デモクラシーの理想と現実[抜書き]

マッキンダーのハートランド理論。

東欧と中央アジアのハートランドとして定義する。そして、ハートランドを制する者は世界島を制し、世界島を制する者は世界を制するという理論。

具体的に想定されていたのは、ドイツとソ連のランドパワー国家。当時、ソ連が中央アジアを手中に収めていたので、マッキンダーとしては東欧が鍵だと考えていた。ハートランドを統一されないために、東欧に独立した諸国家を成立させることが重要であるとして、具体的にはルーマニア、チェコスロヴァキア、ブルガリア、セルビア、ギリシャ、ハンガリー、ポーランドの七国家を独立させようとしていた。それを助けるため、英米のようなシーパワー国家が中心となり、世界連盟を作るべきだとした。

地政学という学問を捉えきれていない。地政学とは、地理から政治情勢を分析する学問。マッキンダーのハートランド理論も、「ハートランド」という地理を定義して、勢力均衡を分析しているので、確かにこの定義通りだ。地理から、その国家が中央集権的な国家を築きやすいかを考えることもあるので、つまり1カ国の分析もあるので、マッキンダーはより広範な理論を打ち立てているという差がある。

13世紀にロシアは、モンゴルの遊牧民族によって蹂躙されたことで緩衝地帯を設けなければ不安になった。国家に受け継がれる記憶。

マッキンダーのハートランド理論への疑問として二つある。一つは、歴史上ハートランドを制覇した国家はいないのにも関わらず、なぜハートランドを制覇した国家は世界島を制覇すると言いきれるのか。二つ目に、なぜそこまでハートランドを重要視するのか。確かに、「デモクラシーと理想の現実」では遊牧民族(フン族)がヨーロッパへ進撃したことで、ガリア地方のフランク人やゴート族は団結して闘い団結したことや、指導者アッティラがローマ法皇に謁見したことで法皇の権威が高まったこと、追われるようにアングロ族やサクソン人がブリテン島へ移り住むなど大きな影響を与えていることは分かるが、ハートランドの中軸地帯はステップ地帯で土地は乾燥し、農業に適さなかったことで定住社会を築かず、したがってこの地を本拠として国家も生まれていない。そのような土地が重要だとする根拠が薄いと感じる。

ロシアは地図が示すよりもはるかに狭い国。ロシア民族の故郷としてのロシアは、ことごとくヨーロッパの内部にある。ペトログラードからカザン、ボルゴグラード、ロストフまで、このラインの内側に1億以上のロシアの人口が住んでいる(p134)。


参考文献

ハルフォード・ジョン・マッキンダー 「デモクラシーの理想と現実」 原書房.2008


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