転校生、徹

いいベルトしてんじゃん。見せろよ。
部長の水嶋にはこのふざけた転校生が何もかも気に食わなかった。
何が入部したい、だ。何が相撲部だ。
ここは俺たちのたまり場。真面目に稽古するやつなんざ、必要ない。
だから張り手一発、それで分からせてやる。
そのはずだった。

構えて踏み出した瞬間、転校生のベルトが僅かに光る。
踏み込みで爆ぜる土俵。
ただの張り手で、水嶋の巨体は砲丸の如く壁を抉った。
「こっちで、勘弁してもらえますか」
転校生はアクセサリーを取り出し、唖然とする水嶋に投げる。
受けた水嶋の右肩が、外れた。
取り落としたそれは、ハンマーのようなデザイン。
柄には[THOR]の刻印。
さっきまで晴れていた空は、今や雷雲が覆う。
幾条もの閃光。遅れて、轟音が校舎を駆け抜けた。
「1-Cの山田徹です。相撲部、入りに来ました」

【顧問探し に続く】

#逆噴射小説大賞 #逆噴射プラクティス

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