2.先行研究 2-3.まとめ
先行研究のまとめ部分です。1950(昭和25)年に空襲の飛び火を受けて炎上し消失してしまった明治宮殿。日本の歴史の、中でも建築史上&染織史上大きな損失だったと残念でなりません。諸先輩方の調査研究はとても価値あるものだと思います。
2-3.まとめ
前近代における代表的な建築物である江戸城本丸御殿の書院造りの座敷は、主従関係を示す重要な演出装置であった。座敷の中で使われる畳の縁や表装裂の色や文様は重要な意味をもっていた。畳の縁の色と文様は有職故実によって用法が定められ、身分による用例が明確化されていた(竹中、1982、174)。表装裂として使われた古い裂の文様は、飾るという一般的な意味だけでなく、その品を身に着ける人から禍いを遠ざけ、幸福を招くという重要な性格をもっているという(京都表具共同組合青年会、1989、102)。
近代における和風の代表的な建築物である明治宮殿では、新しい外交や生活様式を取り入れるために和洋折衷の技法に基づく室内装飾が行われた(大川、 2001、11)。和風の折上格天井、ガラス戸にカーテン、壁に織物が貼り付けられる等である(恵美、2017、152)。太田の明治宮殿表宮殿の室内装飾織物の色・織・文様の整理(太田、2011、20-24)を元にして、恵美は、表宮殿で最も重要な謁見所の緞帳・壁貼付文様は龍や鳳凰などの「瑞鳥霊獣」で格調の高さを演出している、としている(恵美、2017、153)。近代和風建築における室内装飾織物についての先行研究はこの明治宮殿の室内装飾織物以外に見られない。建築史と染織史の狭間であるため見落とされてきた研究領域であると言える。
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