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誰かさんと誰かさんが

私が住む町はかなり田舎である。

休日の駅前は見事なほど閑散としているし、
駅前に唯一あるコンビニは今どき珍しく
夜には閉まり、日曜日は営業していない。

駅前でもそんな状況なので
少し行けば田舎景色には事欠かない。

枝豆やジャガイモなどが植えられているのも
しばしば見るが、植えられているのはやはり米が多く
夏ごろにになると青々とした稲穂のじゅうたんが
一面にまぶしく光る景色をよく目にする。

この町に住み始めて10年と少しになるが、
今となってはこの緑を見ると
「夏が来たな」と感じるようになったし、
あちこちに農業用トラクターが
走っているのを見かけるようになると
「そろそろ田植えの時期か」などと
思うようになった。

先日車で隣町のホームセンターに
買い物に行った際に田舎道を走っていると、
急に私の目の前に黄土色に色づいた
畑が一面に広がっていることに気が付いた。

以前はここは稲を植えていたはずだが、
当然こんな時期に稲穂がなるはずがない。

よく見てみると、植えられていたのは小麦であった。

その区画はあたり一面が小麦畑になっており
そこだけ見てみるとまさに秋の
稲刈りのシーズンのような景色であった。

実はここ数年、私の周りで小麦が栽培されているのを
目にすることがとても増えた。

私が気づいていなかっただけで
以前からやっていたのだろうと思っていたが、
先日私が発見した小麦畑は間違いなく以前は
稲を作っていた場所である。

ということは、稲の栽培をやめて
小麦を栽培する農家の方が増えているのだろうか。

確かに、最近パンや小麦粉を購入する際に
「国産小麦使用」と書かれているものを
よく目にするようになった。

私が小学生の頃に社会の授業で
日本の食料自給率がとても低いこと、
そして、その中でも小麦は特に低く
国産小麦は珍しいというのが私の認識であった。

なので、身近な加工食品の原材料表示に
国産小麦と書かれているのを見ると、
「そんなに国産小麦が沢山あるものだろうか?」と
疑問に思っていたのだが、
もしかすると国産小麦の生産量は
私が子供の頃に比べると格段に増えたのだろうか。

そう思い、農林水産省のホームページを
参照してみることにした。

農林水産省HPより抜粋(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-11.html)

すると国産小麦の自給率自体は
それほど上がっておらず、
私が子供時代だった頃と数字自体は
ほぼ同じであった。

ではこれは一体どういうことなのだろうか?

農林水産省のHPを見ると、
小麦は多湿な環境に弱い作物らしく、
栽培するためには梅雨の時期を避ける必要があり
日本の気候での栽培はあまり向いていない植物らしい。

それ故に、需要の100%を国産で賄うことは
難しいという前提で、
国産小麦は以前はうどん用の中力粉が
主に作られていた。

逆にそれ以外のパン用や中華麺用の小麦は
基本的に輸入に頼っていたわけであるが、
ここ10年ほどの間にこれらの用途に合った
強力粉、準強力粉が作れる品種が
次々に開発され、
それらの作付け面積は増えているそうである。

確かに先日私が偶然遭遇した小麦畑がある街は
製麺業や小麦を使った調味料を製造している会社が
何社かあるので、
それらの企業が国産小麦で作った商品を
ブランド化しようとして新品種を農家の方に
生産してもらっていると思えば
この変化は納得できる。

今後小麦畑がさらに広がっていくようなら
きっと、それらの商品の売り上げが伸びている
証拠なのであろう。

何気なく違和感を持った景色の変化も
こうして調べてみると
色んなことがわかるものである。

ちょうど学校の社会科でこのようなことを
学んでいる息子にも、
教科書の中だけではなく身近なところに
そのヒントがあることを教えてやりたいと思う。

ちなみに今回調べてみて
小麦という作物自体が日本の気候に
あまり合っていないということは
私達の体に小麦タンパクのグルテンが合わないことと
何か関係があるのだろうかとふと思った。

グルテンフリーの流れは海外の方が盛んであるし、
そんな海外では小麦がどんどん栽培されて
加工されていることを思うと、
必ずしもこの仮説は正しくないのであろうが、
やはり私たちの体には栽培に適した米が
合っているのだろう。

そう考えると、水田が麦畑に変わっていくのを
手放しに喜べないのは私だけではないだろう。


この記事を書き終えて投稿しよう思った時に
ふとキッチンに置かれた大手〇マザキ製の
食パンの表示を見てみると、
「小麦粉(国内製造)」と書かれていた。

一見すると国産小麦を使っているように見える
この表示がなんとなく気になって調べてみると、
驚いたことに製粉を国内でしているだけであり
どこの小麦を使っているのかは
わからないということらしい。

遺伝子組み換え食品を避けるために
国産品を選んでいるという消費者は少なからず
いるだろうが、
そのような消費者にとってこの表示は
明らかに誤認されているのではないだろうか。

そんなことが急に気になってきたので
あとがきパート2を書かせて頂いた。

このような誤認されるような表示を
色々集めて記事にしてみるのも
面白そうであるが、
何だか色んな闇を感じそうで怖くもある。


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