Kento Hirai (Healthy Lawyer)

弁護士(登録抹消中)、NY州弁護士。米国法律事務所にて研修中。今年の目標はマラソンでの…

Kento Hirai (Healthy Lawyer)

弁護士(登録抹消中)、NY州弁護士。米国法律事務所にて研修中。今年の目標はマラソンでの自己ベスト更新(3/17達成!)とワインエキスパート合格。ジョージタウン大学でHealth Law LLMを専攻した経験等から、(備忘も兼ねて)米国のヘルスケアに関する法制度等を紹介します。

最近の記事

実体験からみる米国医療保険のシステム

1. はじめに今回の投稿は、これまでとは趣向を変えて、私が実際に体験した歯科治療の経験を基に、米国の医療保険システムを紹介します。私自身、この経験があったおかげで、米国の医療保険をよりリアルに理解できるようになりましたので、いつかnoteで共有したいと考えていました。(後で金額も書きますが、文字どおり「高い勉強代」でした。) なお、この後に登場する医療保険に関する用語は、日本テキサス医学振興会(JMTX)という日本人医師の方々によるNPO団体のウェブサイトにある記事(ht

    • General Compliance Program Guidance~米国ヘルスケア業界のコンプライアンスプログラム~

      1. General Compliance Program GuidanceとはGeneral Compliance Program Guidance(GCPG)[1]とは、2023年11月にHHS(保健福祉省)のOffice of Inspector General(OIG、監察総監室)が公表した、ヘルスケア分野のコンプライアンスコミュニティおよびその他の関係者向けのリファレンスガイドです。GCPGでは、関連する連邦法[2]、コンプライアンスプログラムの7つの要素、OIG

      • Healthcare Fraud and Abuse Laws②~各論(Anti-Kickback Statute, Physician Self-Referral Law, Exclusion Authorities, Civil Monetary Penalties Law)~

        ※本投稿は「Healthcare Fraud and Abuse Laws①~総論、各論(False Claims Act)~」の続きです。 3. Anti-Kickback Statute(AKS)[1]概要 Anti-Kickback Statute(AKS、反キックバック法)は1972年に社会保障法改正(Social Security Amendments of 1972)の一部として制定されました。その後、数度の改正により規制対象が拡張されるなどして現在の形とな

        • Healthcare Fraud and Abuse Laws①~総論、各論(False Claims Act)~

          1. Healthcare Fraud and Abuseとは米国では、公的保険に対する不正請求等(例えば、医療機関が実際には実施していない検査を実施したかに見せかけて保険償還を請求するといった行為)は常に大きな問題とされています。DOJ(司法省)によれば、1000億ドル以上の金額が毎年不正請求によって失われているそうです[1]。このように社会的なインパクトの大きな問題であるためか、この分野は「Healthcare Fraud and Abuse」といった名称で弁護士の一専

        実体験からみる米国医療保険のシステム

          Inflation Reduction Act(インフレ抑制法)①~薬価交渉プログラム~

          1. Inflation Reduction ActとはInflation Reduction Act(IRA、インフレ抑制法)は、2022年8月にバイデン政権下で成立した比較的新しい法律で、気候変動対策の法律としても知られるものですが[1]、処方薬の薬価に関する改革もその内容に含んでおり、中には製薬業界に大きなインパクトを与える新プログラムの創設も含まれます。 処方薬の薬価に関する改革は、具体的には、 Part 1:Lowering Prices Through Dr

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          米国の公的保険制度~Medicare、Medicaidとは?~

          1. 米国の公的保険制度日本と米国の保険制度の最大の違いは、国民皆保険制度の有無にあると思います。米国では、国民皆保険制度は採用されておらず、勤務先から民間の保険に加入している人が多いため、日本人にとって米国の公的保険制度はあまりイメージのつかないものかもしれません。しかし、2021年の統計によれば、米国民の35.7%は何らかの公的保険に加入しています[1]。すなわち、国民の3分の1以上が公的保険に加入しているということになり、公的保険制度に関する法規制は、ヘルスケア業界に

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          はじめに(「Healthy Lawyer」に込めた意味)

          弁護士(登録抹消中)の平井と申します。私は、製薬企業のインハウス弁護士、企業法務系法律事務所のアソシエイトの経験を経て、2022年7月から約1年間米国ワシントンDCにあるジョージタウン大学で主にHealth Lawを勉強しました。2024年2月現在も引き続きワシントンDCにとどまり現地の法律事務所にて研修をしており、本年7月頃に帰国予定です。(日本が恋しい…!) 米国に来てからの1年半で米国のヘルスケアに関する法制度を多く学んできましたので、記憶の新しいうちに整理しておこう

          はじめに(「Healthy Lawyer」に込めた意味)