無職のパパが異世界転移してお家に帰るまで【第1話】
NFTart『Daddy-like kind』シリーズ
https://opensea.io/collection/daddy-like-kind-001
捨てられた先は異世界だった
「なんでまっぱ?」
裸で家のソファに転がっていると、嫁がちくちく言ってくる。
「何かエコじゃね? 仕事ないし、外行くわけじゃないから洗濯物も出ないし」
キラーンと目元が光ったような気分で、ドヤ顔をすると、嫁は何かキレてきた。
「はぁ? 見苦しいんじゃあ! つか働けよ! この穀つぶしがぁ!」
リアルにソファから蹴飛ばされ、そのまま廊下をゴロゴロ。
突き当りの玄関がなぜか開き、そのまま放り出されてしまった。
「やべぇ! こんな格好じゃ、マジで捕まるじゃん!」
眩しい!
部屋もちょっと薄暗かったのに対し、外は天気が良かった気がする。
目の前が急に入ってきた光で眩み、ゴロゴロ転がりながらもそのまま外に出たらいけないという、わずかながらの良心がチクチク痛んだ。
「あれー? パパは?」
遠くで小さく声が聞こえた気がした。
「うちにはパパはいません。まともなパパを買ってこようね」
「もっと稼ぐパパがいいなー」
「そうねー」
何か辛辣な言葉が聴こえる。
あれ?
さっきまで、目開けてたよな?
立ちくらみのような状態長くない?
辛辣な我が子と嫁の言葉が遠ざかるのと同時に、何やら街の喧騒のような音が近づいてくる。
うちの近所は閑静な住宅街だったような。
ローンを組んでやっと買った家は、分不相応なくらい広く、家を出て間もなく小さな公園もある。
玄関を出てすぐの場所は、騒々しさとは程遠かったはずだった。
ぱっちり目が開いた。
素っ裸の尻に、石が食いこんでいる痛みを感じながら、埃っぽい地面に違和感を覚えた。
確か、家の前は舗装されてたはず。
目に飛び込んできたのは、遥か上空を飛ぶ長い尻尾のある羽の生えた生き物だった。
「はぁ? 何じゃあれは?」
空から目線を落とすと、豚っぽい二頭身くらいの生き物が服を着て歩いている。
「うへっ。何あれ?」
耳が長い人や、トカゲっぽい尻尾のある生き物も二足歩行で歩いている。
駅前の通勤ラッシュのような人(?)の行き来だ。
そのむこう側には、レンガっぽい石造りの建物や、板張りのボロっちい掘立て小屋があったり、何か野菜や果物を売っている露店が立ち並んでいる。
「待て待て。みんな服着てるし……って、そこじゃないわ。ちょっと待て。これ何の撮影?」
二頭身なのは仕様なのか?
次のお話
第2話 『チートで無双で瞬殺で』
目次
誰かの心にほんの少しでも風を送れるものが発信出来るよう自己研鑽していきます。 当面はきっと生活費の一部となりますが、いつか芽が出て膨らんで、きっと花を咲かせます。