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よせぎれのあずま袋

友人のお母様が残した和箪笥の整理のお手伝いをした際にいただいた着物の残り裂。それらをアップサイクルデザインした第一弾の作品は風呂敷でしたが、第二弾としてあずま袋を制作しました。裂の中の渋目の3種を有効活用したいとあれこれ考え、あずま袋にいきつきました。
 
あずま袋をご存知でしょうか。江戸時代に西洋の鞄を真似て考案された風呂敷や手ぬぐいから作られたものだそう。私は以前から着物を着てお出かけする際にはエコバック代わりに持参していました。
 
箪笥の中に大切に残されていた裂です。なるべく切り刻みたくない、余さず使い切りたい。あずま袋をよく観察してみましたところ、長方型の2枚の裂からできていることがわかりました。江戸時代に考案した方すごい! これでしたら大切な裂をなるべく切らずに余さず使うことができます。ほどけばまたもとの裂の形に戻せます。ほどきやすさ考えて手縫いにすることにしました。
 
3種の裂は、紫地に光の加減で紗綾形の文様が見える手の込んだ染めを施した小紋の着物の残りと、濃い臙脂色地に百寿文様の小紋の羽織の残り。そして小豆色地に動物や植物をモチーフにした不思議な7種の幾何学文様が繰り返す臈纈染の小紋、こちらは何の着物の残りなのか不明です。
 
メインに使用した紫地の小紋は、表面は特殊な染め、裏面は紫の色無地でリバーシブルのようになっていて、反物の端の部分からは、紗綾形文様を織り出した白地の縮緬を京紫に染め、さらに光によって微妙な色に変化する特殊な染めを施している3段階のプロセスがわかります。リバーシブルを生かして裏地はつけずにひとえ仕立てに。結んでみるとチラリと裏面が見える仕組みです。3段階のプロセスがわかる端の部分も見えるようにレイアウトしました。裂には証紙があり、
「伝統に培われた名陶、伊賀、信楽、丹波焼等に見る荒削りの中に秘める素朴な味合い 釉が醸し出す模様の妙 艶の味 そんな風情をもつ陶芸の真髄をきものに描写 きものの美として彩り入れ 特殊染料の効果と共に一層深味のある奥ゆかしいわびとさびのあるお召物に染め上げました」
という説明がありました。
 
光の加減で見え隠れする紗綾形文様、長寿をあらわすという百寿文様、そして不思議なモチーフの幾何学文様、3種の文様の裂からできたあずま袋。お出かけの際にバックに入れておくと、何やらいいことがありそうな予感がします。

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