【七転八倒エオルゼア】#9
このシリーズについて
ゲーム『ファイナルファンタジー14』における自機『Touka Watauchi』及びそのリテイナーキャラ『Mimino Mino』を主役とする不連続不定期短編企画です。ゲーム本編のメインクエストやサブクエスト、F.A.T.E.などの内容をもとにしたものが含まれます。また、各エピソードごとの時系列は前後する場合があります。
登場人物紹介
Touka Watauchi(綿打 灯火/トウカ):主人公。海を渡ってリムサにやってきたアウラ男性。リムサ渡航時点で20歳。
Mimino Mino(ミミノ・ミノ/ミミノさん):Toukaが雇ったリテイナー。リムサにすっかり慣れたララフェル女性。年齢非公開。なお、今回のエピソードには登場しない。
【激突!暁の斧術士vs暁の赤魔道士!?】
モードゥナはレヴナンツトール、暁の血盟の新拠点『石の家』。『砂の家』と違い、酒場を抜けて入るという構造からか、はたまた腕っこきの冒険者が多い土地柄か、以前と違って市井の情報が手に入りやすくなった、とトウカは感じている。
蛮族と各国家の前線事情、蛮神活動の兆候、ガレマール帝国の動向、あるいは……。
「トウカさん、大変でっす!」
「タタルさん!そんなに慌ててどうしたんです?」
石の家に顔を出したトウカに駆け寄ってきたのは、暁の金庫番ことタタル・タル。その手には新聞が握られている。
「黒衣森にトウカさん達を騙る盗賊が出ているらしいんでっす!」
タタルが渡してくれた新聞を、トウカは早速読み始める。
「裏表紙面使ってやるような話かな、だいたい俺の偽者って……俺の偽者!?」
数多の蛮神を打倒し、そのうえアルテマウェポンを破壊したトウカは、俄に時の人となりつつあった。最近では名前を出しただけで「暁の斧術士とはきみのことか!」などと言われるようになり、トウカ自身も変化を実感するようになってきてはいた。しかしまさか、偽者が出るとは。
「もっと有名な冒険者もいたろうに、敢えての俺かぁ……会って話をしてやりたいところだ」
「まぁ、懲らしめてやったほうがいいのは事実だな……情報の元がいささか怪しいのは気になるところだけど」
「パパリモさん!情報の元が怪しい、ってのは?」
トウカの元に寄ってきたのは暁の血盟のベテラン呪術士、パパリモである。コンビを組むイダと共に担当するグリダニアの現況報告を終え、ちょうど暁の間から出てきたところであった。
「グリダニアで刊行されている新聞はいくつかあってね。この【黒衣森民報】というのは……どちらかというと真偽の怪しい記事も平気で載せるタイプの新聞だ」
「【リムサ・トゥデー】とかと同じような?」
「まだ【週間レイヴン】のほうがマシといったところだな。タタル、他にトウカの偽者の記事を上げている新聞はあったかい?」
「【週間レイヴン】でも名前はぼかされてまっしたけど、書いていた記事がありまっす!」
「両方で扱ったとなると、少し無碍にするのも難しいな……」
「パパリモさん、今からまたグリダニアに戻るんだろ?俺も一緒に行く。出処の微妙な噂とはいえ、放っておくのも上手くなさそうだし」
「懲らしめるにせよ、作戦はあるのか?」
「1人で捕まえるのは難があるので……あの人の力を借りようかと」
「あの人?」
◆◆◆◆◆◆
その日の午後。トウカとパパリモの姿は、南部森林、いや黒衣森を代表する名店「バスカロンドラザーズ」にあった。
「で、手がかりをうちに集まる情報に求めたわけだ」
事情を話したトウカに、店主のバスカロンは快く答えてくれた。
「その手の情報ならいくつかあるが……黒衣森の中のことだ、何もお前さんが出なくてもうちの常連がそのうち片付けちまうぞ?」
「あんまり悪い噂をほっとくのも上手くないので、早めにやってしまおうと」
「そういうと思ってたぜ。ま、酒場の話だ、
真偽の程は保証できないが……」と言いつつバスカロンは店のやや奥のテーブルを指差す。
「半月くらい前からだったな……その辺でお前さんの噂をやたら熱心に聞いて回ってるエレゼンがいてよ」
「俺の噂?」
「そう。お前さんとは違ってちょっと細身でな。オフィリオーにも声掛けてあんまりしつこく聞いてるもんだからこっちで止めさせたんだが……」
「なるほど、エレゼンの背格好なら身の丈ざっと80イルムあるトウカに化ける、というのも不可能ではないか」
「どうだかな、パパリモさん。あいつかなり細かったぞ?あれは斧振るえる腕じゃないね」と言いつつ、バスカロンはトウカの腕を見る。
「そいつかどうかは分からないけどさ、」と会話に入ってきたのはイアンナ。この店の常連客の1人である。
「この前……3、4日前だったかな、ミコッテとハイランダーと連れ立って歩いてたよ。なんかいやにごつい鎧着てさ」
「ごつい鎧、ごつい鎧、それってもしかして……。」と言うなりトウカは1度店を飛び出し、すぐにチョコボの鞍に引っ掛けてあったものを小脇に抱えて帰ってきた。トウカがゴージ先輩との修行の終わりに受け取った、逸品物の立派な兜である。
「これと同じような兜がついてました?」
「そうそう、こういう……こんなに立派な鎧だったかねぇ?角の向きも違うし」
「自前の角は難しいから、と兜のほうを真似たか?」
「ところがこの兜、ひとつ問題があって……」
と言うなりトウカは兜を両手で持つと、そのままゆっくりと被った。
「角が4本になっちまうのか!」
「もともとアウラ向きの作りではなかったらしくて。俺の角をしまうように改修できないかとやってもらったんですけど、途中でつっかえることが分かって、結局そのままになりました」
「なんとも君らしい悩みだな……」パパリモはテーブルに戻された兜をコツコツと軽く叩きながら返す。
「しかしこれで真贋の区別がはっきりつくわけだが……折角ならよ、それを利用できねぇか?」
「バスカロンさん?利用するって……」
「噂を流してやるんだよ!『四本角の男が暁の斧術士を探してる』ってな」
◆◆◆◆◆◆
その日の夜。バスカロンドラザーズには1人のムーンキーパーが姿を見せていた。本来の名をウ・タガー・ワシというのだが、その名を知る者は彼女の『仲間』をおいて他にはいなかった。
ウ・タガーは入るなり、今夜の店内は何かが違うと察した。腕っこきの冒険者や双蛇党員が集うこの店にあって、ここまでの緊張感に満ちた夜は珍しい。この店に出入りするようになってまだひと月ほどのウ・タガーが断言できるほどには、今夜のざわめきは異様であった。
「血のような真っ赤な髪!」
「……あの暁の斧術士を……。」
「このままじゃ鬼哭隊が……。」
気になる言葉をいくつか拾いながら、ウ・タガーはバスカロンのいるカウンターに向かう。
「ねぇ、どうしたのマスター?今夜はやけに騒がしいけど……。」
「おう、嬢ちゃんか。悪いが今夜は早めに新市街まで戻ったほうがいいぞ」
「またシルフ族のイタズラ?」
「それで済んだらいいんだがな……。暁の斧術士を探してるってやつがこの近くで暴れ回ってんだよ」
「暁の斧術士ってあの?ガレマール帝国と戦ってるって噂の人?」
「そうだ。そいつを敢えて狙うあたり、様子がおかしいとしか思えねぇんだが……。」
ウ・タガーはバスカロンの話に耳を傾ける。その暁の斧術士を知っている――もっとも、彼女が知っているのは『偽物』のほうだが――手前、無視できる話でもない。
「なんでも身の丈は90イルム、4本の角に細身の剣が目印とのことでな。既に鬼哭隊員も何人かやられてるようだ。」
「とんでもねぇ早さで一突きにしたって聞いたぞ?」と常連客達が混じってくる。
「魔法を使ってたって聞いたね。暴風が吹いた、って。」
「暴風?それなら幻術士じゃないの?」
「幻術士が剣なんか持つわけないだろ……。」
ウ・タガーは頭の中で情報を整理する。四本角の男はおそらく剣術士と呪術士の両方をこなせる猛者か、後方からララフェル族が魔法で支援している可能性。酔客の情報であることを加味すると四本角はなにかの見間違い。90イルムの高身長も、数字を盛ったにせよエレゼンなら説明がつく。
「確かに今夜はあまり長居しない方がよさそうかも……。」
「おう、そうだな。気をつけて帰るんだぞ?」
「大丈夫です!あたし、コレがあるので」とウ・タガーは右手に持った杖を軽く振る。この「仕事」をやるためという訳ではないが、彼女は幻術士としての基本をマスターしている。
「じゃあな、嬢ちゃん!」
「今度は俺と一杯やろうぜ!」
常連客達に軽く会釈しながら、ウ・タガーはバスカロンドラザーズを後にする。少々顔を売りすぎたか。そろそろ黒衣森での『商売』を切り上げ、クルザス辺りに拠点を移すべきかもしれない。いつ『本物』を知るものと出会ってもおかしくはないのだ。
◆◆◆◆◆◆
数十分後。黒衣森東部森林の一角に向かって、ウ・タガーは走っていた。既に着替えを済ませ、『商売』にふさわしい格好となっている。走りながらリンクパールを繋ぎ、仲間と連絡を取る。
「こちら『ヤ・シュトラ』!今どっちに向かってる?」
「こちら『トーカ』!『サンクレッド』が上手くあいつをシルフの仮宿方面に誘導してる!俺が西側、『ヤ・シュトラ』が南側から囲んで3対1で叩けないか?」
「こちら『サンクレッド』!四本角野郎はもうキレてるぞ、早めに頼む!」
バスカロンドラザーズを出たウ・タガーは、すぐに仲間に店で聞いた噂を伝えた。どこの誰かは分からないが、自分たちの『商売』の邪魔をされるのは困る。何とかして排除できないかと探し回っていた矢先、『サンクレッド』が四本角の男を見つけたのだ。
「こちら『ヤ・シュトラ』!まもなく着くよ!」
黒衣森の宵闇を裂くように、月光がウ・タガーの仲間と対峙する四本角の男を照らした。身の丈90イルムはさすがに誇張されていたが、それでも80イルムはくだらないだろう。元々の体格か、それとも鎧なのか、壁のような威圧感を醸し出す男であった。
「オレを探してるってのはお前か!」
やや遅れて追いついた『トーカ』が声を張る。染めた赤髪に2本の角をあしらった帽子、そして地面すれすれまで伸びた尻尾は鎧に直接取り付けられている。暁の斧術士の噂を元に装ったこの姿で、これまで幾度となく盗みも恐喝も働いてきたのだ。
「いかにも、俺だ。」兜の奥からくぐもった声が聞こえる。四本の角はその実兜の装飾が2本、兜と材質が異なるものが2本あるように見えた。
「暁の斧術士が黒衣森にいると聞いてな。……手合わせ願いたい。」
得物を帯びていないにも関わらず、その気迫にウ・タガーは一瞬気圧された。
「俺らが誰か分かってて声かけてんの?」『サンクレッド』が盾を構えながら剣を抜き放つ。
「『暁』に口出ししようってんなら……容赦しねぇぞ!」『トーカ』も斧を抜き、投擲体勢を取る。
「アンタが誰だか知らないけど、あたしらの敵じゃない!」ウ・タガーも杖を構え、エアロを放とうとする。
「本当に知らないんだな?俺が、誰なのか」
四本角の男が兜を脱ぐ。赤い短髪。2本の大きな角は、側頭部から直接伸びている。そして赤い双眸。
「ひっ」ウ・タガーは息を呑む。
「お前達のいう『暁』の真価、この俺に示してみせろ……!」
四本角の男は、懐から赤にも桃色にも見える宝石を取り出し、正面へと突き出す。月光が宝石を照らした次の瞬間、男の周りを赤い疾風が包む。風が止むと同時に、そこに立っていたのは赤いローブを纏った四本角、いや二本角の男であった。
「自己紹介が遅れたな。俺はトウカ。ワタウチ・トウカだ。」
言うなりトウカは細剣を抜く。それと同時に、左側に謎めいた魔具が浮遊する。
「トウカ!」と、ウ・タガーの後方、やや低い位置から別の声。
「パパリモさん!ちょうどいいところに!」二本角の男が声をかけた方に目をやると、そこにはモノクルをかけたララフェルの呪術士が立っていた。
「なるほど夜間に、僕達相手でもないならそれでも通っただろう。だが、トウカはそんなに浅く斧を握らないし、サンクレッドは盾役がいるなら双剣を取るだろう。それに、」とララフェルの呪術士はウ・タガーに向き直る。
「戦闘中のヤ・シュトラが、そんな分かりやすい隙を晒すはずがない。君の相手は僕がしよう。」
ララフェルの呪術士が持つ杖は、既にその黄金の輝きを強めている。
「じゃあ俺はサンクレッドと俺の偽者を、」
「いや、その必要はないよ。」
「……ということは!来てるんですね!」
「ごちゃごちゃうっせぇ!ララフェル1人増えたごときで何に」
『サンクレッド』の頬骨にヒビが入ったのは、その直後であった。
「とりゃーっ!」
『サンクレッド』の意識外から突き刺さる、挨拶代わりのダッシュストレート。
「……ありゃ?サンクレッド!?」
「いや、そいつは偽者で合ってる!」
「たしかに!サンクレッドだったら多分防がれてたね!」
「イダさん!助かりました!」
「てっ、てめぇ……!次はないぞ!」
何とか立ち上がった『サンクレッド』が、改めて剣と盾を構える。
「これで3対3だな。来い、『暁の斧術士』!」
◆◆◆◆◆◆
夜の黒衣森に、6つの影が躍る。ウ・タガーの放った魔法は、ララフェルの呪術士に1発残らず相殺され、そのうえで必ず1発多く返ってくる。魔物相手や素人相手なら有効だった『サンクレッド』の剣術も、イダと呼ばれた女の体術の前にガードを崩され、一撃、また一撃と有効打を許していく。そして『トーカ』と二本角の男は……。
「ヴァルストーン!」二本角の男の構えた細剣の延長線上、ちょうど『トーカ』の腰の辺りを狙うように岩塊が生じる。
「こんなもの!」『トーカ』は素早く反応し、岩塊を割り砕く。しかし、その隙を狙ったかのように二本角の男の二撃目が放たれる。
「ヴァルサンダー!」二本角の男が剣を突き出すと同時に、剣から細剣の刀身を象ったかのような雷撃が飛び、『トーカ』の左肩を撃ち抜く。迅速魔による詠唱破棄の一種にしても早すぎる。そもそも迅速魔の詠唱すら聞こえないのでは、予想のしようもない。
「ちくしょう、まだだ……!」己を強いて『トーカ』が立ち上がる。斧術士特有の頑健さで耐えてはいるが、刺突を伴う魔法ともいうべき二本角の男の奇妙な攻撃に対応しきれていない。
「ここからが俺の本気だ!」『トーカ』の瞳が一瞬輝き、全身に力が漲る。
「行くぞ!ヘヴィストラ」
「デプラスマン!」
「い゛っ!?」
二本角の男は斧の一撃に合わせるように剣で空を薙ぎつつ、さらに宙返りで飛び離れる。追い討ちのように二本角の男が魔弾を連続で放つ。『トーカ』は魔弾へのカウンターに斧を当てるが、2発目を弾いたところで彼の全力は終わりを迎えた。
「この、くそっ!なんなんだよお前!」
「それはこっちのセリフだ!よくも人の名前騙って好き勝手やってくれたな!だが、それも今日で……なっ!?」
トウカに油断があったか、一瞬のスキをついて『トーカ』がウ・タガー目掛けて走り込んでくる。
「えっ、ちょっと何!?」
「うっ……動くな!動けばこいつを殺す!お前のせいで死人が増えるぞ!」
破れかぶれの策であった。それでも無用の死を避けるためか、二本角の男は構えを一度解く。
「仲間を盾にしてまで生きたいか……!」
「たりめぇだろ!ほら、とっとと武器を捨てろ!」
『トーカ』の言葉を呑み、二本角の男は剣を……置かなかった。左手を前にし、ほぼ同じ位置に細剣の切っ先を揃える。腰を低く沈め、一点集中の構えを取る。そして魔器から流れ込むエーテルが細剣を覆い、赤い閃光が剣に宿った。
「こいつを見捨てるんだな!?じゃあ、」
「シ・ルン・ティア流細剣術、奥義」
ブンッ。異様な音と風を伴い、二本角の男が消える。
(((悪い、少し浮くぞ)))
「……え?」タガーは己のすぐ横に吹いた突風の声を聞いた、ように感じた。
その直後数秒、タガーの理解を超える剣術が『トーカ』に襲いかかっていた。赤い暴風が『トーカ』の体を貫く度、鎧は砕け、骨は折れ、しまいに斧まで破壊する。初撃で『トーカ』の手を離れたタガーの体は、イダと呼ばれた格闘士が見事にキャッチしていた。
「わっ、わわっ!……よし!大丈夫?」
「ええ……はい……。」
タガーが気の抜けた返事を発するのとほぼ同時に、暁の斧術士を騙った者の角は砕かれ、尻尾は千切れ、体は黒衣森の大地に叩き付けられていた。
「最後にひとつだけ、言っておくことがある」
大の字に伸びる『トーカ』に、二本角の男が語る。
「この角も尻尾も『暁』の名前も、何もかも俺の誇りだ。人の日常を踏みにじるようなやつが、勝手に騙れると思うな」
◆◆◆◆◆◆
明くる朝。グリダニア新市街、カーラインカフェの一角。背格好もまちまちな3人が、揃ってラプトルシチューとパンのセットを頬張っていた。双蛇党に一連の事件の報告を済ませたトウカ達である。
「しかしあのウ・タガーという呪術士、せっかくああまで基礎を鍛えてやることが犯罪の片棒担ぎとは……。」パパリモが残念そうな顔をしながらラプトルシチューに口をつける。
「パパリモさんから見ても見込みありだったんですか?」とトウカがパンをアウラ基準の一口大にちぎりながら問う。
「筋は悪くなかった。ただ、もともとやっていたことがやっていたことだ。双蛇党が裁くか、黒衣森が裁くかの違いしかないかもしれないね。」
「アタシは……できればあの子だけでも助かってほしいかな。トウカが止めたとはいえ、最後は仲間に盾にされちゃったわけだしさ。」口についたシチューを拭いつつ、イダがパパリモに返す。
「まぁ、情状酌量の余地くらいはあるかもしれないが……。僕たちの証言次第ということになるか。」
「そういえばさ!」とイダが重くなった話の空気を戻さんとトウカに向き直った。
「最後のあれってどうやって撃ったの?」
「あれは体内エーテルを圧縮循環させて、」トウカはまだ食べていないパンを持ってジェスチャーしながら説明する。
「そんな仕組みだったのか!?」と驚き、軽くむせたのはパパリモ。
「俺のフィジカルに赤魔法を上乗せしてあのスピードで切りかかる、ってわけです。狭い川の方が水の流れが早いのと理屈自体は似てて……」
「けほっ……。なるほど、それで少量の体内エーテルだけであの威力にしていたのか。」
「まぁ、だいたい今のは師匠の受け売りなんですけどね……。まだまだ強化はできると思いますし。」と言いつつ、トウカはラプトルシチューをもうひと皿頼むか悩んでいる。
「その師匠って、どんな人なの?」とイダ。
「人助けしながら街から街への渡り鳥、って感じの人ですね。」
「戦士の先輩といい赤魔道士の師匠といい、君はつくづく変わった先達に出会うな……。」
話し込む3人をよそに、グリダニアを照らす太陽はゆっくりと昇ってゆく。東征奔走する『暁の血盟』の勇士たちの、つかの間の安息であった。
(【七転八倒エオルゼア】#10に続く)
(今回の元ネタ)
今回は新生時代、だいたい2.0と2.1の間くらいの期間の回とお考えいただけると幸いです。次回はトウカのオリジン回をやれれば……。
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