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寺子屋先生は見た! ❶

「忘れ物大王様」は世渡り上手!

地方の町で学習塾を運営し始めて20年ほど。自分の子と塾で関わる子ども達との年齢差を感じ始めた頃からハートフルコミュニケーションで普遍的な子育ての軸を学び続けている。
今日は保護者面談の際に必ず出てくるお悩みの一つ「忘れ物が多い」子たちについて。
結論、「忘れ物が多い子は、世渡り上手」である。
A君という子。塾の帰りにいくら声をかけても、筆箱、かさ、絵具セット、ジャンバー等々、とにかく何かしら忘れていく。学校でも忘れ物は多いらしく、お母さんのお悩みはいつも「こんなことで将来やっていけるでしょうか?」ということだ。しかし、塾での彼の様子を見ると、学年に関わらず誰とでも話をするいい兄貴分だ。年齢や男女問わず慕われ、数々の失敗も笑い話になっている。A君が「あ、鉛筆忘れた!」と言えば「貸してあげるよ~」と声が上がって事なきを得るという感じ。
しかし何より面白いのは、忘れ物をしても本人が全然気にしていないこと。本当に彼の周りには助けてくれる友人がたくさんいて、笑って許してくれる。もちろん、彼もお友達が忘れた時には自分の消しゴムをちぎって渡していたし、持ちつ持たれつということなのだ。こういう関係を構築する能力こそ「生きる力」なのだと心底思う。将来も十分安心できるタイプの子だと、私は思う。

ある日、Bちゃんが傘を忘れて帰っていた。すると彼が「俺の次は、Bが忘れんぼ王だなあ」と笑った。そういえば、先週も水筒を忘れて帰っていたっけ。後から来たお姉ちゃんが持ち帰ってくれたから目立たなかったけど、結構忘れているかも…と思いつつ、ふと見ると、塾のスタッフさんが苦笑いしていた。そう、なんとA君もまた上着を忘れて帰っていた。雨が降ってお母さんが車でお迎えに来てくれたから、上着は要らなかったんだね…。そういえば、Bちゃんも車でお迎えだった。ははは…。
そう、彼らは無意識に自分の周囲を上手に動かす能力を持っているのだ。天晴れ!
現場からは以上です。
渡辺寿子
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定コーチ


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