超科学都市宣言のまち 伊江武の歩き方

「スマホ断波で 広げよう近所の輪」

「ゼロ毒素で築く 長命社会の第一歩」

「絶線シールで 宇宙線に立ち向かおう」

なんだこの街。
街を歩けばあらゆるビルに「科学標語」が掲げられ、コンビニには「当店は非純化水を売りません」の張り紙。駅前では謎の襷を掛けたご婦人の集まりが開かれている。

「ご存じないんですか、あれ」
怪訝な顔がばれたか。俺はタクシー運転手に返す。
この街は初めてでして。
「啓蒙騎士団のみなさんですよ」
平成も終わるのに騎士団かよ。ここ日本だろ。
「スマホ断波、キャベツ服、丹田調律……全て騎士団の皆さんが提起しています」
もういいお腹いっぱいだ。どんなテーマパークだよ。
道行く人が皆キャベツで局所隠してたのそれかよ。

俺は自販機で高純化水素水を買って飲む。悲しいかな、差が分からない。
なんでこんな理想都市に来ちまったのか。事の始まりは先週、本社に入った一本の電話だ……。

【反科学制裁 に続く】

#逆噴射小説大賞 #逆噴射プラクティス

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