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「あなたは素晴らしい人間だ」と言える人事になりたい――知っていてほしい”詐欺師症候群”の話

 こんにちは、HeaR株式会社で人事をやっています、Ayanaです。先日こんなツイートをしました。

 これがなかなか反響がありました。「自分もそうだ」とか「家族がそうかもしれないなら知っておきたい」とか。多くの反応をもらい、ちゃんと記事にしてみようと決心がつきました。何を隠そう、私自身がこの「詐欺師症候群」というジレンマに長い間悩まされていたからです

 私は人事として、人に関わったり組織を作り上げる仕事をしています。性質上、人の働きを評価することも、評価されることも非常に多いです。私自身が人事として働くことに覚悟を決められたのは、むしろ自分への自信のなさや不安感のおかげだった気がします。

 少しでも多くの、”自分に自信がなくて、不安な人”が救われたらいいな、という気持ちでキーボードを叩きます。


そもそも「詐欺師症候群」って何?

 Twitterでも軽く触れましたが、詐欺師症候群(別名インポスター症候群)は、「自分は周りが思うほど優秀ではないにもかかわらず、あたかも優秀であるかのように振る舞い騙している」と感じてしまう心理的ジレンマのことです。一言で言えば、「自分の価値を自分で認められなくなった状態」です。

 症候群、という名前がついていますが、精神障害に認定されているわけではありません。エマ・ワトソンが詐欺師症候群を告白して一躍話題になりましたが、日本での知名度はまだそこまでという印象です。

 詐欺師症候群に陥ると、一般的にこのような思考になってしまうと言われています。

・完璧主義的な傾向になりやすい
・失敗を恐れる
・極端に謙虚で、自分の価値を認められない
・昇進や成功を、「たまたまだ」「自分が〇〇(女性だから/運が良かったからなど)だからだ」と考えてしまう
・自分自身が「他者を騙している」と考えるようになる
・自分が他者よりも楽している気がする

 軽度なものも含めると、おおよそ7割の人がこの感情を経験します(特に女性、日本人には多いと言われています)。


真面目な人が苦しむなんて、悔しいじゃないか。


 先ほども言いましたが、詐欺師症候群的傾向を経験する人は7割ほどいるといわれていて、決して珍しいことではありません。でも、真面目で勤勉で謙虚な人が、こういうジレンマに陥って苦しむなんて、そんなの悔しい。初めて詐欺師症候群というものを知った時に、本当にそう思いました。

 想像に難くないとはおもいますが、この心理状態に陥る人は大抵、事実として周りから評価されており、本人もそのための努力を重ねています。でも、こころの内側ではいつも怖いんです。

「本当は何もできないのに、たまたまできてしまったから」

「こんなに評価されるなんて怖い、怖い、どうしよう」

 そう思いながら働くのは、どれだけ辛くて苦しく孤独なことでしょうか。

 詐欺師症候群の心理状態から脱するためには、「同じような思考に陥ったことがある人たちと、キャリアの早い段階から話す機会を持つこと」が有効だとされているそうです。


信頼できる人とともに働き、適切に評価されること

 例えば、お医者さんやカウンセラーみたいに、「詐欺師症候群」に陥った人たちを助けることは私にはできないと思います。勉強しているわけでもないし、資格もない。「治せますよ」と話すことの方が不遜です。

 でも、私は人事の仕事を通して、そういうジレンマで苦しんでいる人たちが自信を持って仕事をして行ける場がつくれたらいいな、と思っています。私にとって、”強い組織を作る”というのはそういうことです。誰1人、心を壊さず打ちひしがれず、何かあった時に支えあうことのできるプロのチーム。それが強い組織です。

・詐欺師症候群の心理状態を経験した人間として、不安を抱えている人と話をすること(社内人事)
信頼できる人間で構成された質の高い人間関係のチームを採用を通して作ること(採用人事)
平等で、納得感のある評価制度をつくること(評価制度設計)

 信頼できる人とともに働くこと。そして納得感を持った評価を受けること。不安を抱えずに済む環境を作ること。7割の人が経験するこの不安は、環境によって解決できることも多いのではないかと仮説を立てています。

 人事として仕事をするからには、この三つを成し遂げたいと思っています。そして、人事としての責任を果たした上でまっすぐこう言いたいのです。

「大丈夫です、あなたは本当に価値のある、素晴らしい人です。これからも一緒に頑張りましょう」


・・・

かくいう私も、実は大学生くらいの頃から口癖のようにいっていました。

私は今、周りを騙して不当に高い評価を得ている。いつかみんな、私の正体に気づくでしょう。だからいつかその差額を、ツケとして払わなくちゃいけない時が必ずやってくる」。

 私が最初に詐欺師症候群的な心理状態に陥り苦しんでから、もう5年ほど経過します。いまだに、何かで評価された時にどうしようもない不安感に襲われたり、何かがうまくいっている時に限って逃げ出したくなります。あるいは、完璧に何かことが進まない時に眠れなくなったり……、ただ、昔に比べてうまく付き合うことはできるようになってきました。

 やはり、個人的に小さな成功体験を積み重ねていったり、信頼できる周りの人から評価されることによって緩和されてきたのだと思います。ただ、今まで会社には「自分は本当はダメなのに……」と相談できる人はいませんでした。だからこそ、誰かにとって私が適切な相談相手になりたいし、不安にさせないような組織を作りたいのです。

 まだまだ勉強が足りないことも多いですが、私自身が胸を張れるように、これからも人事として邁進します。

▼私の所属するHeaR株式会社。採用支援やCXコンサルの相談も受け付けています。

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