小さな船乗り

「宝島」1978年の10月に放映が開始されたアニメ。

二重人格のサスペンス物で有名な「ジキル博士とハイド氏」の作者でもある
イギリスのロバート・ルイス・スティーブンソン(スチーブンソン)の
同名冒険小説が原作である。

「家なき子」の後番組であり
監督(演出)は出崎統氏、キャラクターデザインと作画監督は杉野昭夫氏が担当する。


『あしたのジョー』、『エースをねらえ!』、『ベルサイユのばら』
などでもおなじみのコンビである。


一部の古めのアニメファンなら、

「バシィーン」
「カァーン」

といった効果音とともに、
画面が透過光を使った止め絵になる独特の演出が脳裏に浮かぶことだろう。

本作でも随所に止め絵が見られる。

音楽を担当されているのは、羽田健太郎氏、主題歌を町田よしと氏


小さな船乗り  宝島 エンディング



基本的には、このアニメは、
スティーブンソンの原作をなぞるようにアニメ化されているのだが、
全26話というゆったりしたスパンもあり、
主人公ジム・ホーキンズの日常、
母カレンとの酒場兼宿屋ベンボー亭の経営の場面。

登場人物がじっくりと描かれる。

そんな中、平凡な日常を破るように現れるのが、
ベンボー亭に客としてやってきた訳ありげなビリー・ボーンズ

一本足の男の影におびえ、不安をかき消すようにラム酒をあおる。

彼の口ずさむ歌がまた良い。

亡者の箱まで
にじり登った15人
いっぱいやろうぜヨーソロー
他の奴らは、酒と悪魔に飲まれたぜ
もひとつやろうぜ、ヨーソロー

"ヨーソロー"の意味がよく分からないが
歌詞も単純だし、口ずさんでいるうちに、
自分も船乗りの一員にでもなったかのような気がしてくる。

めったに飲むことのないラム酒が無性に飲みたくなるのだ・・・。


そんなビリーは、かつての海賊の仲間から命を狙われ
なんとか、ピンチを切り抜けるものの
酒の飲みすぎにより、命を落とすことになる。

ジムはビリーの持っていた宝島までの地図を託され、
ヒスパニオラ号で宝島に向うことになる。

そこで、コックとして雇われたのが、一本足の男、ジョン・シルバー!

父親の居ないジムにとって、父親のような存在感を見せるシルバー。

シルバーも、ジムを息子のようにかわいがるし、
人身売買の商人からも身を挺して守る。


まったく、原作を知らないでアニメを見たため、
この作品が物語の内容だと思っていた。

このアニメ版は、
ジムとシルバーの関係を大きくアレンジしたものだということを
最近になって知った。

序盤の船出から、旅を終えて帰るまで、男しか登場しない。

シルバーは、宝島に到着する時点で、真の正体である、
海賊だということを明かすこととなり、
ジムと対立することになる。


父のように慕っていたシルバーの裏切りに翻弄されながらも、
それでも、宝探しに取り組む。


シルバーも、目的のためには非情になるのだ。

放映当時は、自分は、9歳なので間違いなく

「シルバーめ!なんてやつだ」

ジムのほうの気持ちだった。

しかし、もう40代をすぎると、
シルバーの気持ちが理解できるようになってしまう。

"目的のためには手段を選ばない"


ひとつの道を進まないとならないときに、
仲間、仕事を捨てないと前に(もしくは後ろに?)、
進めないという選択の場にも何度か遭った。


己の信念を貫くシルバーって、とても純粋なのだ。

敵と味方になっても、おたがいを気遣うジムとシルバー

このように、このアニメは、
男同士の信頼、情景、尊敬といった心模様をうまく描いている。

ジムの声を鉄腕アトムなどの清水マリ氏が充てられ
まっすぐでよどみのない少年を演じ、
シルバーの声は若山弦蔵氏が務めていて、渋いセリフを連発する。

「昔のことを思い出しちゃラム酒の味がまずくなるからな」

「夕日は裏切りの名人だ。あっという間に人の心を夜の闇に突き落としちまう。
大人になってからやっと分かった。それから夕日が嫌いになった。
わかっていてもよ、それでも野郎(夕日)は美しい。
だから負けねえようにさ、俺の勇気を試しているのさ」 


また、この「宝島」があったからこそ、
『海賊戦隊ゴーカイジャー』、
『ONEPEACE(ワンピース)』

ついでに

『機界戦隊ゼンカイジャー』

に登場するゾックス・ツーカイジャー

という、海賊をテーマとした
作品やキャラクターも後に続いたのであろう。


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