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よせぎれ表装_家族の名前

ずいぶん前に母が知人にお願いして制作してもらった風炉さき屏風がありました。屏風には家族の名前の一文字ずつが書かれていました。その後、母が手狭なマンションに移り住んだ際に屏風を解体して片方は額として飾り、もう片方は我が家のマンションにしまいこんでいました。

知人による書には次のような文字解説がついています
「此の屏風の六つの文字は右から「孝」「和」「仁」「伸」「智」「晴」です 依頼者の要請で家族の名を書き込んで欲しいとのことで六字を風炉さきの屏風の様子としました 文字の出典は甲骨文とか卜辞(ぼくじ)といわれている中国古代文字(殷代後期 前1400年〜前1100年)です 亀の甲や牛の骨を火であぶりできた亀裂で吉凶を占いその結果を線彫りの文字に表したものです 実際は鋭く細い線状が主ですが太めの筆をつかい変化をつけて創作したものです」

そんなわけでしまいこんであった片割れの書ですが、マンションの洋間の白い壁面にあう掛け軸にしてみては、と思い立ちました。掛け軸の表装には、古い着物の裂を何種類か選んでみました。裂はこんな感じです。
 祖母の着物 白地後染め小紋
 祖母の昼夜帯 紫根地葵文型染め
 母の着物 墨地格子秩父銘仙 
 親戚の着物 黒地久米島絣 などなど

書と裂を経師屋さんに持ち込み、裂を組合わせたよせぎれのイメージを伝えましたところ、お引き受けくださりました。掛け軸の一文字部分には金襴、持ち込んだ裂は丁寧に裏打ちされ書の周りに美しく配置されました。裂の継ぎ目がとても美しい仕上がり、さすがプロの技です。

和室の床の間の季節を彩り、お客様をおもてなしし、室内装飾としてマストアイテムであった掛け軸ですが、近年はそもそも和室の無いマンションもあるわけで、すっかり出番が減っていると思います。ですが、軽量ですのでマンションの洋間の大壁にも容易にかけることができ、さらに収納性にすぐれています。季節やシーンに合わせて様々な掛け軸をマンションの室内装飾として楽しむのもありかと思いました。

家族の名前の書と家族の古い着物の裂が時空を超えて出会った掛け軸。経師屋の職人さんの手をお借りし、アップサイクルデザイン作品が生まれました。しまいこんでいた書も裂も出会ったことで作品となり、どちらも喜んでいるのではないかなと思う室内装飾織物がたりです。

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