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【七転八倒エオルゼア】#3

※このシリーズについて


ゲーム『ファイナルファンタジー14』における自機『Touka Watauchi』及びそのリテイナーキャラ『Mimino Mino』を主役とする不連続不定期短編企画です。ゲーム本編のメインクエストやサブクエスト、F.A.T.E.などの内容をもとにしたものが含まれます。また、各エピソードごとの時系列は前後する場合があります。

登場人物紹介

Touka Watauchi(綿打 灯火/トウカ):主人公。海を渡ってリムサにやってきたアウラ男性。リムサ渡航時点で20歳。

Mimino Mino(ミミノ・ミノ/ミミノさん):Toukaが雇ったリテイナー。リムサにすっかり慣れたララフェル女性。年齢非公開。なお、今回のエピソードには登場しない。

【奇妙な(?)鉢合わせ】

これはまだトウカがミミノとリテイナー契約を結ぶ前、それどころか初めての蛮神戦に挑む前、マイチョコボのリョウゲンと出会う前、砂の家に初めて入る前……まだウルダハもグリダニアも「見たことがない国」だった頃の話である。

中央ラノシア南部、ローグ川。
リムサ市街地に近く、川底も浅いこの川は普段なら漁師と冒険者が並んで釣果を競うスポットだ。サマーフォード庄からの依頼が終わり、次の依頼を受けて近くを歩いていたトウカが漁師の悲鳴を聞いたのは、正しくこのローグ川沿いを通りがかった時であった。

「た……助けてくれぇ!」
「どうした!?おっさん、しっかりしろ!」
トウカが軽く肩を揺すったことで正気付いたか、漁師は成り行きを語り出した。
「プギルどもが急に増えやがった!」
「プギル?」
「あのいやにビチビチ跳ねてやがるヤツらだよ!」
トウカがローグ川に目線を向けると、川面を半ば覆う勢いで魚型エネミーがこちらに向かってきている。
(基本の2連をとにかく当てて……数が多いな、ポーションの残りは……とにかく逃がす前にやってみるか!)
「おっさん、ちょっと待っててくれ!」
退治してくれるのか、という漁師の問いを聞くより早く、トウカはローグ川に飛び降りた。

◆◆◆◆◆◆

「これでどうだ!?」
メイムの一撃でプギルを断ち割りながら、トウカが叫ぶ。これまでに倒したプギルは10匹を超えたが、とにかく数が多い。ポーションも既に2度使っている。慎重な立ち回りが必要だ。
(前の2匹を手前から奥の順で倒せばこの辺りはひとま、)
「ぐぁっ!?」
背後からの強烈な突進が、立て続けにトウカを襲った。
「もう3匹追加かよ、さすがにマズいな……」
今の実力でこの数をまとめて相手取るのは無理がある。さっきの突撃で袋叩きにされ、ローグ川を無様に流されるだけだろう。しかし、一対一にさえ持ち込めれば勝機はあるはずだ。

「釣り出せればいいんだよな……だったら!」
言うが早いかトウカは敢えて構えを解き、背を向ける。川の流れに逆らうように斧を抱えたまま逃げるかと思われたトウカだったが、数歩だけ逃げると気合いで向き直り、追うプギル目掛けて逆襲の一撃を……叩き込む!
「ヘヴィ、スウィングッ!」
遠心力も上乗せした渾身の一振りはプギルを川の土手に叩きつける。予想外の動きに追いつけず、そのまま突進してくるプギルにトウカの斧が一振り、またひと振りと襲いかかっていく。
「これ!でも!くらえっ!!」

◆◆◆◆◆◆

「あんちゃん、助かったぞ!ありがとなー!」
「どういたしましてー!」
水を吸って重くなった服を半ば引きずりながら、トウカはローグ川を上がる。と、やや遠くの木陰に人影が見え、そして動いた。
「こっちを見てる……?」
金髪、おそらくヒューラン、白の上衣。
得物は見えないが、身のこなしからして彼我の実力差は絶望的。ポーションがいくつあっても足りない、どころか何秒持つか……

「いやどっかで見覚えあるぞ?」
冒険者互助団体CWLSの一つで管理人を務めるソフィア・フリクセル女史。冒険者としての実績、経験、そのいずれをとっても遥か格上の大物冒険者、のはずである。
ひとまず斧を背に懸架し、距離を詰めていく。
「お、トーカくんだ!」
「お世話になってます」
トウカの礼に、ソフィアは気さくなダブルピースで返す。
「あの、何やってたんです……?」
「新人冒険者の奮闘を見に来ました」
「そりゃわざわざどうも……って、さっきの見られてたんです!?」
「正確に言えば、その前から見てましたよ」
「ぜんっぜん気づかなかった……」
極まった冒険者ならなんのことはない芸当なのだろうが、トウカには考えすら及ばぬ技巧である。

「ところで、これからどちらへ?」
「そうそう、本当はそのまま低地ラノシアまで出るつもりだったんです。ただ、さっき漁師のおじさんの悲鳴が聞こえて……」
「ローグ川に飛び込んだ、と」
「そういうわけです」
おそらく尾行していた本人に説明するというなんともシュールな行為を続けながら、トウカはある疑念に至る。だが、こちらも次の依頼があり、
おそらく先方も忙しい。敢えてトウカは聞かないことにした。
「それじゃ、そろそろ行ってこようと思います!」
「頑張ってくださいね!」
ソフィアに別れを告げ、低地ラノシアへ向かうトウカ。その頭の中では、疑問が渦巻いたままなのであった。

(((俺が気づかなかったら、あの人どうするつもりだったんだ?それともまさか……気づくまで?)))

【今回のスペシャルゲスト】

快諾頂き誠にありがとうございました。

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