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ちいかわ世界の言語と〈異世界転生者〉
しゃべる/しゃべらないキャラクター
ちいかわの登場人物はしゃべるキャラクターとそうでないキャラクターにはっきり分かれている。主人公組ではハチワレだけがしゃべってちいかわとウサギは意味のない間投詞がほとんどである。識別済みキャラではモモンガ、ラッコ、シーサーはしゃべるが、栗まんじゅうはしゃべらない。この傾向は怪異でも同じであり、元祖キメラや魔女/山姥は会話が成立する一方、あのこやカブトムシのように鳴き声だけでしゃべらない怪異もいる。
言ってることは分かるし読み書きもできる
しゃべらないキャラクターも、言語を理解していないわけではない。ちいかわは「うん」や「え」しか言わないもののハチワレの言っていることは理解していて会話が成立している。草むしり検定があるように本を読んで勉強することは一般的であるし、ちいかわも英語の筆記体の練習をしているので読み書き両方できると考えてよいだろう。
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) October 4, 2022
この特徴は主人公以外でも同じであり、ゴブリンは意味のある発話をなさないが「煮る」「焼く」というパネルを示すことで言語コミュニケーションを取ろうとしている。ゴブリンは会話のできるオデを「用心棒」にしているので、ゴブリンには用心棒概念があって言語コミュニケーションが可能と見ていいだろう。なおオデはその顛末を手紙にしたためており、ちいかわもそれを読んでいる。
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) November 8, 2021
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) November 17, 2021
しゃべるちいかわとウサギ
ちいかわは意味のあるセリフが稀で、「わーッ」「エ」「フ」などの間投詞が大半を占める。怪異に遭遇したときに「ヤダ」「イヤ」と叫んでいるのが数少ない意味のあるセリフと考えてよいだろう。また、ハチワレの言っていることの意味は分かっていないが音声的な復唱だけはできるというシーンも出てくる。
ウサギは「ヤハ」「ウラ」「プルャ」などのセリフしかないので、そこから「ヤハウサギ」などとも呼ばれているが、旅行先に関して「ツツウラウラ」と答えるなど言葉をしゃべるような場面もある。つまり積極的にしゃべっていないだけでしゃべること自体は可能だと推測される。
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) November 7, 2022
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) August 4, 2022
ちいかわは手話かテレパシーを使っている?
山姥編の終わりでは、ちいかわの吹き出しの中が絵で表現されており、それをハチワレが「洗い物とそうじ」と言語化しているシーンがある。ちいかわは日本語で表現できないが意思を伝えるコミュニケーション手段を持っているとみていいだろう。
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) October 1, 2022
この「絵で表されたセリフ」が何なのかは謎だが、手を激しく動かす描写があるので、ジェスチャーまたは手話として解釈するのが自然だろうか。それ以外にも、人間の子供に近い設定がされていることから幼児語のようなものと解釈するか、ファンタジー方向に振ればちいかわ族固有言語か、何らかのテレパシーである可能性もある。
端的に言えば、ちいかわやうさぎがしゃべらないのは、音声言語以外のコミュニケーション手段を取るのが普通でしゃべる必要がないからであり、日本語や英語として表現されている言語は記録用として用いられているのではないだろうかと想定される。
対話用の手話と記録用の文字言語が異なる体系であるのは手話話者の間では一般的である(例えば日本語手話では"てにをは"を置かない文法構築をする)し、そもそも文語と口語、音声言語と記録言語が異なるのは、中国の漢文そのものにしろ、あるいは学術言語が漢文/ラテン語/正則アラビア語であった多くの文化圏では当たり前のことであり、ちいかわ世界もある種のダイグロシアの状況にあるのではなかろうか。
〈外の知識〉を持つハチワレと持たないちいかわ
主人公3人組の間では、単にしゃべるか否か以外にも、ハチワレの単語に対してちいかわが何か理解しておらず音声だけ復唱するシーンがしばしば出てくる。下に挙げた「アザラン」「ロイヤルミルクティー」「スポーツ刈り」のほか、しゃべる例として挙げた「軸汁=ジクジル」についてもそうである。
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) October 24, 2021
— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) May 6, 2022
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— ちいかわ💫アニメ金曜 (@ngnchiikawa) October 8, 2022
この中でも特に「スポーツ刈り」は特異的で、ヒトではない動物がベースになっているちいかわ族にとって、髪の毛や髪型といった概念は自然発生しえないものである。つまりこの概念は外部から持ち込まれたものである可能性が高く、おそらくロイヤルミルクティーなどについても同様だろう。
おそらくだが、ちいかわ世界にはちいかわなどの原住民とハチワレなど外部――というより我々のこの現実世界からからやってきた異邦人がいて、互いに意識することなく共存している。おそらくだが、しゃべるキャラクターが異邦人であり、しゃべらないキャラクターが原住民である。
まあ、異邦人が本当に外部からやってきたのか(鎧さんなどから知識だけ注入された可能性もある)は確定していないし、あるいは外部からやってきたとしてその方法などは明示されていない。VR世界という設定かもしれないし、いわゆる異世界転生設定かもしれない。ただ、いずれにしてもちいかわという漫画の作品性を考えれば、それらは作者が裏設定として持っていたとしても明白に描かれることはないだろう。
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