コロナ禍の思い出「宅配業者さん」

コロナ禍に突入したとき、うちの長女がちょうど保育園に入るタイミングだったのをよく覚えている。保育園に子供を預けるという事自体も初めてだったが、さらにそこにコロナ禍という久方ぶりの世界規模の疫病が流行り、もう生活自体よくわからなくなっていた。

我が家は子どものものを通販したり、よく宅配業者さんに荷物をもってきてもらうことがコロナ禍より前から多くあった。ある程度の配達員さんは顔がわかり、世間話をするくらいには。

コロナ禍に入ったばかりの頃、誰かは知らないが、宅配業者がコロナウイルスを運ぶから汚い、アルコールを吹きかけられることもある、というようなニュースを見た。それと同時に、マスクも不足して、薬局にもどこにもなくなり、闇市みたいな値段の粗悪なマスクしか簡単に手に入らなくなった。我が家も致し方なく、不織布マスクを洗濯したりしたのを覚えている。

そんな当時、宅配業者もマスクを取り替えられずに困っているだろうから、差し入れをしたというようなニュースだったか、ツイートだったかを目にしたので、我が家がたまたま不織布マスクを手に入れたタイミングだったこと、宅配業者さんにお世話になっていること、色々考えて、よくお会いする気がする配達員さんにお裾分けすることにした。

いちばん顔見知りだったヤマト運輸の女性宅配員さんがきたとき声をかけてマスクを渡して「よかったら使ってください」と言ったら急に泣き顔になって、「マスクがなくてみんな洗濯して使ってて…色々言われて辛かったんです、ありがとうございます」と泣かれていた。まさか泣いてしまうとは思わずびっくりしたので、印象深い出来事としてたまに思い出す。最近会ってないけれど、お元気だろうか。

これは別にコロナ禍に限らず思うことだが、自分の思想の押しつけというか、相手の気持ちや境遇を想像せずに、自分の正義だとか善意を押し付けてくる人間がいちばん厄介だ。わかりやすいのは宗教の勧誘。お前の神様はお前が勝手に信じてれば良い。

あの頃、そういった思想の押し付けによって傷つけられ、健康を損なった人が多くいたことだと思う。わたしはできるだけ、想像力をもって暮らしていきたいなぁと思った出来事だった。

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