見出し画像

フリー台本:いいから早く開けてくれ(トイレの場合)【無料】


ご利用にあたって

  • 演劇、朗読、配信、練習用などでご自由にお使いください。ただし無断での転載や譲渡はお辞めください  (団体での利用のため、代表者が関係者に配布するなどの場合は可能です) 。

  • 内輪でのご利用 (団体内での練習用、声優事務所に提出するオーディション用などの非公開でのご利用) の場合は、報告は任意で構いません。脚色もご自由に行ってください。

  • 何らかの形で公開される場合のご利用はヒートンの著作である事を必ず明記してください。脚色はご自由に行っていただいて構いませんが、脚色がされている点についても明記してください。ご報告は任意ですがして頂けると喜びます。なお著作の明記が難しい場合はご一報ください。

  • If you use this script in public, please make sure to mention that it is the work of "Heaton". You are free to adapt the script as you wish. However, please also mention that you have adapted the script.

  • 如果这个剧本被公开使用,必须清楚地标明是 "Heaton "制作的。 你可以按照自己的意愿改编这个剧本。 但是,请同时说明你改编了这个剧本。

  • 問い合わせはTwitter (@onigiri1104tao) までお願いします。


PDF形式でのダウンロード

見本:横書き

見本:縦書き


登場人物

 ・強盗   (脚本表記:強盗 )
 ・空手家  (脚本表記:空手 )
 ・女性   (脚本表記:女性 )
 ・大工   (脚本表記:大工 )
 ・サンタ  (脚本表記:サンタ)
 ・幽霊   (脚本表記:幽霊 )


本文

※下ネタ注意。特に食事中は読まないこと推奨

※トイレの個室の前に気弱そうな男がいる。男は尻を抑えながら、苦しそうに個室前をウロウロしている。

強盗 「コンコン」

空手 「入ってまーす」

強盗 「コンコン」

空手 「入ってまーす」

強盗 「コンコン」

空手 「だから入ってるって」

強盗 「ねぇ、いつまでかかるんですか?」

空手 「いつまででしょうねぇ…?」

強盗 「僕、もう漏れそうで漏れそうで仕方ないんですけど…」

※お腹がゴロゴロする (SE用意できるならSEで)

強盗 「はう……おおおおう」

空手 「オナラすると少し楽になりますよー?」

強盗 「していいですか?」

空手 「どうぞー」

強盗 「プゥ」

空手 「いーい音ですねぇ……実にオナラっぽい音だ」

強盗 「本当ですか? ありがとうございます。じゃなくて!! ねえ、早く出てくださいよー!!」

空手 「無理に決まってるでしょー」

強盗 「もうかれこれ1時間ですよ?」

空手 「頑張りますねぇ」

強盗 「頑張りますねぇじゃなくて……」

空手 「貴方のお尻、ナイス我慢」

強盗 「いい加減にしてくださいよー!!」

空手 「そう言われましても、先に入ったのは僕ですからねぇ」

強盗 「ううう……じゃあ100万」

空手 「はい?」

強盗 「トイレを譲ってくれたら、100万円あげます。だから出てくださいよ」

空手 「えー……ウンコのために100万円、ふつう払います?」

強盗 「今の僕はお金持ちなので、100万くらい痛くもかゆくもないんですよ」

空手 「うわー。自慢ですか?」

強盗 「自慢じゃないですよ」

※お腹がゴロゴロ

強盗 「うぐ…とにかく100万…なんだったら300万でもいいですから!!」

空手 「そんなこと言って、いざウンコしたらやっぱり払わないとか言うんじゃないですかー?」

強盗 「だ、だったら、契約書。契約書を書きますから」

空手 「契約書?」

強盗 「トイレを利用したら必ず、僕は貴方様に300万差し上げます。はい、ドアの下の隙間から紙を送るので確認してください」

空手 「お、来た来た。ふむ。ふむふむ。確かに書いてありますねぇ」

女性 「でもそれ、判子が押してないから無効よ?」

空手 「あ、本当だ」

強盗 「誰?!」

空手 「誰って当然、一緒にトイレに入っている人ですよー」

強盗 「ここ男子トイレですよ?! なんで女性がいるんですか?」

女性 「いけないの?」

強盗 「決まっているでしょ!?」

空手 「そんな事よりも判子は?」

強盗 「いやそんな事って……」

女性 「ごちゃごちゃ言ってないで、あるの? ないの?」

強盗 「……ないです」

大工 「じゃあ交渉決裂だな」

空手 「残念ですがトイレは諦めて、外でウンコしてくださーい」

強盗 「待った?! また誰か増えた?!」

大工 「ん? ああ、俺っちはこのトイレを作った、大工だ」

強盗 「大工さんがそんなところで何をしているんですか!?」

大工 「俺っちが作ったトイレが、果たして皆さんに喜んでもらえているか気になってなぁ。こうして実際にトイレに入って確認してんだよ」

空手 「お陰様で、とても快適なウンコが出来て助かります。特にこの、トイレットペーパーの傍にいつでもチョコレートが準備してあるあたり」

強盗 「え? トイレにチョコレート?!」

女性 「あーわかる。便秘の時とかこれ齧りながら、ゆっくり出来るのよねぇ。あと麦茶がタダで飲めるのも嬉しいわよねぇ」

強盗 「む、麦茶?」

空手 「ああ、ここのトイレ、流すと蛇口からお茶が出て来る様になってるんだよ」

強盗 「いやいやいや!? 嬉しくないでしょそれ?! と言うか嫌ですよね普通!!」

女性 「なんで?」

強盗 「なんでって……そりゃ、その……だってトイレですよ?」

女性 「彼の言いたい事わかる?」

空手 「さぁ?」

強盗 「ええー……」

大工 「確かに……俺っちは皆さんが夏場のクソ熱い時に、クソを出そうとして喉が渇かない様、とっても黄色い麦茶が出る仕組みを作った。しかーし!! 勘違いするなよ? チョコレートは俺っちとは一切、関係ない!!」

空手 「えええええ?!」

サンタ「あ、チョコレートはわしじゃよ」

大工 「なんだ、あんただったのかよ」

女性 「早く言ってくれればいいのに」

サンタ「いやー褒められてしまうと、恥ずかしくてついついのぉ」

一同 「はっはっはっは!!」

強盗 「はっはっは!! じゃないですよ!! 誰ですか貴方?! と言うか何人いるんですかその狭い個室に!!」

※お腹がゴロゴロ

強盗 「はう…」

サンタ「もうそろそろ、ケツからウンコがこんにちはしそうじゃのぉ」

空手 「『やぁ僕ウンコ (裏声) 』…なんちゃって」

大工 「なーに。漏らす時は漏らす。人間なんてそんなもんよ」

女性 「人生に似てますね」

強盗 「あああ、もう。なんでですか?! なんで一か所のトイレに大勢で入ってるんですか?!」

女性 「なんでって言われてもねぇ」

強盗 「と言うか貴方達、明らかにトイレ使ってないですよねぇ?! さっきから踏ん張る声とか聞こえないし」

空手 「いや、さっきから踏ん張ってるよ。うんこーうんこー (踏ん張る感じで言う)  ……ほら」

強盗 「バレバレな嘘をつかないでください!!」

空手 「ちぇ…」

強盗 「もういい加減にトイレ貸してくださいよ」

空手 「いやですよー」

強盗 「もおおおお、なんで!!」

サンタ「何でってそりゃあのぉ…」

女性 「ねぇ…?」

大工 「だってお前さん、強盗だろ?」

強盗 「え? ああ、はい!!」

女性 「さっきこの銀行のお金を…」

強盗 「ぜーんぶ頂きました」

サンタ「お主、手に握っているのは何じゃね?」

強盗 「ピストルです!!」

空手 「この銀行で働いている人達は?」

強盗 「全員、こいつでやっつけました!! バキュンバキュン!! 僕、的に当てるのだけは誰にも負けないくらい得意なんですよ!! フッ!!」
大工 「なんで俺っち達、皆でトイレに仲良く入ってると思う?」

強盗 「…さぁ?」

大工 「お前さんが怖いからに決まってんだろ!!」

強盗 「ええええ?! そんな?! こ、怖くないですよ!! 僕はただ、トイレで踏ん張りたいだけの普通の強盗です!!」

サンタ「じゃあわしらがトイレを譲ったら、ここから逃がしてくれるかのぉ?」

強盗 「……………イイヨ?」

女性 「嘘!! 絶対に今の嘘!! 何か声が変だった!!」

強盗 「失礼な!! 僕、これでも強盗仲間の間では、嘘が大っ嫌いで通ってるんですから!!」

空手 「本当ですか? 本当に貴方、嘘が嫌いなんですかー?」

強盗 「嘘をついた奴は片っ端から狙い撃ち!! 嘘つきハンター田中とは僕の事です」

空手 「と言う事は貴方、今まで生きて来て嘘ついた事はない、と?」

強盗 「え? そりゃあまぁ人間ですから嘘くらい……ナイデスヨ」

空手 「やっぱりこの人、嘘つきです!!」

強盗 「な?! 何言っているんですか?! 失礼な!!」

空手 「だってこれだけ生きていて、一度も嘘ついた事ない人なんて有り得ないですよ!! その時点で嘘でしょう!!」

強盗 「な!? いますよ!! 嘘つきは泥棒の始まりって言うじゃないですか!! だから僕は今まで泥棒なんて最低な事だけはしまいと、嘘だけはつかないように…」

サンタ「お主、今の職業は?」

強盗 「銀行強盗です!!」

サンタ「泥棒じゃないか」

強盗 「…あ」

空手 「やっぱり嘘つきです!!」

強盗 「ばれちゃいましたかー…」

女性 「ウンコのためだけに、私達皆を騙そうとするなんて、何て酷い人?!」

強盗 「だって嘘ついた事があるって言ったら皆さん、『なら、やっぱり私達を逃がすのは嘘なのね』とか言うじゃないですか?」

大工 「なに言ってんだ? 当たり前だろ?」

強盗 「ほらー!! そしたら僕、トイレに入れないし…」

※お腹がゴロゴロ

強盗 「あ、うぐ…漏れる…漏れ…」

空手 「もう洩らせばいいじゃないですかー?」

強盗 「いやですよ!! これでもし、僕が警察に捕まったら格好悪いじゃないですか!!」

大工 「でもよ? ウンコ漏らしながら捕まった強盗なんて、他にいねーぞ? 誰にも真似できねー事を成し遂げたって意味じゃあお前さん、レジェンドだぜ?」

強盗 「嫌ですよ!! そんな伝説!!」

空手 「伝説って言えば確か昨年、下半身スッポンポンで人の家に鍵開けて入って、捕まった人いましたよねぇ」

女性 「あ、知ってる。それあれでしょ? 確か……『フルティンの何がいけないんじゃー!! 俺の象さんを見ろー!! お前らー!!』とか叫んで、ニュースになってたわよね?」

強盗 「ああ、ありましたね。クリスマスより1か月早くやって来た……」

大工 「確か、『慌てん坊のフルティンサンタクロース』だったか?」

空手 「あのサンタさんみたいに…いえ、インパクトだけならそれ以上です。どうですか?『怪盗、ウンコ垂れ流し小僧』とか」

強盗 「嫌ですよ!! そんなの!!」

女性 「『俺は他人のウンコを盗んでは、貧しい人たちに配っている義賊だぜ』!!」

強盗 「他人のウンコなんて誰が喜ぶんですか!!」

大工 「意外といるかもしれないぜ? ウンコ好きな奴」

強盗 「いませんよ!! と言うか、もう何でもいいから兎に角、開けてくださいよ」

空手 「いやですよー。開けたら僕達、隠れる場所がなくなっちゃいますからー」

大工 「いや? あるぞ?」

空手 「はい? ある?」

大工 「ああ、だから隠れる部屋ならあるぞ。例えばそこの壁……」

※開ける

大工 「開けると、テレビがある」

空手 「おおー!!」

大工 「更にテレビ部屋の奥には寝室と風呂もある」

強盗 「ここトイレですよね?!」

大工 「まぁ、なんだ……皆に快適にウンコして貰おうと思ったらよ……どうしても必要になっちゃうよな」

強盗 「ならないよ!!」

サンタ「もうわしら、ここに住めるんじゃないかのぉ?」

女性 「テレビ部屋、お風呂、寝室…住むにはあと、トイレが欲しいところよね」

強盗 「いや、そもそもここがトイレ……て、そこに色々部屋があるなら、そっちに移って鍵でもかけていてくださいよ。そしたら僕、そこでウンコして出て行きますから」

女性 「まぁ!! レディがいる部屋の目の前でウンコだなんて……」

強盗 「男子トイレに自ら入っておいてなに言ってるんですか!!」

サンタ「そっち……と言うが、風呂と寝室とテレビ部屋のどれに入ればよいのかのぉ?」

強盗 「どれでもいいですよ!! 好きにしてください!!」

空手 「あーでも待ってください強盗さーん。もしこの家に既に住んでいる方がいたら、流石にこの人数で押しかけるのは迷惑になります。まずはその辺りの確認をしないと……」

強盗 「いませんよ!! と言うかここ家じゃないです!! トイレです!!」

※壁が開き、新しく男性が現れる

幽霊 「すいません。住んでます」

強盗 「何でですかああああ!! ここトイレでしょおおおおおおおお!!」

幽霊 「申し訳ないのですが、僕の部屋に入ってやり過ごすのは勘弁してください」

大工 「そうか…そうか…ついに、俺っちの家に…住んでくれる人が」

強盗 「だからトイレ!!」

女性 「あ、それじゃあ私はこれで…」

一同 「…はい?」

女性 「いえ私、これでも一応、レディなので……仮にも男子トイレで、男の方々と一緒にいるのはどうかなぁと思いまして……」

空手 「まぁ確かに。良い事ではないですよねー?」

女性 「と言う事で、失礼します」

※壁を閉める

サンタ「あのお嬢ちゃん、鍵までかけおったぞ」

幽霊 「そこ僕の部屋です。せめて僕を入れてください」

大工 「残念だが、あの壁は防音性だ。聞こえちゃいねーよ」

空手 「なんで防音性にしちゃったかなー」

大工 「だって嫌だろ? 人がウンコする音聞きながら飯食ったり寝たりすんの」

サンタ「確かにのぉ」

空手 「あれ? ちょっと思ったんですけど……彼女が入った部屋って、お風呂とかテレビとか色々とあるんですよね?」

大工 「ああ、そうだ」

空手 「電話は?」

大工 「あるぜ? でもよ、それがどうかしたのか?」

空手 「と言う事は、どうにかして中の彼女にお願いすれば、電話で……」

サンタ「電話で外の人に連絡!! そして強盗さんの為におまるを持って来てもらうんじゃな!!」

空手 「違います!! 助けを呼ぶんですよ!!」

強盗 「ちょ!! ちょっと!! 辞めてください!! おまるなんてダサいじゃないですか!! 僕は洋式便器でしかウンコはしないと小さい時から心に誓っ……」

空手 「ちょっと!! 今、大事な話をしているところなんです!! 『怪盗ウンコ垂れ流し』さんは黙っていてください!!」

強盗 「まだ垂れ流してないです!!」

大工 「しかしだな。どうやってお嬢ちゃんにお願いすんだ? さっきも言ったけど、この壁は防音性だぞ?」

空手 「そうなんですよねぇ……」

幽霊 「……はい」

大工 「お、どした? 住んでる人」

幽霊 「通り抜け、できます」

大工 「通り抜け?」

幽霊 「はい。この壁を通り抜けて、向こうの部屋に行けます」

空手 「またまたーそんな冗談言ったりしてー」

幽霊 「本当です。だって僕、このトイレに住んでる幽霊ですから」

一同 「………えええ!?」

大工 「じょ、冗談言っちゃいけねーよ、お前さん?!」

空手 「貴方、足があるじゃないですか、やだなー!?」

幽霊 「足はありますけど…でも幽霊なんです。ほら。例えば……」

強盗 「うぎゃああああああ?! 人間の頭が壁から生えて来たああああああああ?!」

幽霊 「こんな感じで壁や扉を通り抜けられます」

強盗 「そそそそ、それ以上近づいたら!! うううう、撃ちますよ?!」

幽霊 「撃ってもいいですけど、弾の無駄ですよ」

大工 「ま、まぁ…なんだ。その…ビックリはしたが……お前さんが俺のトイレに初めて住んでくれた人間には違いない」

幽霊 「幽霊です」

大工 「だから俺っちは、お前さんが壁をすり抜けようが、何をしようが、差別することはない。安心しろ」

空手 「それよりも、さっそく貴方、ちょっとそこの扉を通り抜けて……」

※壁が開き女性が再び顔を出す

女性 「一つ言わせてほしい」

一同 「……ん?」

女性 「私は、お化けが大の苦手です!! だから!!」

一同 「だから?」

女性 「少しでもその幽霊を部屋の中に入れてみなさい!! この、貴方達が欲しがっている電話を叩き壊すわ!!」

サンタ「な?! 卑怯じゃぞ!! 人質じゃなんて?! 電話が可哀想じゃと思わんのか?!」

女性 「ぜんっぜん!!」

サンタ「全く、最近の若いもんは…親の顔が観てみたいわい」

女性 「とにかく!! 絶対!! 幽霊をこの部屋に入れない事!! 良いわね!!」 

※壁を閉める

一同 「…」

空手 「防音じゃないじゃないですかー!!」

大工 「おかしいなぁ……」

強盗 「はぁ……安心したぁ……」

サンタ「それで、どうするんじゃ?」

幽霊 「とりあえず、話し合いをしてみたいと思います」

空手 「と言いますか、僕達の会話が聞こえてるなら、普通に電話を持って来てもらえばいいだけじゃ……」

女性 「絶対に嫌!! 誰が幽霊のいる部屋に出て行くもんですか!!」

幽霊 「あのー……僕、ただの幽霊です。そんなに怖くないですよ? ほら、足もありますし……電話をちょっと持っていくだけなので、お願いですから部屋に入らせてくださ…」

女性 「足がある幽霊とかなにそれ怖い!! 無理!!」

幽霊 「……ダメでした」

空手 「よし。次は私が行きますー……コンコン」

女性 「何?」

空手 「特技は空手8段。その扉、拳で叩き壊して欲しくなかったら、大人しくそこから……」

女性 「私は剣道8段、柔道7段……それから将棋が2段よ」

空手 「……ダメです。彼女の方が強いです」

大工 「ナイスファイト。よくやった」

サンタ「合計17段が相手では仕方ないわい。それより次は誰が行くかのぉ?」

大工 「俺っちは無理だ。何も思いつかん」

サンタ「わしもじゃ……うーん……どうしたもんかのぉ」

強盗 「あ、はい。僕、思いつきました」

大工 「お?! 本当か、強盗の旦那」

強盗 「はい。上手く行くかわかりませんけど……」

空手 「物は試しです。いいですよーやってみてくださいー」

幽霊 「いや、やってみてくださいって……」

空手 「ガチャ、ギイー……さぁさぁ、こちらへ」

強盗 「どうもどうもすいません」

幽霊 「あ、あの……ちょっと……」

サンタ「し!! 強盗さんの腕の見せどころじゃ。静かにしておれ」

幽霊 「でも……」

強盗 「コンコン」

女性 「今度は何よ?!」

強盗 「お前……ピストル持った強盗の俺と、ただ死んでるだけの幽霊……どっちが怖い? 俺にピストルで襲われたくなかったら、大人しく……」

女性 「幽霊」

強盗 「僕はダメな強盗です……」

サンタ「頑張った。お前さんはよーく頑張った。じゃから気にするでない」

空手 「くそー。強すぎますね、幽霊」

大工 「それじゃ、取りあえず強盗さんには、また扉の外に戻ってもらおうか」

強盗 「あ、はい……」

幽霊 「あの、ですから……」

強盗 「失礼しました。ギイー、ガチャ……うおおおおおおお、動いたらお腹がまたゴロゴロ言い出したあああああああ」

幽霊 「……まぁいいや」

大工 「しかし、これで本格的に万策はつきたな」

空手 「どうしましょうねぇ」

サンタ「……仕方がないのぉ」

空手 「ん? どうしました? お爺さん?」

サンタ「こうなったら、そこの強盗さんの方を説得するしかなかろう」

空手 「説得、ですか?」

サンタ「うむ。自首する様にな。そしたらわしらは出て行けるし、強盗さんも警察でトイレに入れると言うものよ」

強盗 「嫌だ!! 誰が自首するもんですか!!」

大工 「大丈夫か? 本人、あんな調子だぜ?」

サンタ「亀の甲より年の劫。わしに任せなされ……なぁ、お若いの」

強盗 「言っておきますけどね。僕は絶対に自首なんてしませんよ」

サンタ「なに、わしはお前さんに1つだけ、人生の教訓を教えてやりたいだけなのじゃよ」

強盗 「教訓?」

サンタ「そうじゃ、いいか? よく聞くんじゃ……恥ずかしい格好で警察に捕まるのは、とっっっても気持ちがよいぞ」

強盗 「……はい?」

サンタ「例えば……『フルティン』とかの」

一同 「…」

空手 「この人!! 『慌てん坊のフルティンサンタクロース』だ!!」

サンタ「じゃからお主も、ウンコを漏らして恥ずかしい状態で捕まれば、きっと……きっっっっっと!!最高のエクスタシーが身体中を……あ、なんじゃったら今、実演してみせてや……」

大工 「空手!! 爺を止めろ!!」

空手 「あちょー!!」

サンタ「何じゃ?! 辞めい!? わしは今、トイレと言う他人が近くにいると同時に、天井と足元に隙間があるというのに、プライベートが保証されている矛盾に満ちた空間で、自らの恥部をさらけ出す開放感に酔いしれる魅力を……」
 
※サンタのこのセリフはアニメ『スクライド』のストレイト・クーガーからの引用です。適時修正してください。

空手 「いいからズボンのベルトから手を離しなさい!!」

幽霊 「あ、ご視聴の皆さん。このくだりは脚本にちゃんとあるので……役者の人間性は正常です。ご安心ください」

サンタ「うるさい!! わしはフルティンの良さを世の中に広めるためなら何でもやる!! そうじゃ!! お主!! お主ならわかってくれるじゃろう? 同じ、警察に捕まる運命の身として!!」

強盗 「わかる訳ないでしょう!!」

サンタ「直接わしのビッグマンモスをお主に見せてやる!! そうすればお主もきっとすぐにわかる筈じゃ!!」

大工 「辞めろ爺!! なにトイレの扉を開けようとしているんだ?!」

空手 「強盗が中に入って来るだろ!!」

幽霊 「さっき一度、入って来ましたけどね?」

サンタ「それがなんじゃ!! 例えピストルで撃たれようとも、若いもんにわしの思いが伝わるなら、構う事はないわい!!」

強盗 「伝わらないから来ないでください!! と言うか見たくないです!! ちょっとトイレの中の人達、絶対にその人止めてください!!」

サンタ「離せ!! 離すんじゃー!!」

※壁が開き女性が出てくる。

女性 「本当に……?」

一同 「え? で、出て来た?!」

女性 「その人が本当に、『慌てん坊のフルティンサンタクロース』なの?」

サンタ「如何にも。わしが本物の慌てん坊のフルティンサンタじゃよ?」

幽霊 「本物のって、別に偽物はいないですよね?」

女性 「やっと会えたわ……お父さん!!」

強盗 「おと……?」

一同 「えええええええええええええええ?!」

サンタ「な?! そ、それじゃあお主、フル子か?! フル子なのか?!」

女性 「そうよ。私、フル子よ」

空手 「フル子って名前はどうなんでしょうか」

強盗 「まぁ、ティンの方じゃないだけいいんじゃないですかね?」

サンタ「大きくなったのぉ、フル子や。いつ以来かのぉ……」

女性 「お父さんが捕まったあの日以来……20年よ」

サンタ「そうか……20年か。久しぶりだのぉ……」

女性 「ええ。あれからずっと私、お父さんに会いたくて、会いたくて……でもお父さんの行方は全く掴めなくて……」

サンタ「すまんかったなぁ……フル子にはさみしい思いをさせて……」

女性 「やっと……会えた。これで、お前みたいなクソ野郎に復讐が出来る!!」

サンタ「ん?」

女性 「おらああああ!! このクソ親父いいいいいいいいいいい!!」

サンタ「おおおおわお!? なななな、なんじゃ?! フル子!!」

大工 「なんだ?! どうした? 感動の親子の再会じゃないのか?」

女性 「感動? なにが感動よ!! こいつ、フルティンで捕まったのよ!! そのあと、私がいかに苦労したと思ってるの?!」

空手 「苦労と、言いますとー?」

女性 「例えば捕まった直後、学校の友達みんなから……」

幽霊 「やーい、フルティンの娘」

女性 「とか!!」

幽霊 「お前の父ちゃん、変態!! お前はエレファーント!! パオーン!!」

女性 「とか!!」

幽霊 「申し訳ありませんが、下半身スッポンポンななお嬢さんと、うちの〇〇君は吊り合いません。結婚のお話は無かったことに」

※〇〇はお好きな名前にしてください。

女性 「とか!! こいつのせいで私の人生めちゃくちゃなのよ!!」

サンタ「なんじゃフル子、お主もフルティンの良さに目覚め……」

女性 「ああ? んな訳ねーだろ!!」

サンタ「そうか……目覚めておらんのか……」

女性 「あの日、私は誓ったの!! いつかお父さんを見つけ出して、そして……この!! 私が作った爆弾で、復讐してやるって!!」

大工 「まぁ、なんだ。仕方ねーんじゃないかぁ、爆弾で復讐されても」

空手 「フルティンの娘はきついですからねぇ……そりゃ爆弾の一つや二つ、作って怒る気持ちもわかりますよねー」

強盗 「そうですねぇ……ん?」

一同 「爆弾?!」

女性 「そうよ!! これが爆弾の起爆装置よ!! よく見なさい!!」

幽霊 「あー、あれはドイツ製の。化学反応を利用した……多分、爆発まであと20分くらいですね」

大工 「何だ? 詳しいな?幽霊さん」

幽霊 「昔、そう言う仕事をしていたので……」

強盗 「ちょっと、なに呑気に言ってるんですか?!」

女性 「助かりたかったらそのクソ親父を置いて、さっさとどこかに消えなさい!!」

サンタ「に、逃げるんじゃ皆!!」

空手 「いやいやいや!! 貴方は残ってください!!」

サンタ「嫌じゃ!! わし死にとうない!!」

女性 「クソ親父を寄越せ!!」

サンタ「た、助けてくれー!! 誰かー!!」

※なんかしばらく、大工以外はギャアギャア騒ぐ。幽霊は自分の家が爆破されるかもしれないことについて騒ぐ。

大工 「うるせぇええええええええええええええええええええええええええ!!」

女性 「な、何よ? 邪魔しないでくれる?!」

大工 「お前、ここを何処だと思ってんだ?」

女性 「何処って……トイレでしょ?」

大工 「そうだ。ここはトイレだ。トイレは……何をするところだ?」

女性 「何をって……」

大工 「トイレはウンコをするところだ。しっこでも良いけどな。だが女、お前がやってる事はなんだ? 爆弾だぁ? ふざけんな!! 俺っちは、人殺しをする場所としてトイレを作ったんじゃねぇ!! 人がウンコする為にトイレを作ったんだよ!!」

女性 「そ、それが何よ!?」

大工 「お前さんよぉ……そこのクソみたいな親父を爆弾でやっつけて、失われた20年が帰って来るのかよ? 帰って来ない……そうだろ?」

女性 「…」

大工 「残るのはただ、フルティンの娘が、フルティンをやっつけた…それだけだ」

女性 「でも、私は……」

大工 「この音を聞いてみろ」

※大工、トイレを流す

大工 「いい音だろう? どうだ? お前さん、この音を聞いてるとよ。こう……何てーか悪い心がウンコと一緒に流される……そんな気分にならねーか?」

女性 「ああ……私の……父への憎しみが流されていく」

サンタ「フル子……」

女性 「お父さん」

サンタ「悪かったのぉ……フル子」

女性 「ううん。いいの……皆さん、大変失礼しました。爆弾の起爆装置ですが、トイレに流して捨てます」

サンタ「すまんが……わしらはこれから二人っきりで、再会を喜び合いたいのじゃが、よいかのぉ?」

幽霊 「どうぞ。僕の寝室……使ってください」

サンタ「さぁ、行くぞ。フル子…今から親子水入らずじゃ」

女性 「やぁね、父さん。水入らずじゃ、トイレは流せないわよ」

サンタ「おっと、そうじゃったな」

二人 「はっはっはっは!!」

※壁が閉じる。女性とサンタはここで退場する。

空手 「いいですね。憎み合う親子の絆が再び蘇る。そんなトイレを作れるなんて」

大工 「俺っちじゃないさ。トイレ自体が、皆の心を洗い流す…そんな力を持ってるんだ」

幽霊 「素晴らしいですね。トイレと言う空間は」

強盗 「あのー」

大工 「おう、どうした? 強盗さん? もしや強盗さんも心が洗われちまったか?」

強盗 「今、フル子さんは起爆装置を水に流しましたよね?」

空手 「え? ああ、そうでしたねー」

強盗 「肝心の爆弾そのものは、まだそのままなのでは?」

一同 「……あ」

空手 「フル子さん!! サンタのお爺さん!! ちょっとここ開けてください!! ……ダメだ。全然、反応がないです」

幽霊 「窓から助けを呼んでみては?」

強盗 「ちょ?! ま、待ってください!!」

空手 「ガラガラガラ!! みなさあああああああああああああああああん!! たすけてくださあああああああああああああい!! ……妙ですね? 誰も僕の大声に見向きもしない」

大工 「そりゃあ、当たり前よ」

空手 「当たり前? 何故?」

大工 「だってお前さん、さっき言っただろ? このトイレは防音だって」

強盗 「窓開けたのに?!」

空手 「あああああ、どうするんですかあああああああ!!」

大工 「万策尽きたな。あとは大人しく吹き飛ぶのみよ」

空手 「いやだ!! まだ20歳にもなってないのに!! 死ぬ前にせめて一回、お酒を飲んでみたかったー!!」

強盗 「あのー」

大工 「おう? どうした? 強盗さん。と言うかあんた、逃げなくていいのか?」

強盗 「それがさっきからもう…ウンコが限界で限界で……お腹が苦しすぎて、身動きも取れません。あの……良かったらせめて爆発する前に、お腹をすっきりさせて頂けませんか?」

大工 「そいつはつまり……」

強盗 「はい。そこ、開けてくれませんか?」

空手 「な?! そもそも誰のせいでこんな目に……」

大工 「いいぜ。入りな」

空手 「ちょっと?!」

大工 「いいじゃねぇか、最後くらいよ。ウンコをする、すっきりする。
それがトイレってもんだろ?」

空手 「……ガチャ。ギィー。立てますか?」

強盗 「それがもう、お尻の穴からウンコ君が出そうで出そうで……」

空手 「肩を貸しますね」

強盗 「ありがとう……ありがとう……」

幽霊 「あのー」

空手 「あれ? 幽霊さん?」

大工 「どうした? 幽霊?」

幽霊 「通り抜けられるので、あちこち周って、爆弾を探してきました」

空手 「うわ?!」

大工 「そ、そいつが爆弾……」

幽霊 「それでですね……僕、この爆弾を止める方法わかるんですけど……」

一同 「ええ?!」

大工 「さっきもそうだが……お前さん、いったい……」

幽霊 「実は死ぬ前、世界をとどろかせる爆弾魔をやっていたもので……」

空手 「何ですかこの銀行?! 強盗に変態に爆弾魔に……犯罪者だらけですか?!」

大工 「そんな事、今はどうでもいい!! それより、どうやったら止められるんだ?!」

幽霊 「ステルコビリンを沢山、ここの小さな穴から入れてやれば止められます」

空手 「ステル……なに?」

幽霊 「ステルコビリンです」

大工 「何だ? その捨てる子ってのは?」

幽霊 「ビリルビンが腸内細菌によって代謝されることで生成されるものです」

空手 「ビリルビン……?」
大工 「よくわかんねぇ!! つまり、どうすりゃいいんだよ!!」

幽霊 「簡単に言っちゃうと……ウンコです」

空手 「……へ」

幽霊 「ウンコが沢山あれば、止まります」

一同 「…」

空手 「強盗さん!!」

大工 「いや、『怪盗、ウンコ垂れ流し小僧』!!」

幽霊 「できますか? お尻の穴から出したウンコを、正確にこの爆弾の穴に入れなくちゃダメです。ちょっとでも外したら、ドカン!! ですよ」

強盗 「……舐められた……ブッ……もの……プゥ……ですね、僕も……」

大工 「おい、大丈夫か?!」

強盗 「僕は……プゥ……誰にも負けない得意技が……ブフ!! あるって言いました……」

空手 「身が少しだけこんにちわしてる!?」

強盗 「僕は……的に当てるのだけは……誰にも負けない、ん……です!! うおおおおおおおおおおおおお!!ブリブリブリブリブリ!!」

一同 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

強盗 「こうして爆弾は僕のウンコによって無事に停止し、僕、空手家さん、大工さん、フル子さん、御爺さん、幽霊さんの命は救われた」

幽霊 「いえ、救われてないです自分」

強盗 「……あの後、僕はただの銀行強盗から、『怪盗ウンコ垂れ流し小僧』となり、世界平和を守るべく日夜、ウンコと共に、戦っている!!」

女性 「誰かー!! 助けてー!!」

サンタ「ふっふっふっふっふ。このトイレを破壊されたくなければ、大人しくウンコを漏らすのだ!!」

強盗 「そこまでだ!! 怪人トイレ破壊ジジイ!!」

サンタ「ぬう!? 何奴?!」

大工 「あ!! 怪盗!! ウンコ垂れ流し小僧!! 来てくれたんですね!!」

強盗 「安心しろ!! この私がいる限り!! 皆のトイレの平和は守ってみせる!! いくぞ!! とう!!」

幽霊 「この世にウンコ垂れ流し小僧がいる限り、世界のトイレは守られる。行け!! ウンコ垂れ流し小僧!! 負けるな!! ウンコ垂れ流し小僧!! おしまい」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?