SUCCESS/SUCCESSION

サイロじゃなかったのかよ、あれ。
じいさんの遺産相続の席、全てを知っていたばあちゃん以外全員が度肝を抜かれた。いとこのなーちゃんはショックで気を失い緊急搬送。なんてもん遺したんだじいさん。
かわいい孫が病院送りだぞ。

「お前、あれどうするよ?」
親父に聞かれ、俺はまた首を捻った。
「そもそもあれ、どうやって作ったのさ」
「何も聞いてないんだ」
「はぁ?」

屹立する「それ」を見ながら、俺と親父はしばし沈黙し、やがて同じセリフを吐いた。
「「……飛ぶのか、本当に?」」

最大の遺産、それ即ちロケット。仕様書・発射台付き。
H2-A202ロケットとほぼ同規格のそれが、サイロとその地下に「格納」されていた。
そして、じいさんの強い要望が遺言書に記されていた。
「ロケットを相続した者は必ず使用すること」

真面目一辺倒のじいさんによる、生涯唯一のボケ。
あまりにも、笑えない冗談だ。

【1.税理士本多の困惑 に続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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