「おさんぽ音図鑑」を作ろう

 息子が幼稚園でもらってきた「おさんぽ図鑑」が秀逸である。
季節ごとにミニブックにまとめられており、首から掛けるための紐が付けられる。外にお散歩に出掛けて、その図鑑に載っている虫や植物を見つけたらチェックをする。各項目にちょっとした解説が書いてあって、大人でも勉強になる。
 その図鑑を手にして息子と実際に散歩して気がついたことは、「目的を持って散歩すると、様々な発見が普段の倍になり、楽しくなる」ということである。おまけに実体験を通した知識も身につき、親子のコミュニケーションも豊かになり、学びの可能性も広げてくれる素晴らしいものである。
 すっかり「おさんぽ図鑑」に魅了された私は、音バージョンの「おさんぽ図鑑」を作ろうと決心した。虫の音、木々が風に揺れる音、車の音、踏切の音、子どもの遊ぶ音、鳥の声・・・色々な音に意識が向くような図鑑である。季節ごとに作るのはハードルが高いので、まずは通年用のものを考えている。
 私たちは日々色々な音に囲まれて生きている。私は幼少期を西ヨーロッパで過ごしたが、日本に帰国してから1番驚いたことが「みんな日本人だ!」ということと、「どこもかしこもうるさい!」ということであった。
 パチンコ店の前を通った時の暴力的な音、そこら中で容赦なくかかっているBGM、家電の喋る音、人々の話す声・・・それ以外にも、なんとなく常にザワザワしているのだ。
 独身時代は、努めて無音状態を作り出すべく意識していたが、子どもができてからは自分の中の何かが崩れてしまった。アレクサで童謡をエンドレスで再生しても気にならなくなった。YouTubeで動画を垂れ流しにしても平気だ。耳と脳が疲れるという感覚すらどこかへ行ってしまった。そう、子供がぐずって泣き叫んだり暴れたりすることを考えればこのくらいへっちゃらなのだ。自分の育児における省エネを優先しているためだが、その代償は大きいと自覚している。
 そんな、なんとなく常に騒がしい環境の中で生きていると、積極的に耳を傾けて周りの音を聴くことができなくなってくる。聴こえているのに、認知できないのだ。
 なので、それらの音に意識を向けるための「おさんぽ音図鑑」である。
 解説の部分には、その音から想起される心情などもいくつか挙げたい。
 絶対に作るぞ。

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