受肉の日

あたしおかしくなったかな。
憂鬱な月曜日。いつもの通学路。
いるはずのない人がいる。
天地 衛。今最推しのVtuber。ここ数年の特撮主演俳優を意識したマスクに通りよいボイス。程よくバカをやり、肝心な所で決める。
現実にギリギリいなそうな絶妙のラインを攻めてくるスタンスに、あたしは惹かれていた。
その天地さんが。
全裸で、歩道を、渡ってる
右手に、ナイフを、握りしめ

思わずあたしは携帯のカメラを起動。
幻覚じゃない。生まれた。
推しがこの世に受肉した。
今日は祝日だ。あたしが今決めた。
バスを降りろ。学校休んじゃえ。夜まで推しを追い掛けろ。
ハイになったあたしを置き去りに、天地さんは堂々と街を歩く。
推しの吸った空気が肺を駆ける。胸が高鳴る。
駅を目指した彼は突然ダッシュ。あたしも走る。
そして彼はすれ違う人々を。
いきなり、ナイフで、刺しました
……え?

【錯綜 に続く】

#逆噴射小説大賞 #逆噴射プラクティス

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