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「リハビリで良い病院」を選ぶための6項目

この業界に長くなると、知り合いから「リハビリで良い病院知らない?」と聞かれる事があります。

この質問への回答は非常に難しい。

理由は「良い病院の定義が不明瞭」であるとことと、有名な先生が居ても「その人が担当する確率は非常に低い」ことがあるからです。

一般的に、病院は大きく分けると

①「ケガ・病気をした直後」に入院する急性期病院
②「ケガ・病気の症状が安定してガンガンリハビリする」回復期病院
③「ケガ・病気の影響ですぐに退院できない方の」療養型病院

の3つに分られます。

質問をされる時には、特に②「ケガ・病気の症状が安定してガンガンリハビリする」回復期病院へ転院するタイミングで「良い病院はどこ?」の質問を受けます。

就業している地域と入院を探している地域が離れすぎてしまうと、セラピスト間の噂レベルのたわ言が聞こえてこないこともあり、さらに難解へなってしまうケースもあります

今回の記事はある設定を作ってみようと思います。

設定:もしも、私の父が患者になったら

ケース:もし、家族旅行で訪れた地域で父親が崖から足を滑らせて脳を損傷。入院を余儀なくされ、すぐには帰れない。母も病弱で介護出来ず、リハビリしてから退院してもらうしかない。急性期症状は落ち着いてきて、積極的にガンガンリハビリ出来るようになってきたので、回復期病院への転院を提案された。
さぁどうする?

となった時に、わたしはどのように行動するだろうか?とイメージを持って書きます。

大きく、6つの大項目を挙げてみました。
手順としても、この項目を確認・比較して列挙するとメリット・デメリットの天秤となりますが、何も情報を集められないよりは決定因子が増えます。

①ケースワーカー/ソーシャルワーカーにおすすめ病院を聞く

まず、手順として最もシンプル。病院には転院や退院をお手伝いするケースワーカーという人が居ます。ソーシャルワーカーというのは社会福祉士という国家資格を持っている人ですが、まれにケースワーカーという名称を用いているため、混同して書いてます。

各病院、父のような脳損傷の患者さんの転院で「実績」という過去データを持ってます。「○○病院への転院が多いです」という感じで何個か提案をしてくれます。

まずは選べる選択肢の具体的施設をテーブルに乗せてしまいましょう。

それ以外の病院などへの転院となると、インターネットで調べたり、口コミサイトを使う事になりますがケースワーカーさんも人間です。過去実績が無い病院への転院は手続きを1から確認する事になりますので、少し否定的なニュアンスを話されることもあるようです。そこは忍耐しましょう。

②理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の就業人数を確認する

ここは重要な項目です。リハビリテーションガイドラインという「リハビリはこうやったら効果が出ますよ」という資料があります。その資料ではPT・OT・STの職種が介入すると機能が向上しやすい、というデータです。

当たり前といえばそこで終わりですが、3つの職種が介入した方が、基本動作、応用動作、言語機能を高める事が出来ます。

そのため、病床数(入院できる患者人数)に対して、リハビリセラピストがどれだけ就業しているのか?を確認しましょう。

セラピスト数は病院のパワーです。数の暴力です。

私が回復期に居た時には、セラピストの数が足りておらず、PTOTSTを併せて100分出来れば上出来でした。

考えてみてください。これだけで、半分強程度しか受けれる医療を受けられなかったとも言い換える事が出来ます(私が勤めていた病院では教育がしっかりしており、時間ではなく質勝負をしていました)。

もちろん、リハビリ時間が増えるとその分、入院加療費用も増しますが、そこは父が回復することを願ってケチりません。

③365日リハビリ(毎日リハビリ)を実施しているか確認する

現在、回復期として医療サービスを提供している病院では365日リハビリを採用していない場所は少ないです。

病院も商売であるため、取れる料金は全て取ろうとしますし、リハビリをじっくり出来るのが回復期の特徴になります。

ほとんどの病院が365日リハをしているでしょうが、一応確認してみましょう。毎日リハビリするのは父にとって苦痛でしょうが、日々精進なくして光を望むことは出来ない、と口酸っぱく勇気づけます。

④リハビリの時間は1日で平均、何時間できるのかを確認する

回復期リハビリの1日の上限時間は180分(3時間)です。

20分を1単位として9単位実施することが出来ます。

以下のサイトではその時間について細かく伝えてくれてます。

細かく時間データを保有していない可能性もありますが、概算でPT60分、OT60分、ST40分など、具体的な提供時間を確認しましょう。

これはセラピスト人数と相関しますが、管理職が全く現場に出ていないケースや名前だけ列挙されてる、なんていうなんちゃってケースもありますので、人数に乗じて提供時間も聞いちゃいましょう。

⑤教育に力を入れているかどうか、論文をインターネットで確認する

先述しましたが、セラピストでも業界で名前の売れている先生がいます。

しかし、病院の特性上、新人セラピストと有名セラピスト、どちらから治療を受けていても病院への利益はビタ一文変わりません。

そのため、わたしの父がどれだけわたしにとって特別であっても、有名な先生から逆指名で治療を享受できることはありません。

特に、名前が売れている先生であればあるほど、管理職に就いている事が多く、現場での治療時間が極端に少なかったり、皆無だったりする事があります。

そのため、「臨床教育」に注目しましょう。

有名な先生が居れば、新人教育が活発になる可能性が高まり、リハビリサービスとして、臨床経験が少なくとも、頼れるセラピストが多い可能性が高まります。

細かい記載になりますが、もし、その病院が地域でも有数のリハビリ有名病院、マンモス病院であったとしても、数の暴力をふるうだけの搾取病院である可能性を否定できない事があります。

そんな不安がある場合は調べちゃいましょう。

「○○○県理学療法士協会 ○○○○病院 学会」

もしくは

「東北・中部などの地域 ○○○○病院 学会」

で検索してください。

コロナウィルスの影響、昨今の潮流により、論文がPDFで大量に出てきます。

もし、検索をかけている病院の過去5年で発表が1つも無かった場合、教育に力を入れていると言われても納得できません。

学会発表はセラピストにとって非常に圧力のかかる作業です。だって、プロに仕事を発表するのですから。

しかし、その圧力によってセラピストは成長し、論文を読めるようになります。

時に病院で就業しながら大学院に通っているセラピストという猪突猛進セラピストもいます。しかし、大学名を使って発表されていれば、臨床研究の要素は無くなり、病院が教育に力を入れているというポイントになりません。

加えて、学会は主として論文を作成した筆頭筆者と共同筆者という「サポートした同志」という連名機能があります。非常に圧力がかかる作業の中で、もし、共同筆者が無ければ、アドバイスをする同僚が居ないという事も言えるかもしれません。ちょっぴり寂しい職場と言えるでしょう。

よって、インターネット検索で臨床教育が活発に行われているかどうかは確認する事が出来ます。

⑥退院前の対応を確認する

退院前には「退院前訪問指導」というサポートがあります。

家へ実際に担当セラピストが訪問し、退院するために必要な環境を整える必要があります。

ほとんどの病院は実施していると予測されますが、この新型コロナウィルス感染拡大で実施していない病院もあるようです。

サポート内容は退院前にその場で、手すりを付ける場所・高さや、今まで取り組めて無かったが、新しく取り組まないといけない項目をピックアップします。

私の父の場合は旅行先ですので、家まで来て、リハビリ成果を確認するなんでおこがましい事は要求しません。ただ、家の環境は伝えましょう。

家の環境については回復期セラピストであればガンガン聞かれる必須項目です。

お風呂の浴槽の高さは?玄関の段差は?階段は何段?など、退院するためには環境因子となる自宅の特徴を掴む事によって、円滑に退院するのを可能にします。

これにより、退院時を常にイメージしながら取り組んでくれる病院なのかどうかを確認する事ができます。

終わりに

設定を通じて、どのような着眼点で病院を選ぼうとするのか?を書きました。

あくまで、さっとんとしての視点でありますが、インターネット検索で論文を探してみる項目については、お医者さんを選ぶ時にも使える手段です。

一般の方が論文の内容について吟味するのは難しいと思いますが、発表しているというだけでも、論文が査読され、一定の信頼性が確保されてなければ世に出す事は困難です。

そのため、一つの指標として用いる事に現実味があると自負しています。

リハビリというのは「活動の医学」といわれますが、良いセラピストさえ担当になれば効果が上がるという単純明快なシステムでは無いという事も併せて伝えたいと思います。

ただ、やっぱり「良い」と納得して回復期病院を選ぶ事が何よりの安心材料であることは間違いないでしょう。

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