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【33円セールの次にお勧めしたい】ニンジャスレイヤーの素晴らしい敵役たち

ニンジャスレイヤーと言えば、数々のネットミームの元となったケレン味の効いた奇抜な文体と、決断的な主人公の性格が有名で、代表的なイメージと言えるだろう。実際、「アイエエエ!ニンジャナンデ!?」といったミームはネットの日常語の片隅を占め、ニンジャスレイヤー=サンはTRPGプレイヤーの間でも動かしやすいと評判で、最近のセールにちなんだクロスオーバー二次創作でも多くのファンが納得する決断的フジキドの姿が描かれていた。

ニンジャスレイヤーは敵役がスゴイ

忍殺文体も、ニンジャスレイヤー=サンを動かすのも、真似しやすく、そして楽しい。しかしながら、長年この作品を楽しみ、何度も二次創作を作ってきた身として、容易に真似できない作者の技巧も数多く思い浮かべることができる。

その中の一つが、敵役作りの上手さである。シリーズ通算で1000人を超える敵ニンジャが登場するこの作品には、ライバル、ボス、卑怯な敵、格好いい敵、将来仲間になる敵、その他ありとあらゆる敵がいる。そういった敵の中でも特に素晴らしいと思うのが憎たらしい敵だ。

この作品には要所要所で「出てくるな!」「帰ってくれ!」「なんとかして!」となる本当に憎たらしい敵が出てくる。そういう敵だからこそ、ニンジャスレイヤー=サンの決断的な逆襲で大きなカタルシスを得ることができる。そしてこの作品はこの憎たらしい敵を作るのがとても上手く、33円セールの範囲を読み終わった次のエピソードとして、この憎たらしい敵を体感してほしいと願い、2つのエピソードを推薦したい。


漫画版第2部「ザ・マン・フー・カムズ・トゥ・スラム・ザ・リジグネイション」

33円セール対象の余湖・田畑作の漫画には、続編となる「キョート・ヘル・オン・アース」が現在も連載中である。そして今まさに連載中、今月号で描かれているのがこのエピソードである。この話では2つのイクサが並行して描かれ、その両方の敵が個性的な憎たらしさを醸し出している。

一人目はメンタリストだ。このニンジャは圧倒的な強さをもって主人公陣営をいびり倒す。どう反抗しても通用せず、こちらの全力の攻撃を余裕綽々で受け流し、見下してきて、全員を殺そうとする。恐怖の象徴であり、小説連載当時の実況ログでは出てくるたびに悲鳴が上がるようになる、実に敵らしい敵役である。その結末についてはぜひ連載を読んでいただきたい。

もう一人はチェインボルトである。こちらは戦いの強さではなく、ネンコ(年功序列)で主人公陣営をいびり倒す。戯画化されたキャラクターでありコメディがかっているが、このエピソードのみの登場のワンポイントキャラであるにも関わらず、素早く個性を確立して読者にフラストレーションを貯めさせ(後に大きなカタルシスを与え)てくれる、こちらもまた素晴らしい敵役である。

連載をリアルタイムで読むのも良し、単行本では第14巻に収録されると思われるので、楽しんでいただけたらと思う。


「アルパイン・サンクチュアリ」

もう一つ、小説版第三部からnoteで無料公開されている「アルパイン・サンクチュアリ」も推薦したい。このエピソードは大長編の中の一つだが、単独の短編エピソードとしても読むこともできる。

このエピソードはニンジャスレイヤーのエピソード群の中でも特に短くサラっと読むことができるが、敵役のフローズンはヘイト溜めのタイムアタックに挑むがごとくあっという間に憎たらしさを高めていき、A4数枚分の短さなのに読者から「コロセー!」「コロセー!」の大合唱が起きるまでになる。小説版を初体験するにあたってぜひお勧めしたいエピソードである。


特筆すべき憎たらしい敵たち

こういった憎たらしい敵はまだまだいる。第三部では、大長編の途中にメフィストフェレスというニンジャが登場するが、その名に恥じず、「フジキド、早くこいつを殺して!」という叫びと共に「こいつと契約して利用しよう」という声も出る悪魔のようなキャラクター性を見せた。フジキド以外が視点キャラになる回のサーガタナスもまた憎たらしさ満点である。

主人公が代替わりしたAoM編ではケイトー・ニンジャがまた素晴らしい働きをし、登場するごとに「帰って!」「コロセー!」の大合唱となる憎たらしさと、また見たいと思わせる憎めなさを兼ね備えた真似したいと思っても真似できない敵役である。


長く読んできて忍殺語やフジキドのエミュレーションに少しは自信のある自分でも、憎たらしい敵作りだけは全く真似できる気がしない。私としては、33円セールの次に、この憎たらしい敵たちと対峙する読書体験を是非お勧めしたい。

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