池守よいとこ 一度はおいで

確かに追い込んだ。勝手知ったる俺の庭。
泳がせながら隅に追い込み、さっと仕留めて競りに出す。
鞄からワイヤーを投げ、通電。この天気なら2秒で十分だ。

「アがっ、バッ」
電気ショッカーがよく効いたか、男はまだ痙攣している。
「ヒロ、こいつどこまで出せる」
「へぇ、カマとトロに……少しですが中トロもいけやすかね」
上出来だ。ここしばらく“不漁”だったが、巻き返せるだろう。
俺はさっそく馴染みの業者、通称“アボカド”に電話する。

……大企業やら研究所の不手際で、この街は人型の食材が歩き喰らい合うスーパーマーケットになった。不可食市民は全体の2.1%のみ。残り全員、生まれたと同時に何らかの食材と存在がコンタミしてる。全身最高級とろろ芋市長を筆頭に、だいたい“食べ頃”ってわけさ。

全ての倫理観が消えた街。
人間のサラダボウル。
池守[イケス]へ、ようこそ。

【殺人罪不適用 へ続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?