでるな?
実際、暁人くんは見ていてもイラつかず応援したくなる素直ないいヤツです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?