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枠を超えてみる

東京の山田です。

今回は、思春期長男(中1)の近況にも繋がる我が家の「ずる休み制度」について書いてみたいと思います。
きっかけとなったのは長男が小5の時でした。それまで元気だけが取り柄だった子が、ふとすると「身体がだるい・・」「熱が出そうな気がする・・」と体調不良を猛アピールしてくる時期がありました。
特に朝の登校時間にそれが始まると、とりあえず様子を見ようと学校に休みの連絡を入れます。すると「今日はずっと寝ている・・」「ゲームやテレビも見ない」と言っていたはずなのが、徐々に元気を取り戻し、「お母さん、今日のお昼は何か美味しい物が食べたいねー」「休んだけど宿題はやっておいた方がいいかなー」、まぁ、よく喋る・・。体調が悪いはずじゃないの? という言葉が何度も出そうになりました。
それでも私と過ごす時間が嬉しかったのか、ここぞとばかりに甘えてくる長男。そして当時は正社員、フルタイム勤務だった私を気遣い「仕事は大丈夫?ごめんね・・」などと言われると、こんな日があっても良いかなと思ったりもしました。そんなことが2回ほど続きました。

そして3回目・・。明らかに元気そうな長男が私の顔色を見ながら「お母さん、今日もちょっと体調悪いかも」「頭が痛くて・・関節も痛い気がする・・」。一生懸命、具合の悪そうな振りをしているのが見て取れました。
理由はともあれ、かなり必死です。そんな姿を見てふと切なくなりました。嘘をつくことに必死になってほしくはない・・。そんな風にも思った私は静かにこう言いました。
「本当に体調が悪い? 体調が悪くなくても学校を休むことはできるよ」「えっ!そうなの?」
「ひとことずる休みしたいって言えばいいじゃん」「えっ、ずる休みなんてダメでしょ?」
「でもさ、体調の悪いフリや嘘をつくのって辛くない? だったら正々堂々ずる休みで良いと思うよ」

これは、あくまでもウチの長男の性格や今までの状況を見ての提案です。そして私自身が子どもとの信頼関係を作る良い機会になるとも思ったのです。なので「なぜずる休みをしたいのか?」などの理由も一切聞きませんでした。
すると長男は次なる提案をしてきました。
「お母さん、ずる休みは何回使えるの?」
「そうだね・・何回あると良い?」「うーん、2回、いや学期ごとに1回あるといいな・・。1年に3回というのはどう?」「じゃあ、そうしようか」
長男はとても嬉しそうな顔で、あとの2回をいつにしようかと心を踊らせていました。

かつての私は学校にはちゃんと行くべき、ずる休みなどさせるべきではない・・そんな考えに支配されていた時もありました。しかしハートフルコミュニケーションを学び、親の価値観やこうあるべき・・に捉われるのではなく、少しずつでも「子どものどうしたい・・」に寄り添いたい。そう思い始めたことで私自身の肩の力も抜けていきました。
長男は私の思っている以上に繊細で素直な面を持ち、控えめながらも自分の感性や考えを大事にします。それがゆえに、他人に左右されない頑固さや融通のきかない面が出すぎると、ストレスを感じ、周囲と協調できないこともあるようです。
私としては、もう少し上手やればいいのにと思うことも多々ありました。しかしそれはあくまでも親の視点です。子どもの視点、長男自身は周囲に合わせようとか上手くやろうとは全く思っていないのです。そう気づいた時、今の長男に必要なことは私にとっての正論を振りかざすことではなく、長男の感じるストレスを受け止め、緩和させること、それだけで良いのかも・・と思えました。

しかし不思議なもので、いざずる休みができるとなると、そう簡単に使おうとしないのです(笑)。
「このくらいで使うのはもったいない・・」面白い心理だなと思いました。
結局、5年生の時に計2回、6年生になってからは何だかんだと1回も使わずに過ごしました。
こうしてできた「ずる休み制度」ですが、この頃から私自身も長男の思考をよく観察するようになった気がします。

そして中学生となり「ずる休み制度ってまだ使える?」と久々に聞いてきたのが1学期も終わりかけた頃でした。「あのさ、早退でもいいの?」「いいよ。」「サッカーのコーチから欠席はしないように言われているし、遅刻も良くないって先輩から聞いた。だったら早退でしょ!」「しかも早退って気分が良さそうだし・・」何とも相変わらずの長男の口調に私の気持ちも緩みました。正直、思春期男子にとっての中学校生活は順調なことばかりでもありません。親として頭を抱えることも多くありました。スマホアプリを巡る友だちとのトラブル、担任の先生との不協和音、成績不振・・本人も苦悩している時でした。
その中でふと「ずる休み制度」を思い出した・・そう思うと長男の小さなSOSのようにも感じました。
その日は本人の要望通りに3時間目で早退し近所の食堂で堂々とランチを楽しみました。すると自然に出てくるたくさんの弱音や愚痴・・。ある意味、私のことを信頼してくれているのだなと思うと嬉しくも思いました。

その後は、しばらく順調に頑張っていましたが、2学期も後半に入り期末考査が近づいた今日この頃、また「早退したいな・・」とため息まじりの呟きが何度となく聞こえてくるようになりました。
ここまでくると、私の気持ちもだいぶ整っています。特にここ1週間の様子を見聞きしていると、サッカーの練習試合で連日大敗が続いていること、期末対策も進まず練習後の帰宅は毎日22時過ぎ、挙句に授業中に居眠りをして         先生に注意された、それでも友だちとのゲーム付き合いはやめられない・・・。普段は比較的、マイペースで楽観的な長男ですが、ある種のメンタル面に黄色信号が灯り始めているのがわかりました。
そこで、「◯曜日なら一緒にランチすることもできるけど?」と今回は私の方から提案してみたのです。
結果はなんとも単純、「じゃあ、◯曜日に2回目のずる休みを使うわ。それまで頑張るとするか!」
と元気を取り戻し、わずかな時間ながらも苦手科目のワークを半ページ、その後、大きなおにぎりを2つ平らげて、意気揚々とサッカーの練習へと出かけて行きました。

「ずる休み制度」というと聞こえは悪いですが、時には置かれている状況を客観的に見る。そして煩わしいことからも距離を取れる現実逃避術があってもいいかな・・と今の私は思っています。
本当に思春期に入ると面倒なことも増え、親の忍耐も必要になります・・・。それでも「子どものどうしたい・・」に寄り添い、時には親が枠から超えた発想や言動で思春期男子の上手をいく、そんな親子関係を目指していけたらとも思っています。

2021年11月22日
東京都/やまだゆか
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定ハートフルコーチ


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