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羽裏が自由すぎる件 その一

普段着物生活を始めてみると、洋服のように長着の上に一枚羽織ることが当たり前になりました。道行、冬コート、雨ゴート、単衣用・夏用の薄羽織、そして袷用の羽織・・・、長着一枚だと何だか物足りなくさえなりました。特に、只今羽織に無我夢中です。
 
着物をほどくワークショップに参加して羽織をほどく機会がありました。ほどいた羽織をどう活用しようかとあれこれ考えた結果、再び羽織に仕立て直すことに。裄を出して身丈を長くして古くなっていた羽裏を新しいものに付け替えました。
 
羽織の表地は黒と臙脂色のぼかしの鹿の子絞りで、抽象的な大きな花がありとても個性的な色柄です。洋服感覚では表地の中から一色を選んで無地にするとか、控え目なトーンの色の羽裏を選びそうですが、羽織の世界はどうやら異なるようで、もっと自由に楽しく組み合わせていいようです。逆に表よりも裏を派手にする「裏勝り」という言葉があるほど。羽裏にはもちろん羽織るときに滑りを良くするという機能もありますが・・・。
というわけで、個性的な表地に負けないあえての色鮮やかな羽裏にして表と裏の化学反応を楽しむことにしました。羽裏は、昨年京友禅のギャラリー『紫織庵』さんで購入した長襦袢用の反物『裂取友禅』と同柄の大正時代の柄を復刻したものにしました。黒や赤、黄色、空色の多色使いで麻の葉文様や紅葉、色々な花が染められてるとても色鮮やかなものです。
 
袖口からチラリと見える長襦袢、裾からチラリと見える八掛よりも、羽裏はさらに着ている限り外から見えるものではありません。脱いだときににしか見えない小宇宙に自分だけの自由な世界を楽しむなんて、着物って本当にすごい服飾文化だと思います!
京友禅の色鮮やかな長襦袢に地味な大島、その上に表裏化学反応の羽織、というコーディネートがもう頭の中でできあっています。袷の季節に羽織を着るのが待ち遠しすぎる、羽裏の着物がたりです。

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