小説【次は、普通に生きてみたい】ショートショート
どろどろと汚いものが溢れ出た。
残ったものが綺麗なのかは分からないが、何かが欠けたような気分だ。
夏の青空が、欠けた部分を補ってくれるはずもなく、突然の雷雨に心が冷えていく一方で。
汚いものも、必要だったのではないかと。
夕立が過ぎ去った赤い空を見上げながら、私は額に手の甲をあてた。
「淋しい……」
誰に言うでもなく、ぽそりと呟いた声は、未だに遠くで響いている雷鳴にさえ負けるほど小さくて。
汚いものを一度出し切った私には、何かを始める意欲さえ残らなかった。
きっと人のや