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そばけもの

父さんな、手討ち蕎麦をやろうと思うんだ。
開業ってことか、いいじゃない。
半年前である。蕎麦打ちをライフワークと自負する父だったが、とうとう開業を決断したらしい。子育て終了、そして退職。最高のタイミングである。
意気揚々と開業した父は真面目に蕎麦を打ち、予想を超える人気店を築き、
ある日失踪した。

そして今。
蕎麦の化け物が出たってさ。
そう言って突き出されたスマホの画面には、確かに蕎麦の化け物が映っていた。
全身が蕎麦で構成されたそいつは、手足から蕎麦を伸ばして駅そばの店内に突っ込み、店員と客を取り出しては壁に叩きつけていた。更に店の蕎麦を取り込み、巨大化している。推定3.5mってとこか。
しかし、どこかで見たような。
俺は画面を弄り、その理由に至る。
頭部の鉢巻。どう考えても、父の鉢巻だ。
親父、手打ち蕎麦始めたんじゃないのかよ。なに手討ちしてんだよ。
人間捏ねてどうすんだよ。

【家族会議Ⅰ に続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞

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