当たり前のことを当たり前にするのは難しい

私は商品開発の仕事をしている。

素材のメーカーではなく
最終商品のメーカーなので
色んな素材を組み合わせて
モノを作り上げていく。

なので新しい素材を求めて
新規の企業に問い合わせをすることが
比較的多い。

感染症が起こってからというものの
展示会などに直接出向いて
モノを探すことがしにくくなったので
特に企業への問い合わせをする機会が
多くなった。

問い合わせのスタイルは
企業によってさまざまだが、
電話番号を記載している場合か
殆どの場合は問い合わせフォームから
内容を送ってくれというものである。

問い合わせフォームは
企業名、問い合わせ者名、メアド
そして問い合わせ内容を書くような
テキストボックスに記入して
送信ボタンを押すと企業にメッセージが
送られるものである。

この問い合わせフォームを送信すると
しばらくしてから
企業の担当者から電話やメールが来て
実際に商談に移るケースが多いのだが
実は問い合わせフォームを送っても
無視されてしまうケースがかなり多い。

そんなことないやろう
そう思われるかもしれないが、
これは紛れもない事実なのだ。

相手が大企業でもこの傾向は
決して変わらない。

私の肌感覚ではあるが
10件問い合わせをして
ちゃんと担当者から返答があるのは
6~7割である。

残りの3~4割は何の返答もないまま
フェードアウトしてしまう。

問い合わせフォームには
「担当者から連絡がない場合には
再度記入して送ってくれ」と
記載されている場合があるが、
2度目に送ってもなお無視されるケースが
過去に何度もあった。

私は決してこのことで企業の体質が
問題であると言いたいのではない。

企業も最小限の人数で管理コストを抑えながら
ビジネスを進めていることは
私も十分に理解しているし
日々多数来る問い合わせに
対応しきれず漏れが起こることは
想像に難くない。

私がこの記事で言いたいのは
当たり前のことを当たり前にするのは
実は難しいということである。

人に何かを聞かれたら答える。

これは私たちにとって当たり前のことである。

よほど相手が怪しい場合には別だろうが
街中で人に道を尋ねられれば
殆どの人は躊躇なく答えるであろう。

しかし、ビジネスの場では
その当たり前のことを履行するのは
実は難しい。

先ほども書いたが多くの企業は利益を出すために
管理コストを大きく絞っている。

幾らモノを売って利益が出たとしても
管理コストが高ければ会社として
儲けにはならないので
管理コストを下げながら
何とか利益を確保しようとしているのだ。

昨今原材料価格が高騰しているので
原価も下がらないのに、
顧客には値上げを受け入れてもらえない。

このような状況はさらに輪をかけて
管理コストの圧縮につながる。

そうなると、問い合わせフォームへの
回答が漏れてしまうようなことは
当たり前のように起きてしまうのだ。

忙しい飲食店に入ろうとすると
「今一杯でしばらくかかります」と
見せの人につっけんどんに言われたような
経験をお持ちの方も多いと思うが
まさにこれと同じような状況が
企業でも起こっている。

このような現状で私たちが
ビジネスの場でできることは
一体何であろうか。

それはまさに当たり前のことを
当たり前に履行することに他ならない。

誰もが自分の仕事の中で
当たり前のことを当たり前にしていけば
まちがいなく常識的な感覚を持った
企業になっていくはずである。

問い合わせフォームという小さな事例だが
3-4割もの企業が当たり前のことが
履行できていないということは
逆に当たり前のことを当たり前にできるだけで
全体の6割の中に入ることができるのだ。

そして、これは個人でも同じことである。

ここまで企業という大きな組織で
お話をしてきたが
個人においても当たり前のことを
当たり前にするだけで他と差別化できることは
実はたくさんある。

メールやメッセージへのレスポンスを確実にする。
相手に感謝の言葉を述べる。
問題発生時にしっかりと謝罪する。
時間を厳守する。

一般社会で当たり前と言われていることを
確実にできている人は実は少ない。

「このぐらいなら、まいっか」と
ついつい妥協してしまうのが
私たち人間のサガでもある。

しかしだからこそ、当り前のことを
当たり前にできるということは
大きなアドバンテージになるのだ。

何かを成し遂げるために
大きな目標を抱えることは素晴らしい。
しかし、それをしようとするあまりに
当たり前のことが疎かになっていないかを
今一度考えてみて欲しい。

もちろん、自分の中でやらないことの
線を引くことは重要であるが
その時には誰かほかの人に
それを引き継ぐなどして
当たり前のことを着実にできる仕組みを
しっかりと持っておくべきである。

そうすることで土台は
強固なものになっていく。

何かを成し遂げるために
私たちは日々積み上げていくが
その土台が揺らいでしまうと
積み上げたものが崩れてしまう。

そうならないためにも
当たり前のことを着実に履行することを
私たちは忘れてはならないのだ。

「当たり前のことを当たり前にすることは難しい」
一見矛盾した言葉に見えるが
このことをしっかり理解することは
勝ち残っていくためには重要なことである。

共に当たり前を確実に行い
勝ち残っていこうではないか。