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新型コロナ対策とクラスター対策

新型コロナウイルス感染症の患者数は全国的に増加傾向にあります。専門家会議からも、「今のところ諸外国のような、オーバーシュート(爆発的患者急増)は見られていない」という状況分析がありましたが、今後も予断を許さない状況が続いています。近況について詳しくは、専門家会議による「状況分析・提言」をご覧ください。

現在の新型コロナウイルスのまん延防止対策として行われているのは「クラスター対策」です。このクラスター対策の考え方を簡単に解説したいと思います。

1. クラスター(集団感染)対策の基本的考え方

なぜクラスター(集団感染)を対策の標的としているのか?それは、集団感染(クラスター)が、新型コロナの感染を拡大している主要な原因と考えているからです。

初期の国内の感染者の調査で、8割の感染者は、他に誰にもうつしていないことがわかりました。一方で、わずかな人たちが5人以上の新たな感染者を生み出していること、それによって流行が継続していることがみてとれました(下図)。

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厚労省 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)より

これから推測されることは、
・感染者を見つけたときには、同じ感染源からの感染者がほかにも多数いる可能性がある(簡単にいうと「感染者のカタマリがいるはず!」)
・その感染者集団から、さらなる感染の連鎖を生み出さないよう対策をとることで流行が制御できる可能性がある
ということです。

そのため、クラスター対策は、
・集団感染の特定 (感染源の追跡)
・集団感染の連鎖の防止(接触者追跡)
・集団感染の発生の防止(3密を避ける呼びかけ)

主な3要素として実施しています。この取り組みで大事になるのは、保健所が行う「積極的疫学調査」です。

2.  積極的疫学調査とは

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感染者が報告されると、「積極的疫学調査」と呼ばれる調査を保健所が実施します。この積極的疫学調査では、行動調査接触者調査を行います。

行動調査:感染者の発症前14日間の行動について聞き取り調査を行い、集団感染が起きた可能性がある場所を明らかにする 
→集団感染が起きた場に居た方を中心に検査や調査を行い、感染の連鎖を防ぐ

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新型コロナ感染症は、無症状や医療機関にかかるほどではない軽症の方も多いことから見つけ出すことは容易ではありませんが、クラスターを追うことで効率よくリスクの高い方を見つけ、検査を行い、感染者を発見することができます。
接触者調査:主に発症後の行動について患者に聞き取り調査を行い、濃厚接触者を洗い出す。→濃厚接触者に対して外出の自粛や感染予防策の徹底により感染の連鎖(特に集団感染の連鎖)を防ぐ

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3. クラスターの発生を防ぐには

また、
・集団感染が起きた可能性がある場所を特定することで、集団感染が起こりやすい因子を特定し、そのような場を避けるよう市民に呼びかける
ことも重要な取り組みです。それによって、次の大きな集団感染が起こるリスクを避けられます。

集団感染の場を明らかにする調査の中で、そのような集団感染が起きる場の特徴がわかってきました。集団感染が起きた場として明らかになった船、スポーツジム、飲食店、ライブハウスなどの共通項は、「密閉され、密集し、密接する空間」いわゆる「3密」と呼ばれる場です。そのような場を意識して避ける、あるいはそのような場を作らないようにすることで、仮にそのようなところに感染者が入っても集団感染の発生が予防できると考えて、対策が呼びかけられているところです。最近では、この3要素が重ならなくとも、接客を伴う飲食店などで感染が拡大している事例も明らかになっており、知事などが注意を呼びかけているところです。

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4. クラスターは悪いもの?

感染源を追う作業は、流行動態を知る上でも非常に重要です。感染リンクが追えて、集団感染(クラスター)と言えるものが明らかになる状況は良い状況であり、この流行が制御下にあることを示します。一方で、感染リンクが全くわからなくない感染者が増えてきて、感染源がよく分からない感染者ばかりになってくると、これは水面下で見えない流行連鎖が起きていることを示唆します。これがいわゆる地域感染という状態です。

地域感染が一定程度進行すると、爆発的な感染者の増加という現象が起きるリスクが高くなります。このような状態では、クラスター対策だけでの流行の制御は極めて難しくなってきて、社会におけるヒトとヒトとの接触機会を制限するよう外出の自粛など(社会的隔離)を呼びかける必要があります。そのような対策が功を奏して、またクラスター対策に専念できるような状況に戻せれば良いのですが、うまくいかなければ、被害を最小限に留めるために、外出制限やいわゆる都市封鎖(ロックダウン)といった対策を考える必要が出てきます。

5. まとめ

執筆時点(4/3)で日本では、クラスター対策に加えて、学校休校の呼びかけや週末等の外出自粛要請などにより、感染者の爆発的な増加をみる段階には至らずにいるところですが、一方で、感染者数が継続的に増加傾向にあることも事実です。非常に我慢が強いられる日々が続きますが、社会が一致団結して、爆発的な感染者の増加やそれによる医療崩壊を起こすことなく、この流行を乗り切れることを望んでいます。