「日本版MMT」と「MMT」との間の断絶 その1

まずはこのツイートを見てもらいたい.

このツイートでは, 「令和初の政治経済評論家」を自称する池戸万作が, 財政リフレ=京都学派=日本版MMT, という謎の等式を宣言したことと, そのくせに, MMTそのものを曲解し, その責任を自称MMTerに押し付けるが如きツイートをし, 挙げ句の果てに「NEEDSの計量シミュレーションに基づく, 経済政策を訴える」などという, 評論家として失格な態度をとっていることが見て取れよう.

日本版MMTなるものを生み出した, 及び名付けた張本人である池戸万作の言説を観察することによって, 池戸万作が生み出した「日本版MMT」なるものが「MMT」から乖離したものであるばかりか, いかにゲテモノであるかを少しばかり書いていくことにする. もっとも池戸万作のデマゴーグぶりは凄まじいものがあり, 一つの記事で書き切れる量ではないから, この記事は連載という形になるであろう.

1 「デフレ脱却」というカルトに囚われた池戸万作

以下の池戸万作のツイートを観察しよう.

この3つのツイートから観察できることは, デフレというものは絶対悪であるということ, デフレ脱却を目標として掲げなければならないということ, そして, デフレのままでは国民が貧窮化するということを, 池戸万作が信じているということである. そして次のようなツイートを行っているのである.

このデータを根拠にして, 池戸さんはインフレ率2%目標を達成するために, 一人当たり毎月10万円給付という政策を肯定するのである.

さらにこのデータを引用したツイートに「財源は国債発行です」という一文が見出されるのであるが, これが既に「日本版MMT」なのであって「MMT」ではないのだ. どういうことかを簡単に述べれば, 「MMT」は次のことを主張するからである.

「そもそも, 租税を納めるための通貨や国債を購入するための通貨を, 政府が先んじて発行してくれなければ, 我々は租税を納めたり国債を購入したりすることができない」

つまり, 租税や国債発行が政府支出の財源なのではなくて, 政府支出こそが租税や国債発行の財源であるというのが「MMT」の言わんとするところなのである. 従って, 「財源は国債発行です」などということを述べている時点で, 池戸万作が「MMT」をろくに理解していないことがわかってしまうのである.

まあ, こんなことを平然と言えてしまうような「評論家」が池戸万作なわけだから, なんというか, 「MMT」を理解せよ, と池戸万作にいうほうが可哀想になってくるくらいなのではあるが...

それから, デフレを絶対悪とする池戸万作の思考は, MMTからは即座に導かれるものではない. 正確に言えば, デフレ脱却を目標にするという池戸万作の思考が, MMTの思考とは全く異なるものなのだ. MMTの思考で目標とするものは, あえて経済用語を用いれば「インフレなき完全雇用は, 政府がなすべき当然の義務である」という目標であり, もう少し直裁的な表現を用いれば「生活所得の保証」という目標である.

2 詭弁を弄する池戸万作

この二つのツイートを見比べてもらいたい.

この二つのツイートは不思議なことになっている. というのも, 片方で「日本版MMT」というものを生み出したのは池戸万作であるということを, 池戸万作本人が述べているのにもかかわらず, 日本版MMTと本家MMTとが全く異なることを指摘するツイートに対しては, 「別に私が悪印象を定着しているのではなく」などとのたまうのである.

全く, 評論家という職業を何だと思っているのだろうか, 池戸万作は!仕事というものを舐めすぎである. 評論家を自称するならば, 評論対象の正確な把握をすることに努める必要があるということくらいは理解して欲しいものだ. 池戸万作のせいで, 評論家という職業に対する風評被害が広がっていると思うと, 残念な気持ちを抱かざるを得ないのが, この記事の執筆者の率直な思いである.

3 終わりに

今回はこれくらいにしておこうと思う. まあ, 池戸万作を評論するという形で, 「日本版MMT」と「MMT」との断絶を書いていこうという, この記事の連載企画であるが, 評論対象は何も池戸万作に限定されない. 藤井聡や三橋貴明, シェイブテイルや朴勝俊などもこの連載企画の評論対象となるだろう.

この連載を書くために必要となるものを私は集めたいと思うのであるが, もし読者の皆様で協力したいという方がいてくだされば, 「これはどう思いますか?」と思うツイートなり, 文章なりを, この記事のコメントにどんどん書いて欲しいと思う. もちろんこれは強制するものではないし, 私は私で可能な限り調べを行うつもりである.

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