【忍殺感想文】4部OG2話「マーセナリイ・マージナル」

「辛抱しろ……死ぬのは許さん……死ぬ前に、おれに残してゆけ……残してゆけ!」ニンジャスレイヤーは言い放つ!「残せ! アユミを殺したニンジャの道筋を!」

センタ試験に人生の軌道を乗せた男。ギリギリの情報屋稼業で食いつなぐはずが思わぬ出会いに見舞われた男。謎めいたポータルを超えて日本にやってきた男。そして、オリガミ・アーティストとしての運命を唐突にねじ曲げられ、異質なニンジャになった男。混沌の都市ネオサイタマに、実際様々な思惑と人生が交錯するこのエピソード、実際かなりオススメです(ニュービーでもかなりごあんしんかと思われます)

まずマスラダの過去パート。オリガミ作家としての側面から彼の信念の一端が見え隠れしてきます。モータル時代から既に見せていたストイックな一面。或いは意味と価値に関するアイディア。フジキドと違ってモータル時代に「作る」仕事をしていたマスラダからすれば文明の簒奪者たるニンジャは、そしてニンジャになってしまった自分はどう映るのか。今後の変化も含めて気になる部分です。

次に今回のゲストキャラ2人。まずはプロフェッショナル浪人生のムキョウ=サン。そもそも「プロ浪人生」という概念すら比較的ショッキングですがそこは混沌都市ネオサイタマ、それもマッポーカリプス後とあればそうしたビジネスもよくあること、と思うしかありません。(プロ浪人生界隈の事情については考察にチャレンジしたいと思っています) センタ試験で好成績を残しながらあえて「受験生」であり続け、「浪人生以外の何者にもなれない」道を選んできたムキョウ=サン。無味乾燥とプロ浪人生ライフを評しつつそれでも模試に向けベストを尽くさんとする姿はなんにせよプロそのものです。

一方のナハトローニン=サンもまた「フリーランス以外の何者にもなれない」道を選んだニンジャ。そしてサツガイから賜った力に溺れることのない強者です。忍殺にはこれまでも幾人か「実力派フリーランスニンジャ」が出ていますが、彼もまたその系譜に入るのではと思います。サツガイ・エフェクトでジツを受け取ってもなおその力に溺れることなく、戦略に取り入れて使いこなす。そうしたプロにその身一つで挑んでいくニンジャスレイヤーは「マスラダ・カイ」というアイデンティティを半ば失った者。それでも、自分の求めるもの、「アユミを殺したニンジャの道筋」の為決断的に挑むその精神は、先代のニンジャスレイヤーと共通する「鋼鉄の意思」であると思います。

どちらかと言えば頼りにならない情報屋のデータを一筋の光に、仇追う荒削りな殺忍者。果たして次のニンジャは何者なのか。どこへたどり着くのか。それは、寝ているブッダのみぞ知る……のでしょうか。

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