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舶来

いろいろとレッテルに寄りかかり、かつ、騙され続ける。
開高健のエッセイで読んだが記憶が定かでない話。昔、戦争直後の話だそうだが、ウィスキーというものがどういう酒なのか、ほとんどの日本人が知らなかった頃、どこかの焼酎屋が、焼酎にカラメルか何かを入れて琥珀色にし、なんか適当に匂いを混ぜて、派手な色遣いで横文字を並べて隅っこに「バッキンガム宮殿で瓶詰めされました」とかなんとかローマ字で印刷されたレッテルを貼りつけて、これはよほどのバカでない限り嘘だと気付くシロモノであるにもかかわらず、面白半分で買うやつがいて、きっと爆弾焼酎と同様に全頭、視界、四肢に痺れをきたし2・3日、視野狭窄、ヨダレまみれで悶絶する羽目になり、二度と飲むものか、と誓うのである。
当然こんな偽ウィスキーだから、この手の品物は長続きするわけはないが、次から次へ姿を変えながら現われては消え、消えでは現れる。
横文字とか、舶来とか、そういうレッテルに繰り返しだまされ続ける。だからといって、クレームを付けられたり、訴えられたりするようなことはなかったという。きっと訴えるという知識・知恵も無かったのだろうと思うが、なんだか昔の日本人の洒落っ気というか、逞しさというか、大らかさというか、ちょっとそんな時代を私も覗いてみたいと、無責任にも思ったりする今日この頃。

それにしても一昔前までの日本人は舶来、横文字には盲目的だった。
ま、今でも平べったい顔して外人になりたがっている若者がいるから、そういう意味ではまだ舶来に盲目的な部分もあるのか。

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